李登輝元総統が董事長(理事長)を務める財団法人李登輝基金会は3月12日、臨時董事会を開き、これまで「BOT方式」による建設計画を進めてきた李登輝総統記念図書館について、「BOT方式での建設計画を取りやめ、他の方式による建設計画を進める」ことを決議した、との連絡が李登輝基金会から本会に入りました。

もともとこの李登輝総統記念図書館は、李登輝総統在任中の資料や文物を展示・保存すると同時に、台湾における民主教育の基地としての役割が期待されていました。

しかしながら、新北市政府と共同で推進するBOT方式での建設に対し、「政治的な利益誘導があるのではないか」「朱立倫市長と取引があったのではないか」という根拠のない誹謗中傷により、本来市民にとって有益なはずの施設という意義が失われてしまいました。

そのため、政府と共同で行うBOT方式を継続して進めた場合、更なる誤解を招き、李登輝元総統の立場を傷つける恐れもあることから、今般、BOT方式ではなく、他の方法での建設を進めることを決議したとのことです。

李登輝基金会から届いた説明の全文を下記に掲載します。


財団法人李登輝基金会より、日本李登輝友の会の皆様へ

2015年3月12日

いつも李登輝基金会の活動にご協力いただくとともに、李登輝総統へのご支持をありがとうございます。

さて、財団法人李登輝基金会(董事長:李登輝)は3月12日午後2時より、新北市淡水区の財団法人李登輝基金会において臨時董事会を開催し、現在進められている「李登輝総統図書館」の建設計画について下記のような決議を行いました。

日本李登輝友の会の皆様には、日本側の窓口としてご協力いただいて来ておりますので、貴会を通じてご支持いただいた皆様にご説明申し上げる次第です。

財団法人李登輝基金会

一、台湾では、2004年1月に「総統、副総統文物管理条例」が成立し、総統に関連する資料等を管理、利用する制度が設けられた。

そこで、2005年、国史館を中心とする政府機関と、李登輝基金会の前身である財団法人群策会は、将来的に李登輝総統図書館を建設することで合意した。

方式としては、政府が土地を提供し、民間が建設を行い、政府と民間の共同経営という形式を用いる予定であったが、後に李登輝基金会はこの形式を凍結した。 

二、2011年、李登輝基金会は李登輝総統図書館の設立推進を継続することを決定した。その目的を、台湾が独裁体制から脱して民主国家となった重要な過程を保存、展示することで、参観者に過去の歴史から学び、未来を創造するための場を提供すると同時に、民主教育の基地とすることとした。 

蛇足ながら、李登輝総統図書館建設の意義は決して個人崇拝の場所を提供することではないことを付記する。

李登輝総統図書館建設の予定地として、淡水が李登輝元総統の故郷であることから、2013年1月、促進民間参与公共建設法に則り、李登輝基金会から新北市政府に対し、BOT方式建設計画を提出した。

建設計画では、公共の利益に供するため、李登輝総統図書館を淡海新市鎮公七に建設を希望する旨が盛り込まれた。

三、2013年3月、李登輝総統図書館建設計画が報道されると、各界からは楽観的な見方が寄せられた。しかしながら、本BOT案に関し、台湾社会では争議が発生し、本来は社会大衆に向けた文教施設に対する有益な投資案であったものが、政治的な利益を追究しているという誤解が生み出される結果となってしまった。

これではもはや、公共のために供するという当初の目的は達成できず、市民の福利厚生の一環として公共建設に対する民間の参加を促した新北市政府に対しても不公平である。

そのため、李登輝基金会は本日、臨時董事会を開催し、李登輝総統図書館建設につき、「BOT方式」で推進することを中止することと決議した。

李登輝基金会は今後、「BOT方式」ではない形式で李登輝総統図書館の建設計画を進めることとする。

四、これまでBOT方式での建設を推し進めてきた間、新北市の関係機関および数々のご助力を賜った関係各位に心より感謝する次第である。

並びに、台湾における初めての民選総統図書館が淡水に建設されることを支持していただいた皆さまに深くお詫び申し上げる次第である。

以上、李登輝総統図書館の建設に対し、ご協力いただいた皆様に説明申し上げます。

 財団法人李登輝基金会