蔡英文総統は、10月4日の「ウォール・ストリート・ジャーナル」に続き、6日には読売新聞東京本社の溝口烈(みぞぐち・たけし)編集局長による単独インタビューに応じた。

蔡氏が今年5月の総統就任後、日本メディアのインタビューに応じるのは初めてで、7日付の読売新聞は「海洋問題をめぐる日台協力の初の枠組み『海洋協力対話』を月内にも開始する方針を明らかにした。日台間の摩擦要因となっている沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の漁業資源についても議題とし、日本との海洋協力の推進に強い期待を示した」と報じている。

台湾の総統府は「蔡英文総統は6日、日本の大手日刊紙『読売新聞』の取材を受け、台日関係、台湾海峡両岸関係、台米関係及び南シナ海における領有権問題などについて記者の質問に回答した」として、インタビューの詳細を明らかにし台湾外交部のニュースサイト「Taiwan Today」がその詳細を伝えている。


蔡総統、日本の日刊紙『読売新聞』の取材受ける

【Taiwan Today:2016年10月7日】

蔡英文総統は6日、日本の大手日刊紙『読売新聞』の取材を受け、台日関係、台湾海峡両岸関係、台米関係及び南シナ海における領有権問題などについて記者の質問に回答した。

蔡総統はまず台湾と日本の関係について、地政学的あるいは歴史的角度から見ても、台湾と日本の実質的交流と住民の往来は非常に緊密だと指摘。日本の安倍首相については、広い国際的視野と強い意志を持っており、地域情勢や国際情勢に通じたリーダーだと評価した。また、安倍首相と協力して、台日関係を一層強化し、この地域の平和と安定を促進していきたいと期待を寄せた。

さらに蔡総統は、海洋協力に関する日本政府との対話の枠組み「台日海洋協力対話」について、「近いうちに初会合の日程と関連の情報を台湾と日本が同時に発表することになる」と明らかにした上で、双方が海洋協力に関する関連議題について幅広く意見交換できることを期待すると述べた。経済分野については、「われわれは日本との協力を強化するチャンスが得られるよう非常に期待している」とし、技術の研究・開発やブランドイメージで優位性を持つ日本と、ハイテクノロジーや製造業において完全なサプライチェーンを構築している台湾は、産業協力において大きな可能性があると述べた。

続いて台湾海峡両岸関係について問われた蔡総統は、「われわれには忍耐力があるが、中国大陸側もより一層の知恵を出すことを望む」と強調した。蔡総統は、「今年5月20日の総統就任演説で述べた約束は変わらない。つまり、われわれは現状を維持する。われわれの善意も変わらない。双方が直面しているいくつかの問題を、共に解決していけるよう希望する。しかし、台湾と台湾の人々は、圧力に屈することはない。われわれはかつてのような対立関係に戻ることを望まない。われわれが望むのは平和であり、かつ双方が協力し、問題を共同で解決できるような関係である」と説明した。蔡総統はさらに、今年5月20日直後の、双方が冷静且つ理性的に両岸問題に対処していたあの時期に立ち戻るよう中国大陸に対して呼び掛けた。

南シナ海及び東シナ海を巡る問題について蔡総統は、「台湾はこれまでも多国間協議によって関連海域における紛争を平和的に解決することを主張してきた。同時に、各国が中華民国(台湾)を利害関係国の1つとみなし、この多国間協議による紛争解決のメカニズムに、台湾を対等な立場で加えることを希望してきた」と強調。このため、多国間の対話を速やかに行い、特に南シナ海については「紛争を棚上げし、共同で開発する」方法で対応すべきだと主張した。蔡総統はさらに、南シナ海の環境保護、科学研究、海上犯罪取り締まり、人道的立場からの海難救助、災害救援など、従来の安全保障の議題にはなかったようなこれらの議題についても、有意義且つ建設的な対話を行いたいと抱負を語った。

最後に台湾の若い世代の台湾海峡両岸関係に対する見方について問われた蔡総統は、「これら若い世代の人たちは、台湾に生まれ、台湾で成長し、台湾に対してアイデンティティを持ち、そして台湾を熱愛している。しかもこの自由民主の環境の中で成長した彼らは、自分で考え、判断する力を持っている。このため台湾と中国大陸が健康的な交流を維持できれば、こうした若い世代の台湾海峡両岸問題に対する思考にもプラスの効果があるだろう」と指摘。「台湾と中国大陸の若者交流を奨励することは、一国のリーダーとしてあるべき態度だ」と締めくくった。