黄昭堂主席「台湾と日本の司法は根本的に違う。心配する必要はない」

台湾の特捜部にあたる最高法院検察署特別偵察組(特偵組)は、6月30日午前10時30分から会見を開き、李登輝元総統と「台湾総合研究院」創設者で初代院長の劉泰英氏が国家機密費約780万ドル(約6億3千万円)を横領し、「台湾総合研究院」の設立費用に充てたとして、公有財物横領の罪で起訴したと発表した。

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会見終了後、メディアに囲まれる顧立雄・弁護士

これを受け、午後2時30分から李登輝元総統の弁護士・顧立雄氏が、李登輝事務所の王燕軍主任とともに台大校友会館で会見を開き「起訴内容は事実と全く異なる」と反論。「総統は予算分配に同意するが、その後の執行には関与しない」など、起訴内容と法律要件が符合していない、と指摘した。

一連の会見を受け、本会台北事務所は李登輝元総統と親しい黄昭堂・台湾独立建国連盟主席を訪問、この件に関しての印象を聞いた。

問「起訴の一報を聞いたときの印象は?」

黄主席「時には政敵を潰すために司法を利用するのが中国人のやり方。李登輝元総統は”棄馬保台(馬英九氏を放棄して、台湾を守ろう)”をスローガンに馬政権を批判してきた。来年の選挙戦が近づいてきたので、国民党が口封じをしようとしたのだろう」

問「台湾国内への影響はあるか?」

黄主席「大きな影響はない。台湾人は国民党のやり方を熟知している。法に基づかないやり方は彼らの常道」

問「日本人も大きな関心を寄せているが?」

黄主席「台湾と日本の司法というものは全く違う。日本の方は冷静に見ていて欲しい。国民党が司法を利用して仕掛けてきているだけなので心配する必要はない」
なお、この件に関し、台北地検は2003年に国家安全局の元会計長を起訴していたが、裁判では1、2審ともに無罪が確定しており、なぜ今になっての起訴なのか不可解さは否めない。
李登輝元総統は昨年6月に行われたデモで「棄馬保台」を明言。来年1月の総統選挙に向け蔡英文・民進党主席を支持するのは確実で、国民党側が李元総統の批判を封じようと機先を制した、という見方が有力だ。

7月1日夜、李登輝元総統は台北市内で開かれる台湾団結聯盟のパーティに出席する予定で、民進党の蔡英文主席とともにスピーチすることになっている。

李元総統の弁護を担当する顧立雄氏は台湾大学法律系卒業後、ニューヨーク大学で修士号。現在は台湾最大規模の萬国法律事務所に所属する辣腕のパートナー弁護士。陳水扁前総統一家の弁護を務めたことで一躍その名が知られた。
両親ともに上海出身の外省人だが、台大在学中に受けた法学教育を通じて政治思想に大きな影響を受けた。さらに、黄信介・元民進党主席の講演を聞いたのをきっかけに、台湾の前途に貢献しようとの考えを固めたという。