20160111-01

1月10日、台南市で支持を訴える蔡英文候補(中央)、右は頼清徳・台南市長(蔡候補のFBより)

16日の投票までいよいよ残り一週間を切り、最後の週末を迎えた各陣営は大規模集会を開催し投票を呼びかけた。

民進党の蔡英文候補は「総統選挙の勝利に加え、立法院でも過半数を得ることが改革の加速に繋がる」と訴え、投票へ行くことを促した。

独走状態が伝えられることで有権者の投票意欲が下がり、投票率が低下することによって、立法委員の当落に影響を及ぼすことを懸念したためだ。

例えば、今日から期末試験が始まった国立台湾大学のように、ほとんどの大学が投票日前後に期末試験を迎える。住民票制度が機能しておらず、戸籍地(本籍地)のみで投票所が決められる現行の投票制度では、特に学生や若者への経済的・時間的な負担は大きい。投票するためには交通費と時間をかけて戸籍のある地元へ帰省しなければならないからだ。

これまで何度も不在者投票や郵便投票などの制度が立法院でも検討されてきたが「不正の温床になる」と立ち消えになり、実現への見通しは立っていない。

過去の投票行動を見ると、投票率が上がれば公務員や栄民と呼ばれる退役軍人に大きな票田を持つ国民党に有利とされてきた。ただ、民間調査機関の台湾指標民調が昨年12月31日に発表した調査結果では、蔡英文・陳建仁コンビに対する支持率は20~29歳が57%、30歳~39歳が51%と突出しており(全体の支持率は46%)、その一方で朱立倫・王玄如コンビへの支持率は20~29歳が11%、30歳~39歳が10%と、民進党にとって若者からの支持が重要な基盤ということが見てとれる。そのため、立法院における民進党の躍進には、若者の投票が不可欠ともいえる。

ただ、テレビ局の壹電視が1月2日・3日に実施した調査結果によると「投票に行くか」という質問に対し「必ず行く」と答えたのは20~29歳が41.3%と半分を割り込み、30歳~39歳が52.6%で(全体では60.9%)、40歳以上の年齢層で「必ず行く」と答えた割合が65~70%以上で推移していることと比べると、投票意欲が低いことは否めない。

現在の独走状態では投票率が上下しても、総統選挙には大きな影響は出ないだろうとされているが、若者の投票率が下がれば、民進党と連携する第3勢力「時代力量」に影響を及ぼす可能性もある。ヒマワリ学生運動参加者を主体とした新興政党「時代力量」への支持率は、20代と30代では二桁に達し、国民党を上回っているからだ。時代力量の候補者は各選挙区で善戦していることもあり、そうした意味では、若者たちの投票率が明暗が分けるともいえそうだ。

  時代力量 国民党
20~29歳 11.8%  10.1%
30~39歳 15.2%  9.7%
40~49歳 6.3% 24.6%
50~59歳 7.4% 22.5%
60歳以上 2.9% 18.1%
わからない/回答拒否 0.0% 0.0%

総統副総統コンビに対する支持率が、選挙区の立法委員に対する有権者の投票行動に直結するわけではないが、陳水扁政権時代のように、民進党の総統なのに立法院で過半数を占めるのは国民党という「ねじれ現象」により、却って台湾の改革が停滞することは避けなければならない。どうか一人でも多くの有権者、特に若者たちの投票を促したいところだ。

◇      ◇      ◇

投開票日までいよいよ残り数日とカウントダウンを迎え、各陣営の「選前之夜(投票日前夜の大集会)」会場が出揃った。各陣営の会場は下記の通り。

【民進党】19:00 総統府前広場(凱達格蘭大道、MRT台大醫院駅からすぐ)

【国民党】19:00 新北市板橋区第一運動場(新北市板橋區第一體育場、新北市板橋區漢生東路278號)

【親民党】19:00 台北スタジアム(台北田徑暖身場、台北市敦化北路3號)

民進党は最高のロケーションとされる総統府前広場(凱達格蘭大道)の使用権を獲得した。報道によると、道路使用許可申請受付日の三週間前には民進党関係者が台北市役所に並んでいたという。

近年の選挙活動では、2008年の馬英九、2010年の郝龍斌、2012年の馬英九、一昨年の連勝文と、国民党が総統府前広場の使用を続けており、今回の民進党はいち早く万全の態勢で使用権を獲得したようだ。

投票日前日、蔡英文候補は午前9時30分から新北市で記者会見を開いた後、新北市と台北市で街宣車に乗り最後の訴えを行う。夕方には新北市板橋区で南部から移動してきた陳建仁候補と合流し、最後の選挙活動会場へ向かう予定。

一方、国民党は新北市長を兼任する朱立倫候補の地元新北と台北で合同開催する。新北市の板橋第一運動場をメイン会場とし、台北では国民党本部前(台北市八徳路二段232-234号)でも行われる。当日、朱候補は南部から北部へ移動し、最後は板橋区の会場に参加する。

親民党は台北市内の陸上競技場で夜7時から最後の集会。

また、柯文哲・台北市長は新竹市で民進党の柯建銘候補(立法委員)の選挙集会に登壇する予定と報じられている。

※この原稿は本会台北事務所で作成したものです。上記に掲載した選挙集会のスケジュールは発表段階の予定であり、変更になる可能性があります。また、台湾の法律(総統副総統選挙罷免法)により外国人が候補者の応援をすることは禁じられておりますのでご注意下さい。