黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2016年4月19日

● 台湾、6,500万円寄付を表明 支援の動き広がる
熊本地震の被害者は増える一方で、せっかく地震からは逃れることができても、避難所で亡くなるお年寄りや、車の中で生活していてエコノミー症候群で亡くなった人も出ています。

余震が続く中、交通が分断され避難所との連絡も行き届かず、不安を抱えながら毎日を過ごす人々を思うと、とても胸が痛みます。東日本大震災からまだ完全に立ち直っていないうちに、再びこれだけの大規模な地震が起こりました。

日本は地震大国ですから、その他の地域に住んでいる人にとっても、他人事では済まされません。そうした気持ちは、恐らく日本人に共通していることでしょう。東京でも、熊本の物産館で買い物をすることで援助活動をしようという気持ちの人々が行列を作って商品を買っていました。

アメリカ、イギリス、ロシア、タイなど海外からも多くの支援の声が挙がっています。そのなかでも、日本と同じ地震大国である台湾は、震災後いち早く支援を申し込んでいます。

最初の地震が起こった際、馬英九政権は1,000万円の支援を申し出ました。その後、「本震」と言われる大地震が再び起こると、台湾内からの「少なすぎる」との声を受けて、馬英九政権は支援額を6,400万円に増額。

もちろん蔡英文次期総統は、馬英九よりも早く哀悼の意を述べ、民進党の党費から1,000万円の支援を決定しました。民進党系の代表的首長である陳菊・高雄市長などは、くまもんとの2ショットの写真を掲載して、自身の1カ月分の給与を寄付することを表明。

その他、頼清徳・台南市長、林佳龍・台中市長、鄭文燦・桃園市長などの民進党系首長も、それぞれ日本との交流があるなどの理由から、いずれも1カ月分の給与を寄付することを表明しました。

無党派の柯文哲(かぶんてつ)台北市長も、同氏のFacebookで、「台湾は過去に何度も災害に遭い、日本の友人は常に最大の協力をしてくれた。支援の思いを表明したい」と書き込んだほか、ツイッターでは日本語を用いて日本への見舞いをいち早く表明しました。

● 熊本地震に台湾の支援拡大 「日本の友人は常に最大の協力をしてくれた」
さらに、台湾の中国信託金融ホールディングが3,300万円の寄付を表明し、屏東(へいとう)県も救援隊を結成していつでも救援の要請に応じられる準備をしているそうです。

ちなみに、屏東県と日本とのつながりは大東亜戦争当時にまで遡ります。大東亜戦争中、屏東県には日本陸軍の飛行場があり、屏東県の港である東港には日本海軍航空隊が置かれていました。東港には、今でも日本軍人を祀る小さな祠「日本軍魂廟」があります。

また、屏東県にある台湾本島の最南端の岬である鵝鑾鼻(がらんび)には、大東亜戦争中にバシー海峡で犠牲となった日本人を祀る潮音寺が建っています。

台湾人は、日本統治時代に日本人が台湾にもたらした様々な恩恵を忘れていません。日本人の台湾への思い入れも、今でも消えていないのではないでしょうか。さもなければ、こうした相互支援の応酬は続かないでしょう。

言うまでもありませんが、これほどまでに台湾が熱心に日本を支援するのは、同じ地震大国だからという理由だけではなく、日台の間には、長い相互支援の歴史があるからです。そのことに関しては、東日本大震災のときに台湾が200億円以上という巨額の支援を申し出たことで注目されまし
た。

過去の歴史を知らない人たちは、なぜそんなにと思ったことでしょう。日本人のほうが日台相互支援の歴史を知らない人が多いのです。しかし、柯文哲・台北市長が述べたように、台湾人の多くは知っています。

直近でも、2016年2月に台湾南部で発生した地震では、日本は地震当日の夜には調査チームを高雄に派遣し、100万ドル規模の支援を表明しました。この件については2月のメルマガでもお伝えしました。

● 台湾地震で恩返しする日本人と、政治利用を目論む中国人
近年の相互支援の例は、例えば1995年の阪神淡路大震災、1999年の台湾大地震、2011年の東日本大震災、2015年の台湾新北市八仙楽園での大爆発、2016年2月の台湾高雄での台湾南部地震。台湾へ日本が支援を行えば、台湾もそれ以上の恩返しをしようと支援を申し出るという構図です。これは、誰に強制されたものでもありません。

その証拠に、これらの活動は政府ではなく民間の力が強く働いています。むしろ、政府は「1つの中国」を主張する中国への配慮があって、支援ひとつするにもなかなか腰を上げることができません。

逆に民間は、2015年6月に起きた八仙楽園事故(台湾新北市のウォーターパークで起きた粉塵爆発事故。15人が死亡)の際にも、日本側から人口皮膚の提供を迅速に行うなど、すばやく必要に応じた支援ができます。

日台の相互支援は、こうした民間どうしのつながり、それは企業どうしであり個人どうしでもありますが、そうしたことが基礎となって成り立っています。

こうした関係については、あの「偉大な中国」でさえ水を差すことはできません。なぜなら、「すべてが政治」である中国人にとって、民間や個人どうしのつながりには、政治色がなく、政治利用できないからです。

東日本大震災2周年の追悼式の際には、台湾の支援に感謝を表して日本政府が台湾の名を連ねたところ、中国側の代表が抗議表明のために欠席するなど、政治的な動きもありました。また、台湾の自然災害に対して、台湾への義援金は中国を通してするべきだと中国政府が大使館を通して日本に通達したこともありました。

しかし、中国ができるのはせいぜいこのくらいです。「人道支援」という大義名分がある限り、中国はそれをいくら苦々しく思っていても、さすがに阻止することはできません。

台湾は、地震だけでなく水害や台風が日本以上に頻発していますが、日本と違う点は、台湾には噴火する火山がないことです。日本人は古代から、いかに地震に備えるかという生活を送っており、地震についての経験も豊富です。

自然の摂理に従ってつくられた社会の仕組みを持ち、それをベースに歴史を積み重ねてきた日本人は、協力と共生のメンタリティが強く、人々が持つ絆も強いのです。