3月18日の毎日新聞5面の片隅に、岡田克也外相が17日に外務省で王毅・中国国務院台湾事務弁公室主任と会談したという小さな記事が掲載された。ところが、王毅発言を伝える中で「日中共同声明」について「台湾は中国領土の一部とする72年の」とカッコで補足していた。

しかし、「日中共同声明」で日本は、中国政府が台湾は中国領土とする主張を承認していない。それは、「日中共同声明」の第3項を見れば一目瞭然のことだ。第3項には「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府はこの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し」とある。日本はけっして中国政府の主張を承認したのではなく「理解し、尊重」するという立場だ。日本は台湾が中国領であるとは認めていないのである。

ところが、毎日新聞の表記だと、「日中共同声明」で「台湾は中国領土の一部」とする了解事項が成立したようにしか読めず、これは明白な誤記だ。

そこで同日午前、この旨を読者室に電話で伝えて訂正を要求し、重ねて「お問い合わせフォーム」からも同じ訂正要求を送った。電話口に出た担当者は、この記事を執筆した担当部署に伝えるという返答だったので、毎日新聞社としての返答を聞きたいので明日(3月19日)同じ時間に連絡することを伝えて電話を切った。

そして本日(19日)、読者室に連絡を入れると、驚いたことに「すでに訂正記事を掲載しました」との返答。急いで紙面を確認すると、5面の社説のすぐ右下、首相の動静を伝える「首相日々」に続く左に、記事が誤っていたことを記した訂正記事が掲載されていた。

また、本日(19日)、毎日新聞の読者室からは「訂正記事」を引用して、下記のような返答をいただいた。

≪毎日新聞ご愛顧ありがとうございます。本日19日朝刊5面で、柚原様ご指摘の18日記事の訂正を、次の通りさせていただきました。

訂正 18日朝刊「外相、台湾政策『堅持』」の記事で、「(台湾は中国領土の一部とする72年の)日中共同声明の堅持」とあるのは、「(中国が、台湾が中国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明。日本は中国の立場を十分理解し、尊重するとした72年の)日中共同声明の堅持」の誤りでした。

読者に誤解を与える記述を深くお詫び申し上げます。今後より一層、歴史認識などに留意していく所存です。また、今回、柚原様のご指摘で、紙面の訂正をすることができました。感謝申し上げます。今後ともよろしくお願い申し上げます。≫

当方の要求を受け入れ、早々に訂正記事を掲載した毎日新聞の対応に感銘するとともに、読者室の誠実な対応にも深く感銘した。あのNHKとは天地雲泥の対応だ。インターネットの記事を確認したところ、すでに昨日の夕方に訂正されていた。


本会ではこれまで台湾正名運動として外登証問題に取り組み、昨年、この問題は改正入管法の成立によって解決した。そこで今年は、台湾正名運動の継続発展の活動として、台湾を中国領土とする表記や、日本が中国に台湾を返還したとするあらゆる表記を「もぐら叩き」のごとく訂正する活動を展開してゆく予定だ。

今年に入って、台湾を中国領と表記していたカシオ電子辞書問題では提供元の日立システムアンドサービスが訂正を約束し、やはり同様の表記をしていた『世界大百科事典』を発行する平凡社も次の増刷で訂正すると約束している。それに続く毎日新聞の訂正だ。【本会事務局長 柚原正敬】

今後、皆様にご協力いただきながらこのような誤記を一掃すべく、誤記例をご存じの方は本会事務局までご連絡をお願いします。