国交のない日本と台湾においては、双方の政府に代わり、日本が「日本台湾交流協会」、台湾が「台湾日本関係協会」という民間機関が外交や領事業務を行い、事実上の大使館機能を担わせている。

日本台湾交流協会は、台湾における日本観の動向を調べるため、10年前の2009年4月に「台湾における対日世論調査(2008年度)」を発表して以降、2010年(第2回)、2012年(第3回)、2013年(第4回)、2016年(第5回)と発表し続けている。

毎回、「台湾を除き、あなたの最も好きな国(地域)はどこですか」「今後台湾が最も親しくすべき国(地域)はどこですか」「台湾に最も影響を与えている国(地域)はどこですか」など、同じ質問に基づく調査をしている。

いわば定点観測で、台湾の対日意識の推移をたどれる点で、回が重なるほどに輪郭が明瞭になってきてすこぶる有益だ。

ちなみに、台湾日本関係協会の日本の出先機関である台北駐日経済文化代表処も、2011年から「台湾に対する意識調査」を発表していて、2016年、2017年、2018年とこれまで4回発表している。やはり「アジアの国・地域の中で、あなたがもっとも親しみを感じるのはどこですか」「あなたが『台湾』と聞いて思いつくことは何ですか」など、同じ質問を繰り返して調査している。

日本台湾交流協会は11月13日、2018年度の「台湾における対日世論調査」を発表した。以下に、質問1の台湾人が最も好きな国のベスト5を調査年ごとに紹介したい。

 「台湾を除き、あなたの最も好きな国(地域)はどこですか」
 2018年度 日本:59%、中国:8%、米国:4%、スイス:3%、韓国:3%
 2015年度 日本:56%、中国:6%、米国:5%、スイス:3%、韓国:2%
 2012年度 日本:43%、中国:7%、米国:7%、シンガポール:7%、オーストラリア:5% 
 2011年度 日本:41%、中国:8%、米国:8%、ヨーロッパ:6%、オーストラリア:5%
 2009年度 日本:52%、中国:5%、米国:8%、オーストラリア:5%、シンガポール:4%
 2008年度 日本:38%、米国:5%、スイス:3%、中国:2%

このように経年的に比較してみると、日本が最も好きと答えた人は2008年度からトップであることや、2018年度は日本が最も好きと答えた人は過去最高だったことが分かる。

また調査は、性別、年齢、地域、婚姻状況、最終学歴、就業状況、世帯月収の観点からも行っている。2018年度の年齢別、地域別、最終学歴別の結果は下記のとおり(カッコ内は2015年度調査)。

 20〜29:66%(62%) 30〜39:70%(65%) 40〜49:55%(52%) 50〜64:54%(53%) 65〜80:50%(48%)

 北部:60%(53%) 中部:55%(60%) 南部:63%(58%) 東部:45%(66%)

 中卒:52%(47%) 高卒:56%(58%) 大卒:61%(60%) 大学院卒:59%(47%)

なかなか分析は難しいが、最も好きな国で、10年前と比べると日本だけが38%から59%と急伸していて、近年よく言われる「最良の日台関係」という状況を裏づけているようだ。また、2016年からの蔡英文政権下では中国の圧力がかなりかかっているにもかかわらず、馬英九政権時代よりも好きという人が増える一方で、米国はトランプ氏が2016年に大統領に当選して以降は台湾との関係強化をはかっているにもかかわらず、好きという人がオバマ政権時代より少なくなっているのが気にかかる。

 2番目の質問「今後台湾が最も親しくすべき国(地域)はどこですか」の結果のベスト3は下記のとおりだった(カッコ内は2015年度調査)。

 日本:37%(39%) 中国:31%(22%) 米国:15%(14%)

日本は2ポイント落ち、中国が9ポイントも上昇している。日本と中国について、年齢別で見てみると以下のようになっている。

 日本 20〜29:46%(52%) 30〜39:48%(48%) 40〜49:40%(34%) 50〜64:25%(32%) 65〜80:31%(30%)

 中国 20〜29:27%(21%) 30〜39:22%(22%) 40〜49:33%(23%) 50〜64:35%(22%) 65〜80:35%(25%)

日本と親しくすべきは20代がもっとも多いが、前回調査よりは6ポイント落ち、40代が40%で6ポイント上昇している。社会の中核を担う50代は25%の平均以下で、7ポイントも下がった。

一方の中国は、30代を除いて軒並み上がっていて、40代と65歳以上が10ポイント、50代は13ポイントも上昇している。

どうもこのあたりに、最近の台湾の人々の本音が見え隠れしているように思われる。圧力をかけてくる中国だが、もっと交流して親しくなって中国をなだめなければという気持ちが現れているようだ。中国が武力侵攻してこないようにという心理も働いているのかもしれないが、中国に毅然と立ち向かう蔡英文総統への批判として、中国国民党を支持する基盤となっているものと思われる。

日本台湾交流協会のホームページでは、2008年度から2018年度までの世論調査をすべて掲げている。台湾の人々の10年間の推移を見るよい資料だ。できれば、推移を明確にするため、この調査結果を折線グラフで示していただきたいものだ。

◆日本台湾交流協会:第六回台湾における対日世論調査(2018年度)