gunmagaku地方の時代が叫ばれるとともに、90年代に地域学とか地元学といわれる分野が急速に発展した。本書は前橋に生を享けた著者が高校教師時代の1995年に「群馬学」を提唱して以来、2007年に至るまでの実践報告記である。

本書を読んで驚いた。台湾の奇美実業創業者の許文龍氏はこれまで台湾の発展に貢献した7人の日本人(後藤新平、八田與一、羽鳥又男、浜野弥四郎、新井耕吉郎、鳥居信平、松木幹一郎)の胸像を制作しているが、なんとこの中に群馬県出身者が2人もいるのである。1人は最後の日本人台南市長を務め、台南の文化遺産を守り抜いて台南の人々から尊敬される羽鳥又男(はとり・またお)、もう1人は「台湾紅茶の父」と慕われる新井耕吉郎(あらい・こうきちろう)だ。

本書の第6章ではこの2人をはじめ、台湾の風土病撲滅に多大な功績を残し台湾ツツガムシ病を発見した医学博士の羽鳥重郎、台湾いろはかるたをつくった須田清基、基隆に台湾最初の「基隆夜学校」や私立図書館「石坂文庫」を創設して「基隆の聖人」とか「台湾図書館の父」と呼ばれる石坂荘作も取り上げている。

なお、群馬といえば領台当初、土匪に虐殺された六士先生の一人、中島長吉も群馬県出身だ。もちろん、中島長吉の事績も取り上げている。本会の小田村四郎会長の曽祖父が吉田松陰の義弟で群馬県令(知事)を務めた楫取素彦で、亡くなった六士先生の一人がその次男の道明だ。道明は小田村会長の祖父に当たる。息子を喪った楫取県令が、同じく息子を喪った中島家を訪れて漢詩を贈って両親を慰めたというエピソードも紹介している。

文化運動としての「群馬学」を提唱し、そのグランドデザインを模索する中で群馬と台湾との深い縁(えにし)を紹介している貴重な報告記である本書は、日台関係者にもぜひ目を通していただきたい一書だ。

※目次
序章・群馬学とは/第1章・「群馬学」の提唱/第2章・教育改革と「群馬学入門」/第3章・群馬県歌7曲と長野県歌「信濃の国」/第4章・上州人とは─群馬学確立に向けて/第5章・「代に知られざる德人」の発掘/第6章・日本人最後の台南市長・羽鳥又男/終章・郷土教育・郷土学 付/平成版・上州いろはかるた(カラー)

※手島仁氏プロフィール
[てしま・ひとし]前橋市生まれ。前橋高校を経て立命館大学文学部卒業後、群馬県内の中央高校、群馬県史編纂室、桐生西高校、吉井高校に勤務。その後、群馬県立群馬歴史博物館に専門員と勤務し現在に至る。主な著書に『総選挙でみる群馬の近代史』『中島知久平と国政研究会』(上・下)など。論文多数。

■著者:手島 仁
■書名:『群馬学とは』
■版元:朝日印刷工業
■体裁:A5判、並製、280頁
■発行:2010年6月8日
■頒価:1,800円(税込)
■取扱い:群馬県立歴史博物館ミュージアムショップ


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