岡山市が新竹市と友好交流都市協定を締結したのは、2003年(平成15年)4月21日のことだった。それまで、日本と台湾の自治体同士の姉妹都市などの都市間提携は、青森県大間町と雲林県虎尾鎮や福島県玉川村と南投県鹿谷郷などで、市クラスは石垣市が宜蘭県蘇澳鎮、沖縄県与那国町と花蓮市の2つのみで、市クラス同士の提携はなかった。

当時、岡山市は中国の洛陽市と姉妹都市提携していて、洛陽市から新竹市との提携「日中共同声明」に違反し、提携するなら姉妹都市を凍結するという強い警告が発せられていたにもかかわらず、当時の萩原誠司(はぎわら・せいじ)市長は、米国の都市が中国の都市と同時に台湾の年とも姉妹提携していることなどを精査、外務省の意向も確認して新竹市と友好交流都市協定を締結したのだった。

この提携に伴い、岡山弁護士会と新竹市の新竹律師公会(弁護士会)が友好協定を締結していたことが判明した。締結は2014年9月4日のことだった。

日台間では近年、さまざまな分野で協定が結ばれている。日台初の協定や覚書も少なくない。例えば、東京都水道局と台北市水道事業部門の水道提携(2013年4月)、富士山と玉山の友好山提携(2014年2月)、広島県教育委員会と桃園県教育局の教育協定(2014年5月)、東京ガスと台湾中油の液化天然ガス分野における相互協力協定(2015年8月)、成田国際空港と桃園国際空港の姉妹空港覚書締結(2016年9月)などである。

恐らく、この岡山弁護士会と新竹弁護士会の弁護士会同士の友好協定も日台初のことだろう。心から祝意を表しつつ、下記に締結当時の模様を伝える「山陽新聞」記事をご紹介したい。

なぜこの友好協定締結が判明したかというと、3月11日付の山陽新聞が「岡山弁護士会と友好協定を結んでいる台湾・新竹市の弁護士会の12人が11日、岡山市での法学交流会に臨み、訴訟と調停の中間的な制度として定められた日本の労働審判法について学んだ」と報じていたからだ。

別掲でこの記事をご紹介するが、記事に「2009年ごろから人材交流などで交流を深めてきた」とあるので、少し調べてみると、2009年3月末に新竹弁護士会が岡山弁護士会を訪問、翌年8月下旬には岡山弁護士会が新竹弁護士会を訪問するなどして交流を深めていた。

岡山からの表敬訪問団の一員として参加した作花知志(さっか・ともし)弁護士は協定締結当時、ブログで「実は台湾は,日本の国内法の影響を強く受けている国でもあります。例えば台湾の民法は日本の民法を継受し,さらには日本の民法は元々ドイツの民法を継受しているため,台湾で民法の大学教授になることを希望される方は,必ず日本かドイツに留学をされるのだそうです」(2014年9月7日)と、日台弁護士界の共通点などをつづっている。

なお、岡山弁護士会と新竹弁護士会との友好協定を導いた萩原市長は現在、岡山県美作(みまさか)市長をつとめ、本会理事でもある。

◆岡山弁護士会

◆新竹律師公会


台湾の弁護士会が本社表敬 岡山弁護士会と友好協定締結

【山陽新聞:2014年9月4日】

岡山弁護士会(佐々木浩史会長)と友好協定を結ぶため来岡した台湾・新竹弁護士会(許美麗理事長)の一行が4日、岡山市北区柳町の山陽新聞社を表敬訪問した。

13人が岡山側の佐々木会長ら4人に付き添われて訪問。許理事長は、岡山、新竹市が姉妹縁組を結んでいる縁で、2009年ごろから人材交流などで交流を深めてきた経緯に触れ、「今後も両弁護士会を温かく見守ってほしい」と話した。

松田正己社長は「法曹界の発展は岡山の街にとっても大きな助けになる」と応じた。

一行はこの日、岡山市の大森雅夫市長にも面会した後、市内のホテルで協定書に調印。積極的な情報交換を通じ、日本、台湾双方の司法制度や法律問題について共同研究を進めることを申し合わせた。