戦後のソ連は、日本軍人など57万人から70万人をシベリアやモンゴル、カザフスタンなどに強制連行して過酷な労働に従事させ、6万人以上が犠牲となった。台湾出身者は19名が判明しているだけで、台湾人の抑留体験や帰台後を描いた本や映画はほとんどない。

著者の陳力航氏は、幼いころから日本語世代の祖父・陳以文氏に家族や台湾の来歴、シベリア抑留の話を聞いて育ったことから、台湾や日本の歴史に関心を深め、国立成功大学から国立政治大学大学院を経て東京大学に留学。大学時代に祖父へのインタビューをまとめ、その後、ノンフィクションに書き直した『零下六十八度』を台湾で出版。この中文の自著を自力で邦訳したのが本書である。祖父のシベリア抑留や台湾に帰ってからの体験をつづる、貴重な一書だ。

台湾出身の呉正男さん(本会前理事)は、ソ連に抑留された台湾出身日本兵唯一の生存者だ。本年9月5日から日本で公開される、台湾人元日本兵のシベリア抑留体験や帰台後などを描く台湾映画「零下五十度の抑留者」(原題「氷封的記憶」)には、呉正男氏とともに祖父の陳以文氏や陳力航氏も出演している。

【展転社 2026年6月刊 定価:1,650円(税込)】

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