3月25日、兵庫県議会(長岡壯壽議長)は2月定例会最終日の本会議において「台湾のWHO年次総会オブザーバー参加を求める意見書」を全会一致で可決しました。

これは、2月定例会開催中の2月20日、中華民国留日神戸華僑総会の陸超会長が県議会の健康福祉常任委員会委員長をつとめたこともある森脇保仁(もりわき・やすと)県議(自民党)を紹介議員として提出した「請願書」に基づき、健康福祉常任委員会で審議していた案件でした。

「日台関係の緊密化を進める議員有志の会」の代表幹事をつとめる和田有一朗議員らの活躍もあり、健康福祉常任委員会では全会一致で可決し、本会議も全会一致で可決されました。

兵庫県は中国との結びつきが強く、県は広東省や海南省と都市間提携を結んでいて、神戸市は天津市、姫路市は山西省太原、尼崎市は遼寧省鞍山、明石市は江蘇省無錫、西宮市は浙江省紹興など、軒並み中国の各都市と友好都市を提携しています。

ですから、これまで台湾との交流はほとんどなく、2014年10月に有馬温泉と新竹県が「友好交流提携に関する覚書」を締結したくらいでしたので、誠によろこばしいことです。下記に「意見書」の全文をご紹介します。

日本政府は2002年(平成14年)から米国とともに台湾のWHO年次総会のWHAへのオブザーバー参加を支持しており、馬英九政権の2009年にオブザーバー参加が実現しました。しかし、蔡英文政権の2017年以降は中国の圧力で参加できない状態が続いていました。参加が認められなければWHOから医療情報を得ることができず、総会で意見を述べることもできません。加盟国との情報共有もできない状態です。

今回の武漢肺炎(COVID-19)でも、WHOが1月22日と23日に開いた緊急委員会にも、30日の緊急委員会にも台湾は招かれず、周知のように、安倍総理が1月30日の参議院予算委員会で中国を念頭に「政治的な立場において、『この地域は排除する』ということを行っていては、地域全体を含めた健康維持や感染の防止は難しい。引き続き、WHOでしっかりと主張していきたい」と述べ、WHOのいびつな対応を非難しました。

また、武漢肺炎の拡大を受け、超党派でつくる日華議員懇談会(古屋圭司会長)は2月5日、WHO総会に台湾をオブザーバーとして参加させる提言を採択して政府に対応を求めていました。

今回の武漢肺炎発生後、地方議会で「台湾のWHO年次総会オブザーバー参加を求める意見書」を可決した例は寡聞にして知りません。恐らく兵庫県議会が初めてかと思われます。


台湾のWHO年次総会オブザーバー参加を求める意見書

昨年の日台間の人的往来は、双方で710万人を突破し過去最高を更新した。こうした人々の往来に加え、国際化の進展に伴い、国境を越える感染症の脅威をはじめ地球規模の課題が増加している。これまで以上の国際協力が必要とされている中、世界的な公衆衛生危機対応の強化が不可欠であり、防疫に係る望まれない地理的空白を生じさせることはあってはならない。

台湾は、2009年以降8年連続でWHO年次総会へオブザーバー参加し、保健衛生分野において国際貢献してきたにもかかわらず、2017年より参加ができていなかった。日本・米国等国際的な働きかけによって、今回の新型肺炎流行の中、専門家会合への参加は認められたが、オブザーバー参加は認められず不十分としか言えない。

287名の超党派・国会議員が所属する日華議員懇談会も、WHO年次総会への台湾のオブザーバー参加を一貫して支持してきており、台湾のWHO年次総会オブザーバー参加を支持する要望書を政府に提出している。WHO憲章は、「人権、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつ」と掲げており、台湾がいかなる政権であっても、保健衛生分野の豊富な知見・経験を持つ台湾の参加を妨げてはならない。

よって、国におかれては、台湾のWHO年次総会オブザーバー参加実現のため、下記事項に取り組まれるよう強く要望する。

1 台湾のWHO年次総会オブザーバー参加実現に向け、米国・英国・仏国・独国・豪州・カナダ・EUはじめ台湾の参加支持を表明している関係各国・地域と連携し、台湾を招待する権限を有しているテドロス事務局長はじめWHO事務局への働きかけをこれまで以上に強化すること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 令和2年3月25日

 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣
 内閣官房長官   様
 総務大臣
 外務大臣
 厚生労働大臣

                                 兵庫県議会議長 長岡 壯壽