20161129-01日本でも著書『台湾二二八の真実─消えた父を探して』などで知られる阮美姝(げん・みす)さんが11月28日昼すぎに亡くなられました。奇しくもこの日はちょうど89歳の誕生日でした。

ご家族によると、眠るように息を引き取られたとのことです。

これまでのご厚誼に深く感謝申し上げるとともに、心からご冥福をお祈りいたします。

阮美姝さんは、二二八事件の被害者家族で、父親の阮朝日氏を亡くされました。当時「台湾新生報」の総経理を務めていた阮朝日氏は1947年3月12日、病のため自宅で臥せっていたところを情報機関によって連れ去られ、そのまま行方知れずとなりました。

娘の阮美姝さんは、日本で台湾独立運動を指導していた王明徳・明治大学教授が著した『台湾 苦悶するその歴史』のなかで、父の阮朝日氏が反乱罪によってすでに処刑されていたことを知ります。このことが、後年、二二八事件を積極的に調査するきっかけとなったことを後に披瀝しています。

二二八事件の被害者家族として、阮美姝さんは他の被害者家族を訪ね、事件に関連する膨大な資料を集めてまわりました。それは、阮美姝さん自身が被害者家族であり、家族だからこそ理解できる「抑圧された苦しみ」を理解出来たからにほかなりません。

阮美姝さんはその一生を、二二八事件の真相解明に捧げました。今は安息の時を得て、お父上やご主人と再会を喜ばれていることを切に願うばかりです。改めて心からご冥福をお祈りいたします。

なお、告別式は12月17日(土)に台北市内で執り行われます。詳細は本会事務局までお問い合わせ下さい。

◇    ◇    ◇

3年前に台湾神学院から出版された『美的極致:阮美姝一生與二二八平反實錄』。事件の真相解明に一生を捧げた阮美姝の集大成ともいえる一冊

阮美姝(げん・みす)
1928年(昭和3年)、台湾・屏東県生まれ。台北州立第三高等女学校卒業。1947年、結婚後ほどなく二二八事件で新聞社を経営していた父・阮朝日氏が拉致される。その後、音楽講師、ドライフラワーの講師などの一方、二二八事件および阮朝日氏に関係する資料の収集や事件の真相究明に努める。2002年、故郷の屏東に「阮朝日二二八記念館」を設立(2006年閉館)。二二八事件の真実を歴史にとどめるため、テレビ、ラジオ、新聞、講演などを通じて発言。講演は台湾ばかりでなく、日本やアメリカ、カナダでも行った。二二八事件に関連した日本語の著書として『台湾二二八事件の真実─消えた父を探して』『漫画・二二八事件』(両書ともまどか出版)。台湾では『孤寂煎熬四十五年』、『幽暗角落的泣声』(両書とも前衛出版社)、『美的極致:阮美姝一生與二二八平反實錄』(台湾神学院出版社)を出版。