20170509-01日本と台湾の親密度を表す指標として、もっとも分かりやすいのは人の往来だろう。昨年(2016年)、日本からは189万5,702人(前年より約27万人増)、台湾からは429万5,240人(前年より約50万人増)と、双方で619万人となっている。2014年が460万人、2015年が542万人だったから、毎年ほぼ80万人ずつ増える活況を呈している。

陳水扁政権のときの2003年、台湾からはまだ100万人以下で約78万人、2004年に初めて100万人を突破して108万人となったことをお祝いする会が開かれたが、隔世の感がある。

人の往来とともに指標となるのは姉妹都市の提携だ。本会調査によれば、1979年10月に青森県の大間町(おおままち)と雲林県の虎尾鎮が姉妹町を結んで以来、本年2月までの39年間で、日台間の姉妹都市や友好都市などの都市間提携は64件となっている。

2010年までの31年間で18件しかなかった都市間提携だったが、東日本大震災の翌年の2012年から急増し、2012年:5件、2013年:7件、2014年:8件、2015年:6件、2016年:13件、2017年:6件(2月現在)と、この6年間で45件、全体の70%にも及んでいる。

この都市間提携に劣らないのが、実は日台間の鉄道提携だ。

本会HPや本会メールマガジン『日台共栄』誌上では鉄道提携が行われるたびにご紹介してきたが、1986年1月に大井川鐵道と阿里山森林鉄道が姉妹鉄道を締結して以来、今年4月に南海電鉄と桃園メトロが友好協定を締結して26件目の鉄道提携となっている。

日台の鉄道提携の特徴は、最初の大井川鐵道と阿里山森林鉄道以外は、すべて2013年以降に結ばれていることだ。2013年:3件、2014年:4件、2015年:7件、2016年:8件、2017年:2件(4月現在)で、5年間で25件。鉄道提携が日本と台湾の親密度を表す指標となるゆえんだ。

いささか前置きが長くなったが、このほど結解喜幸(けっけ・よしゆき)氏が『台湾と日本を結ぶ鉄道史』を出版、日台間の鉄道交流が活発化している状況を、台湾の鉄道のはじまりから紹介している。

その第2章「台湾の鉄道との百年の歴史」、第3章「日台鉄道の結びつきの深化」、第4章「日本と台湾の交流が活性化」で、日台の鉄道提携を詳述している。

結解氏も片倉佳史氏と同じく大の鉄道ファンのようで、日台の鉄道提携をテーマとした本としては恐らく本書を超えるものはないと思われるほど詳しくまとめられている。けっして読みずらいわけでもない。むしろ、なるほどこの提携の原因はここにあったのかとうなずきながら読み進めることができる。鉄道ファンならずとも、手元に置いておきたい高い史料性を持つ本書だ。

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結解喜幸(けっけ・よしゆき)
1953年、東京生まれ。幼少の頃から鉄道が好きで、暇さえあれば列車に乗って日本国中を旅していた。出版社勤務の後、旅行写真作家として国内・海外の取材を行う。30年以上前に訪れた台湾の鉄道の魅力に嵌り、すでに訪台歴300回を数える。『台湾一周鉄道の旅』(光人社)、など単行本のほか、『台湾鉄道パーフェクト』(交通新聞社)、『台湾鉄道の旅完璧ガイド』(イカロス出版)、『鉄道ダイヤ情報』(交通新聞社)などで台湾の鉄道の魅力を発信中。

・書 名:『台湾と日本を結ぶ鉄道史』
・著 者:結解喜幸
・体 裁:新書判、並製、208ページ
・版 元:交通新聞社
・定 価:864円(税込み)
・発 売:2017年4月15日