1月15日夜、民進党は投票前最後の集会を総統府前広場(ケタガラン大道)で行った。時おり雨足が大きくなる小雨模様ながら、報道では10万人の支持者が集まったと報じられている。

蔡英文候補は午後9時半すぎに、陳建仁副総統候補とともに登壇、最後の演説を行い、支持を訴えた。

以下は蔡候補の演説全文。翻訳は本会台北事務所。


20160116-01

投票日前日、最後の選挙集会にて(本会台北事務所撮影)

やっと、ここまでたどり着きました。つい先ほどまで、私たちは板橋にいました。そうです、4年前、敗戦の結果を受け止めた場所です。板橋を出発し、今回の選挙戦最後の活動場所にやって来ました。いま、私たちはケタガラン大道(総統府前広場)に立っています。

私の後ろには総統府がそびえています。過去8年間、この広場ではたくさんのことがありました。

野いちご運動のとき、若者たちはここで集会・デモの権利を主張しました。

反原発デモのとき、20万人の人々が、ここでエネルギーの安全を求めました。

洪仲丘事件のとき、25万人の人々が、ここで政府に決然と抗議し、真相究明を訴えました。

ひまわり学生運動のとき、私たちは50万人がここに集まり、民主主義を訴え、密室協議に反対しました。

しかし、人々の声は、どんなに声を大にしてもこの総統府前広場でかき消えてしまいました。私の後ろにある総統府は、広場の人々からわずか数百メートルしか離れていないのにもかかわらず、総統府の中にいる人たちには国民の声が聞こえていなかったのです。

政府は無能であり、非情であり、冷淡であり、国民の苦痛を顧みようともしませんでした。これは、台湾の国民の多くが普遍的に感じていることでしょう。

しかし、台湾の社会で最も感動するところは、このような8年間だったにもかかわらず、こんな有り様の政府にもかかわらず、人々は健全にエネルギーをたくわえ、それは失われることなく、日に日に大きくしていったことです。

明日、私たちはこのエネルギーを放出させます。私も、民進党も、ただただこのエネルギーの一部分にすぎません。私は何度も訴えてきました。今回の選挙は、誰かを打ち負かすものではありません。私たちが打ち負かすべきものは、この台湾という国の苦境なのです。

もし皆さんが、この健全なエネルギーの存在を確信するなら、台湾社会の変革を望むなら、どうか皆さん、明日投票へ行ってください。皆さんの意思を見せてください、皆さんの決心を見せてください。

投票へ行くことは、蔡英文なら変革できると信じていただくだけではありません。民進党ならば変革できると信じてもらうだけではありません。投票の意義は、私たちが自らの手で、自らの力でこの国を変革するということなのです。

私の後ろには、様々な業種の代表がいます。私たちの選挙運動チームがいます。毎日のように会議を開き、政策討論を交わしたシンクタンクの専門家たちがいます。そして、台湾の社会でひたむきに生きる多くの友人たちがいます。

彼らは今日、私のそばに立ってくれています。そして、会場にいるこんなにも、こんなにもたくさんの皆さんが、私と最後の一歩を踏み出そうとしてくれているのが見えます。私には何と言えばいいのかわかりません。ただただ、心から感謝したい、それだけなのです。

今回の選挙戦、私の心は最初から最後まで感謝の気持ちに満たされています。皆さんの支持に感謝したい、そして台湾の成熟した民主主義に感謝したいのです。

他の陣営の候補者たちが威嚇するように言いました、彼らを選ばなければ台湾は不安定になりますよ、と。
しかし、皆さんは私を信じることを選んでくれました。蔡英文なら具体的な政策でもって社会の不安を解決してくれる、と。

他の陣営の候補者たちが脅迫するように言いました、彼らを選ばなければ中華民国は消滅しますよ、と。
しかし、皆さんは私を信じることを選んでくれました。蔡英文なら、その決意と実行力で本当に台湾を団結させられる、と。

他の陣営の候補者たちが言いました、不正をなくそう、対立をやめよう、と。たくさんの、本当にたくさんの人々が行動で私への支持を示してくれました。皆さんは、国民党のこうした選挙のやり方を拒絶しました。私たちもまた、いかなる政党もこうしたやり方で台湾を分裂させることを拒絶します。まさにもの言わぬマジョリティ、まさにもの言わぬパワーなのです。

対立はもはや選挙カードにはなりません。なぜなら私たちは対話の力を信じているからです。恐喝カードも意味がありません。なぜなら私たちは改革を信じているからです。なによりも、中華民国は誰が当選しようとも消滅することはありません。なぜなら私たちは民主主義さえあればこの国がよりいっそう強くなっていくことを信じているからです。

明日、私たちは投票という手段で証明してみせましょう。恐喝と対立という古い政治はもはや歴史の一部になるということを。台湾人は新しい時代の決意を追い求め、勝利をおさめるのです。

親愛なる台湾国民の皆さん、新しい時代までもう一歩です。この一歩を踏み出すことは、改革への第一歩になるのです。

すべての台湾国民が、台湾の民主主義史上3度目の政権交代を歓迎してくれることを私は希望しています。これは新しい政治の出発点です。私は5つの政治改革によって台湾を団結させます。

密室協議はもはや過去のものです。民主国家は総統一人のものではないことは言うまでもありません。私が総統に当選したあかつきには、国民の声を民主主義の手続きにのっとって政策決定の基礎にします。選挙だけが民主主義ではありません。民主主義は私たちの毎日の生活です。将来のあらゆる改革は、民主主義の手続きにのっとり、団結の基礎のうえで、ひとつひとつ必要な改革を進めていきます。

踏み出した一歩は、台湾の新しい経済の第一歩です。私は5大革新研究開発計画をとともに、台湾の経済発展の新しいモデルによって、産業構造の転換をすぐにでも推し進めます。それによって給与水準と企業の利益を同時に成長させるのです。

踏み出した一歩は、新しい社会の第一歩です。私は5大社会安定系計画によって、食品安全の管理システムを設立し、地域の介護制度、公営住宅の運営を推し進めます。私は台湾の社会を安心して暮らせる場所にしたいのです。

この新しい時代はもう目の前です。
明日のあなたの一票は、新しい政治への一票です。
明日のあなたの一票は、新しい経済への一票です。
明日のあなたの一票は、新しい社会への一票です。

明日、もっと寒くなるかもしれません。でもどうかお願いです、どうか投票に行ってください。風が冷たく、雨が降っても、故郷への道が遠くとも、どうかどうかお願いです。どうか投票に行ってください。

選挙活動もあと数分で終わりになります。最後の数分で、私は若い人たち、特に初めて投票する人たちにメッセージを送りたいと思います。私は民主進歩党の主席です。とても光栄な身分です。わが党の根底には台湾人の決してあきらめないという精神があります。わが党の血に流れているのは、台湾の人々が追い求めてきた民主、自由への渇望です。

私はこれまで上辺を繕ったことはありません。わが党はかつて転んだことや、失敗したこと、国民の信任を裏切ったことがありました。しかし、この数年間、私がやってきたことの全ては、わが党を再び立ち上がらせることにほかなりませんでした。民進党に党の資産はありません。私たちにはただひとつの改革への堅い決心があるのみです。

もう一度、皆さんにお願いします。民進党の今回の比例選挙区名簿をもう一度見てください。本土派も親中派も入り乱れています。しかし、私は自信をもっています。全部で18の政党のうち、民進党こそが最良だと。

私の後ろに立っている皆さん、彼らは食品安全の専門家であり、人権派弁護士であり、社会運動の第一線で活躍してきた人たちです。彼らは長い間、この社会の公平と正義のため、絶え間なく奮闘してきた人たちです。彼らひとりひとりが、民進党の改革の決心を表しています。彼らひとりひとりが、民進党が大きな門を開き、歩み、社会の進歩のパワーと結びつける努力を表しています。

もし皆さんが、この国には公正がないと嘆くなら、彼らが立法院で公正を取り戻します。もし皆さんが、この社会には正義がないと嘆くなら、彼らが立法院で正義を取り戻します。

一昨年の統一地方選挙で皆さんは投票に行かれました。故郷に新しい希望をもたらしただけでなく、皆さんの努力を世界に知らしめたのです。皆さんがいるからこそ、台湾は世界へ光を放てるのです。

明日、どうかどうか皆さんに、若い皆さんにお願いします。台湾はまだまだ皆さんによる後押しが必要です。ためらっていないで動きましょう。バスに乗って、電車に乗って、新幹線に乗って、どんな方法でもいい、どうかどうか明日は必ず投票へ行ってください。

どうか皆さん、初心を忘れないでください。自分の国は自分で守る、その任務を果たすのはまさに今です。

どうか最良の候補へ投票してください、どうか最もプロフェッショナルな候補へ投票してください。どうか最も台湾を変えることのできる力を持った政党へ投票してください。

今週、私たちは台湾を南北に2度往復して街宣パレードを行いました。たくさんの、本当にたくさんの人たちが私たちを応援し、エールを贈ってくれました。車の上から、ある若者がわざわざ前回の総統選挙に私が参戦したときの旗を持ち出して、私たちに振ってくれているのが見えました。

もしかして、間違えて持って来ちゃったんじゃないかと思う人もいるでしょう。しかし、私はこの4年前の旗を見て、本当に本当に、心から感激し、感動したのです。

どうもありがとうございます。4年前の旗をずっとそばに置いておいてくれてどうもありがとう。私のことを信じ続けてくれたことに心から感謝します。4年前、私はこう言いました。いつか蔡英文は必ず戻ってくる、と。

私は約束を守りました。前回よりももっと多くの人々を連れて戻って来ました。今、ここに立っているのはもっともっとパワーアップした蔡英文です。私は台湾の人々を未来へ、新しい時代へと導きます。

明日、私たちにとって最後の一歩です。どれだけ待ち望んでいたでしょうか。もうすぐです。すべての人にお願いです。皆さんの、台湾への熱い想いを、改革への希望を、この数年間の不満を、全てを改革へのエネルギーに転化させようではありませんか。

どうぞ投票に行ってください、票を投じてください。皆さんにお願いします。明日、投票所に入り、投票用紙に印を押す、それが最後まで走り切った証です。

総統副総統は2番の蔡英文・陳建仁候補へ。
政党票は1番の民主進歩党へ。
立法委員は民進党が支持する候補者へ。

台湾の改革には一票でも多く必要なのです。

明日、台湾の国民は権力を取り返します。
明日、私たちは台湾への勝利をもたらします。
明日、私たちは投票で、この総統府を台湾国民の手に取り戻すのです。