20071205謝長廷氏は12月16日からの来日に合わせ、日本語による書籍を携えてきた。それが12月14日付で出版された本書『逆転勝利─謝長廷の生命美学』である。17日にアルカディア市ヶ谷で行われた講演会の会場で販売され、100冊が飛ぶように売れまたたく間に完売した。

著者の郭瓊俐(かく・けいり)氏はかつて謝長廷氏が国会議員時代のアシスタント・スタッフを務め、政治大学助教授を経て「聯合報」や「中国晩報」などの記者をした経歴を持つとある。

本書は謝長廷氏のこれまでの半生をつづった伝記である。タイトルにも明示されているように、謝氏がこれまで窮地に追い込まれながらも最後に「逆転勝利」してきたことを、家族や夫婦あるいは弁護士時代や議員時代などの行動を通して様々に描く。

そもそも政治家の伝記は宣伝臭が鼻につく。本書もご多分に漏れず、その臭いは消せない。貧しい子供時代と優しい母の存在、発奮して台湾大学法律学部に入学し、大学でも3年生の時のトップで司法試験に合格する逸話。また弁護士時代や高雄市長時代の功績などを紹介して、いかに謝長廷氏が勤勉でかつユーモアセンスのある魅力的な人物か
を描く、いわゆる「よいしょ本」だ。

総統戦で未だ中国国民党候補の馬英九にリードを許す謝長廷だが、何とか「逆境に強い謝長廷」を印象づけたいという意図が透けて見える。

ただ、日本語で書かれた本書を持参してきた謝氏の来日に対する意気込みが伝わってくることは確かだ。また、日本人には謝氏の経歴はほとんど知られていないし、家族をはじめとした人間関係などから、唱える「共生共存の哲学」の由来も分かってくる。その点で、日本人が謝長廷を理解するために欠かせない一冊である。

出版は台湾の天下遠見出版。入手をご希望の方は本会事務局までご相談ください(入手不可の場合はご容赦願います)。