李登輝総統が7月26日に無事帰台されてホッとしていた2日後の7月28日、大阪市東住吉区に住む台湾出身の林さんという方から、「子供の住民票を区役所で取得したところ、前住所が『中華人民共和国台湾省』と記載されていた。そこで「台湾」と直すよう抗議したが応じてもらえなかった。解決のために力を貸してほしい」という連絡をいただきました。

まだそんな自治体があったのかと驚きました。どうして「まだそんな」という驚きだったかといいますと、次のような理由からです。

本会は平成14年(2002年)の設立以来、台湾出身者が「中国」と記載されていた外国人登録証明書の改正問題に取り組んでいました。9年目の平成21年(2009年)7月8日、心ある国会議員の支援を得て、台湾出身者を「台湾」と記載することを定めるように「出入国管理及び難民認定法」を改正することができ、その3年後の平成24年(2012年)7月9日から外国人登録証明書が廃止されて在留カードに切り替わりました。

この在留カードでは「国籍・地域」欄となり、台湾出身者は「台湾」と記載されるようになりました。同時に、外国人住民基本台帳においても「国籍・地域」欄が設けられ、台湾出身者は「台湾」と記載されるようになりました。

ですから、台湾出身者の住民票の表記は「転入・転出」であろうとなんであろうと「台湾」と表記されるものと考えられましたので、まだそんな自治体があったのかという驚きとなったのでした。

ともかく、林さんからのご相談を受け、大阪市などに確認と調査作業に入ることにしました。

結論は、予想した通りでした。すでに大阪市は前住所表記として「台湾」を認め、申請者の要求に応じた表記を行うようにという通達を出していて、それが現場の区役所担当者にうまく伝わっていないだけのことでした。

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訂正前の住民票には「中華人民共和国台湾省から転入」と記載

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訂正後には「台湾から転入」と明記されている

8月6日)、林さんより無事に「台湾」と表記された住民票を取得できたと連絡があり、その写真も送っていただき一安心しました。今回もいろいろな方のご助力を得て解決に導くことができました。今回この住民票問題を担当した杉本拓朗(すぎもと・たくろう)青年部長が一連の経緯をレポートしていますので下記にご紹介します。


大阪市の住民票が「中華人民共和国台湾省」から「台湾」に正名

                          日本李登輝友の会 青年部長 杉本 拓朗

7月28日、大阪市東住吉区在住の林さんという日本人男性と結婚した台湾出身の女性から日本李登輝友の会に連絡が入りました。日本国籍である子供の住民票を区役所で取得したところ、前住所が「中華人民共和国台湾省」と記載されていた。そこで抗議したが応じてもらえなかったので、解決のために力を貸してほしいというご相談の連絡でした。実際に住民票の写真を送っていただいて表記を確認し、対応することをお約束しました。

依頼を受けた当日、本会大阪府支部の辻井正房(つじい・まさふさ)支部長に連絡し、大阪府支部としても対応していただくよう依頼し、快諾。また、台北駐大阪経済文化弁事処(略称:大阪弁事処。領事館に相当)の蔡明耀処長と近々に会う約束をしているので確認をすると確約いただきました。

同時に林さんは、フェイスブックにも「中華人民共和国台湾省」と記載された住民票の写真を掲載したため、台湾人を中心にこの問題が拡散された結果、数日のうちに日台双方のメディアでも紹介されることとなりました。

日本李登輝友の会事務局として、住民票を所管する大阪市市民局に確認たところ、「中華人民共和国台湾省」と表記していることを認めました。

そこで、日本政府は中華人民共和国が台湾を自国領土と主張していることを承認したことはないという政府見解と食い違うことを伝えたところ、表記に関しては総務省にその都度確認しているという返答。また当方からは情報として、前住所に台湾と記載している東京都の例や在留カードでも国籍・地域欄で台湾の表記を認めていると伝えました。

林さんはジャーナリストの山際澄夫(やまぎわ・すみお)氏にもフェイスブックを介して解決を依頼していたことが分かり、山際氏に事務局から連絡をしました。山際氏も同様に大阪市や東住吉区に電話で確認や抗議を精力的に行われたそうで、情報を交換し問題を共有することとなりました。

大阪の辻井支部長は蔡処長と会う前に電話でこの件を伝えたそうで、大阪弁事処としてすでにこの住民票問題に取り組んでいることが明らかになりました。

8月3日、山際氏より「大阪市が前住所の台湾表記を認める通達を『再度連絡し徹底させる』としたと言っている」と連絡がありました。

山際氏の調査によりますと、もともと大阪市は平成23年7月1日、前住所表記として「台湾」を認め、申請者の要求に応じた表記を行うようにという通達を出していたそうです。しかし、実際には東住吉区は申請者の要求に応じていませんでした。事務局でもすぐに大阪市に連絡し、同様の内容を確認しました。

そこで、大阪市は今回の表記問題が起こってから、7月31日付で改めて各区に通達したそうです。

大阪市のこの対応の裏には、大阪弁事処の素早い対応が功を奏したのかもしれません。また、本会からの連絡や、この問題を知った日台双方の義侠心ある人たちの抗議もあったようですので、それもまた奏功したのかもしれません。

8月6日に林さんより、無事に住民票に「台湾から転入」と記載されたとお喜びの連絡が来てホッと一安心いたしました。これにより大阪市も無事に前住所を「台湾」と表記することとなりました。

今回の件では、大阪府支部長の辻井支部長、大阪弁事処の蔡明耀処長、山際澄夫氏、そして多くの方々が尽力していただいたおかげで、台湾に正名することとなりました。ご協力感謝申し上げます。誠にありがとうございました。