本会メールマガジン等でもお伝えしたように、大江康弘・参議院議員(無所属)は8月9日、西岡武夫・参議院議長に「戸籍における台湾出身者の国籍表記に関する質問主意書」を提出した。

8月15日、質問主意書の全文(PDF版)が参議院のホームページに掲載され、全容が判明した。事実関係を的確に押さえた、実に堂々たる主意書だ。しかも慎重な質問で、法務省民事局長通達が根拠となっているかどうかを確認しつつ、政府に対して現状認識の正確性を問い、在留カード化措置の事例を引き合いに政府の対応を問うている。ここに全文をご紹介したい。菅直人総理からの「答弁書」は、規定どおりだとすれば8月19日の予定だ。

質問主意書の原文はこちら


質問第二五六号  戸籍における台湾出身者の国籍表記に関する質問主書

現在、台湾人女性が日本人男性の妻となる場合、台湾出身者が日本に帰化する場合、又は台湾出身者が日本人の養子となる場合など、台湾出身者の身分に変動があった場合、戸籍における国籍や出生地は「中国」あるいは「中国台湾省」と表記される。

戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」と表記しているのは、実に今をさかのぼること四十七年も前の昭和三十九年六月十九日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっていると思われる。

昭和三十九年といえば、東海道新幹線が開業し、東京オリンピックが開催された年で、日本が中華民国と国交を結んでいた時代である。しかしその後、日本は中華民国と断交して中国(中華人民共和国)と国交を結ぶなど、日本と台湾・中国との関係は大きく変わっている。

このような中、東京都は平成二十年五月、住民基本台帳の表記について昭和六十二年の通知が現状に即さず、正確ではないとの判断ら、台湾からの転入・台湾への転出の際には「台湾」の表記を認めるという通知を出している。また、平成二十一年七月の法改正による外国人登録証明書の在留カード化措置において、台湾出身者の「国籍・地域」表記は「中国」から「台湾」に改められることになる。

現実的にも、中国が台湾を統治したことは一度もない。また、日本政府は観光客に対するノービザや運転免許証について台湾とは相互承認を行い、中国とは行っていないなど、明確に台湾と中国とを区別している。さらに、台湾では天皇誕生日祝賀会が開催されたり叙勲を復活させたりするなど、中国とは状況が異なっている事例には事欠かない。

従って、五十年前とは様変わりしている事情や現実を踏まえ、戸籍における台湾出身者の国籍表記を早急に改めるべき状況にあると認識している。

そこで、以下のとおり質問する。

一  戸籍において、台湾出身者の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記するのは、昭和三十九年六月十九日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっていると思われるが、それで相違ないか。もし違うというのであれば、根拠となっている法律や通達などを明らかにされたい。

二  戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」と表記することは、現状に即し正確だと認識しているか、政府の認識を明らかにされたい。

三  在留カード化措置において、これまでの外国人登録証明証書では「国籍」欄であったのを「国籍・地域」欄と改め、台湾出身者の「国籍・地域」表記は「中国」から「台湾」に改められることになる。この事例に鑑み、戸籍における台湾出身者の国籍表記に関しては今後どのように対応するのか、政府の方針を示されたい。

右質問する。