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国籍欄に「中国」と記載された台湾出身配偶者の戸籍の一例(クリックすると拡大します)

本会の小田村四郎会長は2月7日、岩城光英・法務大臣に賛同署名とともに「台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書」をお送りしました。ここに「要望書」の全文をご紹介します。

本会は設立以来、在日台湾同郷会や在日台湾婦女会など台湾出身の皆さまとともに「外国人登録証明書」問題の解決に取り組み、平成21年(2009年)7月、「出入国管理及び難民認定法」の法改正をもって台湾出身者の「国籍・地域」表記を「中国」から「台湾」に変えることに成功しました。

その翌年の平成22年(2010年)11月からは、戸籍問題の解決に取り組んでまいりました。民主党政権下では法務大臣が魚の目のようにコロコロ替っていたこともあり、解決の糸口さえ見出せませんでした。しかし、自民党の安倍晋三総理時代となり、安倍政権が台湾の位置づけを鮮明にしたことで、この戸籍問題にも曙光が見えてきたように感じています。

岩城法務大臣は、福田内閣のときに副官房長官として台湾を担当していたこともあり、台湾には造詣が深いと言われています。昨年10月に第三次安倍内閣の法務大臣就任し、その直後、台湾出身戦歿者も祀られている靖国神社に参拝しています。

小田村会長の「要望書」にあるように、すでに民事局長通達が出されてから50年以上も過ぎ、台湾出身者を「中国」と表記することは時勢にかなっていない上、同じ法務省でも、台湾出身者について、入国管理局では「台湾」としながら、民事局では「中国」と表記するという不整合状態にあります。法治国家を誇る日本の中核である法務省内の異常とも言うべきこの不整合状態を解消するためにも、民事局長通達の出し直しは喫緊の課題です。

本会は今後とも、署名活動などを通じて戸籍問題の解決に向け微力ながら力を尽くしてまいります。さらなるご理解を賜り、またいっそうのご協力をお願い申し上げます。

 平成28年(2016年)2月10日

                                    日本李登輝友の会

※戸籍問題の詳細については「本会の提言」をご参照ください

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台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書

私ども日本李登輝友の会は、文化交流を主とした日本と台湾の新しい関係を構築することを目的として活動している民間団体です。

法務省はこれまで、台湾出身者が日本人と結婚したり帰化した場合、戸籍の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記してきました。中国とは中華人民共和国のことであり、中国台湾省とは中華人民共和国の行政区を指します。即ち、台湾出身者を中国人としているのが現在の戸籍制度です。

戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」としたのは、昭和39(1964)年6月19日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについて」という通達でした。このことは政府も、大江康弘・参議院議員の「質問主意書」に対する平成23年8月19日の「答弁書」で明確に認めています。

昭和39年といえば今から50年以上も前、東京オリンピックが開催された年で、日本が中華民国と国交を結んでいた時代です。しかしその後、日本は中華民国と断交して中国と国交を結ぶなど、日本と台湾・中国の関係は大きく変わってきています。

日本政府は、平成17年9月には台湾観光客に対するビザ免除を恒久化し、平成19年9月には台湾と自動車運転免許証の相互承認を行い、中国と異なる対応をしています。東京都も平成20年5月、住民基本台帳の表記について、台湾からの転入・台湾への転出の際には「台湾」の表記を認めるという通知を出しています。

さらに平成24年7月9日、外登証を廃止し新たな在留カードの交付に際しては「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と明記しています。同時に実施された外国人住民基本台帳でも、台湾出身者の「国籍・地域」は「台湾」と表記するようになりました。もちろん、台湾が官民挙げて歓迎していることは周知の通りです。

ましてや台湾は、これまで一度たりとも中華人民共和国の統治を受けたことはなく、台湾を中国領土とするのは、台湾侵略を正当化するための中国の政治宣伝以外のなにものでもありません。事実、この戸籍表記は日本政府の見解にも合致しておらず、これを放置しておくことは中国の覇権主義的主張を受け入れているとみなされかねません。

ついては、法務大臣は戸籍の国籍欄および出生地欄を在留カードにならって「国籍・地域」と改め、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と表記すべく、早急に民事局長通達を出し直すよう要望します。併せて、ここに私どもの要望に賛同する署名(第11期)2180人分を呈します。

なお、賛同署名は平成23年11月の第1期以来、一昨年3月末の第10期まで3万4351人分の署名を要望書とともに送付していることを申し添えます。

法務大臣におかれては、在留カードや外国人住民基本台帳が実施されている現在、法務省内の整合性を図るためにも、早急に民事局長通達を出し直し、台湾出身者は「台湾」と表記するよう要望します。

 平成28年2月7日

                           日本李登輝友の会会長 小田村 四郎

法務大臣 岩城光英殿