ゴールデンウィーク最終日の5月6日、東京・市ヶ谷周辺で行われた本会と賛同55団体(下記参照)による「台湾のWHO加盟を支持する集い」アピール行進は、次第に強くなる雨にもかかわらず、約300名が東京中華学校の校庭に集まり、黒地に赤と白のロゴが入ったTシャツに着替え、また傘の先に「台湾のWHO加盟を支持します」などと書かれたプラカードを結びつけ、五列縦隊で行進した。

アピール行進は、台湾がWHO加盟を阻まれている経緯を説明しつつ、日本政府にWHO加盟を支持するよう呼びかけ、また中国による妨害への反対を訴えた。小一時間かけて、日テレ通り、新宿通り、半蔵門通りなどを経て東郷公園に到着した。

日本人と在日台湾人の老若男女が参加し、台湾人教会関係者、医療関係者などの姿も見られた。スーツ姿の若い女性や子供連れの家族も見られ、この問題がさまざまな層にとって大切な課題だと認識されていることを伺わせた。また、アピール行進には盧千恵・許世楷代表夫人、また中津川博郷・前衆議院議員も最初から最後まで参加した。

アルカディア市ヶ谷で開かれた講演会では、日本李登輝友の会の小田村四郎会長が、台湾の国際社会参加を妨害しようとする中国の外交工作を暴き、台湾代表処(台北経済文化交流処)の羅坤燦(ら・こんさん)副代表が、台湾の当然の権利が理不尽な形で損なわれていると訴えた。また、靖国神社の例大祭に参列して帰国したばかりの蔡焜燦さんからは「日本の皆様が台湾人と一緒に台湾のWHO加盟支持の集いを開かれるとの報に接し、目から汗が出ている」というメッセージが寄せられ、柚原正敬・日本李登輝友の会事務局長が代読した。

国際的に著名な神学者であり台湾自決運動にも関わった宋泉盛牧師が、国連のアナン事務総長(当時)と会談した際、アナンに「台湾は中国の一省であり、台湾のことは国連で取り上げない」と言われたというエピソードを紹介し、台湾の側に立っていてくれた海外のキリスト教団体でさえ、「中国宣教」のために台湾を切り捨てる例があるという現実を紹介した。これを打開するためには、台湾人自身が立ち上がり、世界に台湾の主体性を訴えなければならないと台湾人が目覚めるよう、台湾人の自決を促す「台湾自救運動」を提唱した。

5月のWHO年次総会で日本政府が台湾政府によるWHO正式加盟申請を世界に先駆けて支持することを要望する「台湾のWHO加盟に関する日本政府への要望」の草案を金光俊典・日本李登輝友の会千葉県支部事務局長が読み上げ、参加者一同の名で採択された。

会場を訪れた石原宏高衆議院議員が挨拶に立つと、大きな拍手で迎えられた。ひとつには台湾人が石原慎太郎都知事のことを良く知っているということもあろう。石原議員は「台湾のWHO加盟は、独立問題とは切り離しても至極もっともな権利であり、支持
する」と、要望を安倍総理大臣に伝えることを約束し、参加者の思いを受けとめた。

意見交換懇親会は石井公一郎・日本李登輝友の会副会長の開会挨拶の後、前衆議院議員の中津川博郷・日台湾安保経済研究会会長が挨拶し、盧千恵夫人の乾杯の音頭で始まり、意見交換懇親会を締めくくったのは林建良・日本李登輝友の会常務理事。

「今回、台湾が初めて台湾の名で加盟を申請するという形で意思表明をした。今日は雨でよかった。本当の友がどこにいるのかわかった。日本人の友人よ、ありがとう。台湾人が、雨であれ嵐であれ、弾丸が降っても立ち上がる気概を持たなければ台湾の国は出来上がらない。日本人には日本のためにも台湾を大切にしてほしい」と語り、日台の共存共栄のために全員で万歳を三唱した。

なお、懇親会では江副亮一・江戸川区議や天目石要一郎・武蔵村山市議などがスピーチし、永山英樹・台湾研究フォーラム会長も台湾の医療水準の高さについて指摘したが、本当に、民主主義で、世界に良い仲間として貢献できる台湾を仲間外れにしていることは、国際社会の恥ではないだろうか。とくにWHOの問題は、人命に関わる健康の問題を、政治的に利用するという、独裁中国による人権無視で非人道的なやりかたであり、これを国際社会が許しているという現状を、我々は許していて良いのかを問いかけてゆきたい。【多田恵・本会理事】


台湾のWHO加盟申請に関する日本政府への要望

台湾は世界保健機関(WHO)に加盟していないため、衛生保健に関する貴重な情報や技術、あるいは新薬を即時入手することができず、台湾二千三百万人の生活と安全に深刻な影響を及ぼしている。

台湾政府は李登輝総統時代の一九九七年以降、毎年、WHO年次総会(WHA)へオブザーバーという非加盟国の立場で参加を求めてきた。しかし、「一つの中国」問題を持ち込む中国政府による執拗かつ理不尽な圧力により、未だ実現されていない。そこで、陳水扁総統は去る四月十一日、台湾の国内世論や立法院における過半数以上の支持を背景に、WHOに対し初めて「台湾」の名義により正式加盟を申請した。

日本政府は平成十四年(二〇〇二年)、福田康夫・内閣官房長官が「多くの地域、国際機関、NGOがWHOに参加するのが望ましい。日本に近接する台湾の保健医療の向上には関心があり、関係者が満足する形で、台湾がオブザーバー参加することが望ましい」と表明して以降、二〇〇四年からは毎年のWHO年次総会において支持を表明している。

最近も、麻生太郎外務大臣は「現在でも台湾のオブザーバー参加が望ましいという考えに変わりはない」「日本は台湾の近くに位置し、最も影響を受ける確率の高いこともあるので、日本は従来どおりこの問題の参加拡大を続けていきたい」と国会答弁において政府の方針を表明している。

米国政府もまた二〇〇二年以降、日本と同様、台湾がWHO年次総会へオブザーバー参加することに支持を表明している。

WHO憲章はその設立の趣旨を「健康の追求は全人類に等しく与えられた当然の権利であり、この権利は民族、宗教、政治的主義、経済、あるいは社会状況の相違によって差別されてはならない」と記している。また、WHOには「地域」としてパレスチナ暫定自治政府など、「国際機関」として国際赤十字社などがオブザーバーとして加盟している。

一方、台湾は「独立関税領域」として正式に世界貿易機関(WTO)に、アジア太平洋経済協力会議(APEC)には「経済体」として参加している実績がある。

つまり、台湾はWHOへの参加資格を有しているにもかかわらず、加盟どころか、年次総会にオブザーバーとしてさえ参加できないことはWHO憲章の主旨に明らかに反することであり、またそれは台湾人の基本的人権をも踏みにじる人権問題でもある。

今回、台湾が「台湾」の国名で正式加盟を申請したことに対し、政府内部において「独立不支持」の立場から加盟支持に疑義を呈する向きもあると仄聞するが、台湾が中華人民共和国の支配下にないことは何人も疑いを容れない客観的事実であるのみならず、このような人道問題は独立問題とは切り離して論ずべきである。医療・防疫は一国、一地域に止まらず、国際的問題であり、台湾の隣接国であり人的交流の密接で最も影響を受けやすい我が国にとって、台湾がWHOから疎外されていることは国益上由々しき問題である。

よって日本政府は、今般の台湾政府によるWHO正式加盟申請を世界に先駆けて支持し、五月のWHO年次総会において表明すべきことを強く要望するものである。

平成十九年(二〇〇七年)五月六日

台湾のWHO加盟を支持する集い参加者一同

内閣総理大臣 安 倍 晋 三 殿


日本の皆様、ありがとう

五月一日、無事台湾に帰って参りました。日本滞在中はたくさんの方にお目にかかれて大変嬉しゅうございました。靖国神社の例大祭にも初めて参列でき、司馬遼太郎先生の墓参にも参り、本当に心温まる旅でした。

さて、台湾は堂々とした一つの国であるにもかかわらず、中国の理不尽な妨害でWHOに加盟できないため、必要な情報が入って来ず、本当に困っています。

しかし、だからと言って台湾は一方的に情報の提供を求めているわけではありません。これまで積極的に対外的な医療協力を行ってきています。一昨年の南インド洋大津波災害における復興活動、昨年二月のフィリピン土石流災害に際しては緊急援助隊の派遣と物資の搬送、鳥インフルエンザに対する防疫物資の提供と台湾国際医療チームの派遣など、数え上げればきりがありません。

四年前のサーズ、つまり「中国肺炎」ですが、あの時のことを思い出してください。中国政府が発生を隠蔽して対策を怠り、WHOからの情報もない中、台湾は最善を尽くし、影響を最小限に食い止めました。

皆さん、サーズウィルスや鳥インフルエンザが国境や人種を見分けますか。

本日は日本李登輝友の会の主催により、日本の皆様が台湾人と一緒に台湾のWHO加盟支持の集いを開かれるとの報に接し、私は目から汗が出ています。これが日本です。これが武士道の国日本なのです。だから台湾の友人なのです。

今日の東京は雨だそうですが、そのような中を駆けつけていただき、遠く台北から深く御礼を申し上げます。日本の皆様、ありがとう。

                                    二〇〇七年五月六日

                                      台北 蔡 焜燦