安倍内閣は「集団的自衛権」を認める憲法解釈を示すべきだと力説
20061014

獅子吼する大江康弘参院議員

14日、大江康弘・参院議員(日本・台湾安保経済研究会事務局長)を講師に「日台時局問題講演会」が日本李登輝友の会、台湾研究フォーラム、メールマガジン「台湾の声」の共催により、約120名が参加して東京・文京区の文京区民センターにおいて開催された。

これまで30年間も日台関係を最前線で促進してきた大江議員の熱弁は1時間15分にわたり、講演冒頭では無名であることを謙遜しつつ、台湾との馴初めから始まるも、時に所属する民主党や小沢一郎代表への批判や、陳水扁政権批判などが展開され、日本にとっていかに台湾が大事であるかを多方面から立て板に水のごとく大演説、瞬く間に予定の時間がきてしまい、会場からは惜しみない拍手が送られた。

メールマガジン「台湾の声」では、その講演詳細が掲載されましたので転載してご紹介します。転載に当たってはいささか内容を編集していることをお断りします。


台湾関係法制定目指す大江康弘議員

14日晩、日本李登輝友の会、台湾研究フォーラム、メールマガジン『台湾の声』主催の日台時局問題講演会が東京都文京区内で行われ、約120名が参加した。

講師として招かれたのは日本・台湾安保経済研究会事務局長でもある大江康弘参議院議員。「台湾はなぜ日本の生命線なのか」という題で約90分にわたる講演を行った。

開会挨拶をした三宅教雄・日本李登輝友の会理事(元海上保安大学校長)は、安倍首相の訪中の際、スピーチ原稿に手を入れたいという外務省チャイナスクールの要求を突っぱねた安倍首相への期待を表明した。

来賓として挨拶した中津川博郷・前衆議院議員、日本・台湾安保経済研究会会長は、台湾問題を直視していない日本を国会で動かして行きたい。本当に動く議員が10名は必要。自民も民主も関係なく、台湾問題をしっかりやる人を選んで欲しいと語った。

司会の柚原正敬・日本李登輝友の会事務局長から鷲尾英一郎、奥村展三・両衆議院議員からの祝電が披露された後、日本・台湾安保経済研究会が平成16年(2004年)11月に行った決議の紹介があり、在日台湾人の外国人登録証国籍問題解決を訴えた。柚原氏はまた平成16年3月に川口外相(当時)から台湾が「切っても切れない関係になっている」重要な国であるという答弁を引き出したと大江議員を称えた。

なお、大江議員は平成17年4月、国土交通委員会で、北川一雄国交相からも台湾を「国」とする発言を引き出している。

大江議員は、安倍首相訪中について、北朝鮮核実験の関係であり、台湾は心配しないでいいという見方を示した。一方、小沢党首の対中接近について、党首就任後、アメリカが訪米を要請していないことを知った上で王毅・中国駐日大使が声をかけたものとし、今の小沢さんは、憲法を守れなど3、40年代の社会党と同じ主張をしている、自由党でお世話になっただけに残念だと語った。また民主党のスキャンダルについて、ピンチをチャンスに変えるのが自身がやっていた野球だったが、民主党はチャンスをピンチに変えてしま
うと身内を厳しく批判した。

また台湾の政治制度について、大統領直接選挙なのに、行政官僚が政治任用ではないという矛盾があって、政策決定がやりにくいと指摘した。

また小泉前首相について、靖国神社参拝問題で中国と対立して、国民を覚醒させた点について感謝しているとした。現在の日本の問題は、政治家・国民に「何があってもこのくにの形を作り上げるんだ」という覚悟がないことだと指摘した。

独立国家の三要素のうち「主権」とは敵から国を守ることであり、日本の現状は真の独立国家ではない。危機(クライシス)の原義は「分岐点」、日本は選択を迫られているという認識を示した。

台湾との親善については超党派の日華議員懇談会(平沼赳夫会長)や亜東親善協会(玉澤徳一郎会長)にも関わっているが、45名からなる民主党の「日本・台湾安保経済研究会」は、「台湾」の名を知らせ、国会議員に意識を持ってもらうために「台湾」を冠している。

8月には「中国国民党」という気持ち悪い名前を持つ党の馬英九が来たとき、西村眞吾議員は尖閣問題、大江議員は反日政策について質したが、聞きたいことへの答えは何一つなかった。施明徳の陳総統罷免運動について、双十節(中華民国体制による辛亥革命記念日)は陳水扁総統個人のものではなく国家の活動であるのにこれを潰そうという大陸の意図が見え隠れする運動だと指摘。この運動を激励した馬英九に対する不信感をあらわにした。

日本は台湾と自由・民主・人権・法治を共有しているからこそ安心してパートナーを組める。米国は民主政治を作るとイラクを攻撃した。米国が台湾を見捨てれば、米国は民主国家のトップリーダーの座から転がり落ちることになる。見捨てることはないだろうとした。

民進党結党20周年にして混乱している台湾の現状、国民党の反日親中政策といった政治環境に持っていったのは(日華断交)以来の日本の責任もあると語った。台湾関係法は(参議院では)20人いれば議員立法が提出できる。「交流協会」「亜東関係協会」という時代遅れの名前を一つ一つ変えていくことが必要だと語った。

2年前、中国の原潜が沖縄を通過した際、最も早く日本政府に知らせたのが台湾政府だった。中国の原潜は狭い先島海峡をうまく操船して抜けて行った。中国の軍備費960億ドルに対し、台湾は280億ドルである。一日に日本船が800隻もバシー海峡や台湾海峡を通過している。日本の近代的生活は一日に20万トンタンカーが3隻日本に来ないと維持できない。台湾は防人(さきもり)として頑張ってくれている。

今の日本には戦略がない。戦略はもともと狩猟民族のものだった。中国は上海協力機構を通じて戦略的に動いている。陳総統が国家統一綱領と国家統一委員会を廃止しようとして、米国の干渉で「停止」ということになったが、そもそも中国が国家分裂法を制定したことで武力侵攻の意図を明確にしたのだから、陳総統就任時の「4つのノー、1つにない」の前提は崩れていた。日本のマスコミを含め我々はどこまで理解しているのだろうか。

日・台・米の正三角形が大切であり、日米中では正三角にならない。日本版台湾関係法が出来て初めてこの正三角形が完成する。

台湾から留学生がたくさん来て日本を理解して帰ってくれている。ところが台湾からの留学生に対しては国費留学制度がない。その代わり交流協会が奨学金を出している。これでこれまで1883人の留学生が来た。しかし、去年一年で中国から国費で1736人、韓国からは1011人招いている。また日本はASEANのホスト国になるべきだったが、そうしなかったために、今では中国がASEANの顧問になっていると、日本の戦略不在に危機感を示した。安倍内閣は、今こそ集団的自衛権を認める憲法解釈を示すべきだと指摘した。

中国の反日デモについて、中津川議員、松原仁議員、笠浩史議員と去年8月4日に中国大使館へ抗議に赴いた。NHKは取材に来ていたが、報じなかった。

閣僚は台湾へ行ってはいけないことになっているが、自分が中津川内閣の官房長官になったらアメリカではなくまず台湾を訪問する。日本と台湾は一衣帯水。緊密な関係を実現するためには大きな力が必要だ。感謝の気持ちを日台の限りない友好のために使いたい、と支持を訴えた。

柚原事務局長は、地図帳問題・外務省地図問題へも尽力して欲しいと要望した。

懇親会は、多田惠『台湾の声』編集委員が司会にたち、日本・台湾安保経済研究会の活動などを詳しく台湾に伝えている自由時報の張茂森・東京支局長の音頭で乾杯を唱和して始まった。

出席者を代表して宗像隆幸・アジア安保フォーラム代表幹事、喜安幸夫・前台湾週報編集長、連根藤・台生報編集長らが大江議員の講演に賛意を表明した。草開省三・日台教育交流会事務局長は大江議員がかつて秘書を務めた玉置和郎議員と旧知の間柄で、大江議員を激励し支持を呼びかけた。

濱口和久・日本文化チャンネル桜「防人の道」キャスターは、台湾有事は日本有事と訴え、小林正成・台湾独立建国連盟執行委員は、自分の国を自分で守ることが独立だ、とそれぞれ共鳴を表した。

台湾大使館(台北駐日経済文化代表処)文化部の羅國隆・次長は講演がすばらしかったので、急遽予定を変更して懇親会に残ることにきめたと披露。最後に永山英樹・台湾研究フォーラム会長が、中国への妥協は中国への屈服である、とした上で、大江議員への期待、中津川前議員返り咲きの願いを語り、「日本・台湾、万歳」を三唱して閉会した。大江議員・中津川前議員は懇親会の間中、出席者と親しく語り合った。

なお、大江議員の活動やこれまでの発言内容については、公式ホームページで知ることが出来る。

李登輝先生が総統時代、改革を進めるにあたって、野党民進党の動きがそれを支えた側面があることが知られている。台湾の問題すなわち日本の問題を直視する野党議員には同様の、いやそれ以上の活躍をして欲しい。

平成13年から参議院議員比例代表選挙では非拘束名簿式が導入され、有権者が候補者名を記載することで、当選させたい候補者を選んで投票することができるようになった。日本が主権を守ることは、台湾にも力を与える。私たち一人一人が国づくりのために動き、賢明な選択をしていきたいものだ。(10月15日付・メールマガジン「台湾の声」より転載)

【講師略歴】大江康弘(おおえ やすひろ)昭和28年(1953年)、和歌山県田辺市生まれ。芦屋大学を卒業後、玉置和郎参議院議員秘書を経て西オーストラリア(パース)工科大学へ留学。同54年より和歌山県議会議員(連続6期)。平成13年、参議院比例区より初当選。現在、参院国土交通委員会委員長、民主党・新緑風会国会対策委員長代理、政府開発援助(ODA)等に関する特別委員会委員。台湾問題への取り組みは県議時代以来30年に及ぶ。県議会では日華親善議員連盟を設立。国会でも同問題で質問を行い、民主党内に「日台安保経済研究会」を設立して事務局長として活躍。台湾との議員交流も活発で、平成16年には「228人間の鎖」に参加。今年は民進党の「反国家分裂法1周年シンポ」で講演するなど、台湾でも注目を集めている。