ネット上では蓮舫氏の二重国籍疑惑について盛んに議論されている

最近、民進党の代表選挙に出馬表明している蓮舫・代表代行に「二重国籍」問題が浮上し、蓮舫氏が中華民国籍を放棄したのかどうかが問題視されています。蓮舫氏は産経新聞のインタビューに「帰化じゃなくて国籍取得です」と答えています。しかし、実は帰化も国籍取得も同じことで、蓮舫氏自身は1985年に中華民国籍から日本に帰化したと言われています。

帰化(日本国籍取得)は身分変動を伴いますので、台湾出身者が日本人と結婚したり養子縁組するのと同様、戸籍に反映されます。

では、蓮舫氏のように台湾出身者が日本の国籍を取得したケースにおいて、戸籍における出生地はどのように表記されるのかといいますと「中国台湾省」です。「台湾」ではありません。蓮舫氏の戸籍の出生地は「中国台湾省」とされているはずです。

本会は平成22年(2010年)9月、台湾人女性と結婚したある日本人男性から妻の戸籍の国籍を「中国」にされたといって相談を受けたことをきっかけに、2010年11月から台湾出身者の戸籍の国籍が「中国」とされている問題の解決に取り組んでいます。

すでに在留カードや総務省が管轄する外国人住民基本台帳の「国籍・地域」欄で台湾出身者は「台湾」と表記されており、法務省でもすでに台湾と中国を区別して統計を発表しています。しかし、未だに法務省民事局管轄の戸籍だけが、台湾出身者を「中国」と表記し続けています。それも50年以上も前、1964年(昭和39年)、東京オリンピックが開かれた年に出された民事局長通達が未だに生きているのです。

ここに、なぜ台湾出身者の人々は帰化したり、日本人との結婚や養子縁組で戸籍の国籍表記が「中国」や「中国台湾省」とされているのか、本会ではその経緯や問題点をまとめていますので、改めてご紹介します。本会の提案にご賛同いただける場合は、ぜひ署名にご協力をお願いします。

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台湾出身者の戸籍の国籍について

                                    日本李登輝友の会

戸籍の国籍や出生地欄に「中国」と書かれた例

◆現況
台湾出身者が日本人との結婚や養子縁組をする場合、または日本に帰化するなど、その身分に変動があった場合、戸籍における国籍や出生地は「台湾」ではなく「中国」や「中国台湾省」と表記しています。

戸籍は法務省民事局が管掌し、戸籍事務は地方自治体が法定受託事務として処理していることから、市役所など自治体の戸籍窓口では訂正する権限がありません。

◆経緯
・昭和27年(1952年)4月28日、日本が中華民国と「日華平和条約」に署名し、前年9月8日に署名のサンフランシスコ講和条約が発効したこの日、外国人登録令(昭和22年公布・施行)が廃止され「外国人登録法」を制定、台湾出身者は中華民国(中国)の国民とみなされ国籍を「中国」と表記。

・昭和39年(1964年)6月19日、法務省民事局は、東京法務局長から「中国本土で出生又は死亡した者についての出生又は死亡の場所の戸籍記載を、 『中華人民共和国……』と記載するよう強く希望する者」があるが、日本は中華人民共和国を未承認であることから、その「要望による取扱いは認められないと考えますが」、しかし「中華民国は事実上台湾と中国本土とに分離している実情からして『中華民国』と記載することに統一することは疑問であり、むしろ中国本土及び台湾を区別することなくすべて『中国』と記載するのが適当と考えられます」という照会を受け、中華民国出身者も中華人民共和国出身者も戸籍の国籍を「中国」とする法務省民事局長の通達「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについて」を地方法務局長に送達。

・昭和47年(1972年)9月29日、日本は中国と「日中共同声明」を発表し国交を樹立するが、台湾出身者はこれ以降も国籍は「中国」のまま現在に至る。

◆問題点
1 法務省民事局長の通達が出されたのは、日本が国連加盟国でかつ常任理事国の中華民国を「中国」唯一の政府と認めてと国交を保っていた時期です。しかし、日本は昭和47年(1972年)9月29日に中華人民共和国を「中国の唯一の合法政府であることを承認」する「日中共同声明」をもって国交を樹立し、中華民国とは国交を断絶。

2 その後、台湾では李登輝総統時代に民主化と本土化が進み、平成15年(2003年)9月1日に中華民国政府はパスポートに「TAIWAN」と付記。

3 一方、日本も台湾と中国を区別するようになり、平成14年(2002年)5月14日、日本は米国とともに台湾の世界保健機関(WHO)へのオブザーバー参加を支持。

また、平成15年(2003年)12月12日には、交流協会台北事務所が中国の猛反対を押し切り、在外公館が年に1度、その国の要人を招待して開催する日本のナショナルデーである「天皇誕生日祝賀会」を台湾で再開。以後、毎年開催。

平成17年(2005年)4月29日には台湾における叙勲を復活、日本語教育に功績を残した蔡茂豊氏が旭日中綬章を受章。以後、平成28年春までに42名が叙勲。

さらに、同年9月26日、愛知万博の直後、日本政府は台湾からの観光客に対するビザ免除を恒久化。平成19年(2007年)9月21日には、台湾と「運転免許証の相互承認」を実施し、平成20年(2008年)10月1日からは運転免許証の切替も可能になりました。しかし、日本は中国とは未だにビザ免除恒久化も運転免許証の相互承認も運転免許証切替措置も行われていません。

4 台湾を中国と区別して台湾として認める傾向はさらに顕著となり、東京都は台湾への転出、台湾からの転入の場合、住民基本台帳の記載事項の「従前の住所」の記載について、昭和62年の通知が現状に即して正確ではないとの判断から、平成20年(2008年)5月30日、住民基本台帳に「台湾」表記を認めてもよいとする通達を区市町村に送付。

これに対して台湾政府は6月8日、「対岸と明確な区別がつき、混乱が避けられ、東京都における僑民の利益が保障される」として歓迎表明。この東京都の通達は他の自治体にも波及。

5 以前から台湾出身者の国籍を「中国」としていることに対して「台湾」への改正要望が出ていた外国人登録証明書(外登証)問題において、平成21年(2009年)3月6日、3年以内に実施する在留カードにおける台湾出身者の「国籍・地域」表記を「中国」から「台湾」に変更することを盛り込んだ「出入国管理及び難民認定法」(出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律案)が内閣提出法律案として衆参両院に提出。同年7月8日、同改正法案が可決され7月15日に公布。

3年後の平成24年(2012年)7月9日、外登証が廃止され、新たに在留カードが交付。台湾出身者の「国籍・地域」表記は「中国」から「台湾」となり、同日実施の外国人住民基本台帳でも台湾出身者の「国籍・地域」欄は「台湾」と表記。

6 台湾側も在留カードの台湾表記を歓迎し、馬英九総統は2010年(平成22年)11月、日台関係の改善および深化状況について「青年ワーキングホリデー協定の締結、台北駐日経済文化代表処札幌分処の開設、日本に居住するわが国国民の国籍欄の名称記載問題解決といった具体的な成果を得た」と表明。また、馮寄台・前台北駐日経済文化代表処代表も2011年(平成23年)1月の新年祝賀会の席上、「在日台湾人の外国人登録に関する証明書の国籍欄が『中国』から『台湾』への変更」を「成果」として強調。

以上、住民基本台帳における台湾への転出、台湾からの転入の際の台湾表記(地方自治体)、在留カード(法務省入国管理局)や外国人住民基本台帳(総務省)における台湾出身者の台湾表記など、日本では台湾と中国を区別して表記する傾向が顕著になっています。

運転免許証(国土交通省)においても、台湾出身者の本籍蘭は「中国」とされてきましたが、近年は空白とする措置が取られていました(2010年からはIC化により本籍欄は消滅)。しかし、戸籍では台湾出身者は依然として「中国」とされています。

そこで、国会でも平成23年(2011年)からこの戸籍問題を解決しようという動きが起こりました。まず、同年7月27日、中津川博郷・衆院議員が衆院外交委員会において質疑。国会で台湾出身者の戸籍問題が審議されたのは初めてです。中津川議員は「台湾出身者の戸籍の国籍欄や出生地欄で『中国』あるいは『中国台湾省』とされていて、非現実的な記載がされているのはおかしい」と指摘。これに対して、法務省の小川敏夫副大臣は「日本の国籍表示において台湾を認めるか否かは、台湾に対するわが国の立場を踏まえて慎重に検討する必要がある」と答弁。

また、同年8月9日、大江康弘・参院議員が「戸籍における台湾出身者の国籍表記に関する質問主意書」を提出。菅直人総理からの「答弁書」は、台湾出身者の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記するのは、昭和39年6月19日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっていることを認めたものの、台湾出身者の国籍を「中国」としていることは「我が国が国家として承認しているところの『中国』を指すものであり、このような取り扱いに問題があるとは考えていない」と答弁。

日本が「政府承認」している「中国」とは中華人民共和国で、外務省の説明によれば、「国家承認」している「中国」は明治時代にまでさかのぼるとされ、現在の中国大陸や台湾を含む地域とされています。

しかし、実際の戸籍では「出生地」として「中国台湾省」と表記されています。つまり、現在の台湾(中華民国)では「台湾省」という行政区は機能停止状態にあり、一方、「台湾省」という行政区を設置しているのは中華人民共和国ですので、日本の戸籍では未だに台湾出身者を「中国人」としているのが現状です。

戸籍とはそもそも、出生や婚姻、国籍など個人の身分関係を明確にすることを目的として設けられました。しかし、台湾出身者の国籍を中国としていたのでは、日本人としての身分関係を明確に把握できません。

そこで、地方議会でもこの問題が取り上げられ、すでに4自治体が法務大臣などに宛てた「意見書」を可決しています(石川県議会:平成24年10月2日、宮城県議会:平成24年10月11日、柏崎市議会:平成28年3月25日、鎌倉市議会:平成28年6月30日)。

すでに在留カードや総務省が管轄する外国人住民基本台帳の「国籍・地域」欄で台湾出身者は「台湾」と表記されています。また、法務省でもすでに台湾と中国を区別して統計を発表しています。

しかし、未だに法務省民事局管轄の戸籍だけが、台湾出身者を中国と表記し続けています。同じ法務省内における表示の整合性を図ることはもちろんのこと、外務省との整合性も図らければなりません。また、台湾人の人権を侵害しているという指摘もあり、かつこのまま放置しておけば中国の主張を受け入れているとみなされかねません。

法務省は早急に元凶である「民事局長通達」を出し直し、台湾出身者は「台湾」と表記すべきです。