会場に入る李登輝総統と出迎える羅福全・元駐日代表ご夫妻(台湾メディアの報道より)

李登輝総統は1923年(大正12年)生まれだから、来年1月15日で満95歳を迎えられる。まだまだお元気だ。

12月2日、台湾教授協会が主催する「海洋之国 走向国際」(海洋国家・国際化)をテーマとした募金パーティーに出席し、台湾の国家正常化の唯一の道は憲法改正にあると持論を述べ、「憲政改革は一つの政党だけでなく、与野党が対話し、協力し合ってこそ成し遂げる可能性がある」とも喝破されたという。中央通信社の記事を下記にご紹介したい。

蔡英文政権は発足直後から「問題を解決する政権」を謳い、産業と経済構造の転換をはかって新南向政策や産業イノベーション計画に取り組み、年金改革や陪審員制度導入の司法改革を進め、幼児教育・託児公営化拡大も手掛けてきた。また、台湾軍の戦力強化にも力を入れてきた。

このように包括的に問題を解決しようというスタンスは、結果を早く求める人々には不評だったが、輸出が増大し失業率が下がるなど徐々に成果が表れてくるとその支持率も安定してきている。

ここにきて蔡英文総統は9月24日、党首を務める民進党の党大会において、投票年齢の18歳への引き下げや一票の格差の是正、人権条項の追加などを挙げたうえで「より完全に運営できる民主憲政体制をつくるのが、この世代の任務だ」と述べ、憲法改正に前向きな姿勢を示した。

10月10日の双十国慶節祝賀大会でも「私は将来、憲政改革の推進の過程で皆さんと意見を交換したいと願っています」と憲法改正に言及し、そして「私は各政党のリーダーの皆さんに、膝を交えて話し合おうと、正式に招きたいと思います」とも述べ、与野党の対話と協力を呼び掛けている。

まさに蔡総統は、李元総統が言及した観点から憲法改正に取り組もうとしている。李総統は1991年に第一次憲法修正として、動員戡乱時期臨時条款を廃止し、1948年に選出されて改選されなかった立法委員と国民大会代表のいわゆる「万年議員」全員を辞職させ、2000年まで6回にわたって憲法修正に取り組んだが、それでも修正しきれなかったと述懐されている。

国家正常化に地道に取り組む蔡総統への李元総統の期待感は小さくない。


台湾の国家正常化「憲政改革は唯一の道」=李登輝元総統

【中央通信社:2017年12月2日】

李登輝元総統(94)は2日、台湾の国家正常化や、「一つの中国」「中国法統」といったイデオロギーの束縛からの脱却について「(その実現には)憲政改革が唯一の道」だとの考えを示した。 

台湾の主体性の確立を目指す「台湾教授協会」(台北市)のイベントに出席した際に述べたもので、憲政改革は一つの政党だけでなく、与野党が対話し、協力し合ってこそ成し遂げる可能性があるとも指摘した。 

また、台湾にとって「民主主義は最も強力な後ろ盾と武器」だとしながらも、改革に着手しないと「(台湾への圧迫を強めつつある)中国によって変えられてしまう」と危機感をあらわにした。 

台湾の憲政改革を巡っては、蔡英文総統は今年9月末、自身が党首を務める与党・民進党の党大会で「より完全に運用できる民主憲政体制の構築はわれわれの世代の任務」だとして憲法改正に前向きな姿勢を示している。