日本のメディアは台湾の立法委員選挙結果をどうとらえたか(2008年1月12日・台湾立法院選挙)

本会メールマガジン『日台共栄』編集長 柚原正敬

日本政府はマスコミの論調につられて台湾の国民投票に口出しすべきではない 台湾の立法委員選挙は中国国民党の圧勝に終った。報道によれば、総統候補の馬英九氏は13日、蒋経国元総統の遺体仮安置所を訪れ「小政党や中間層の声にも耳を傾ける。多数を誤って用いたり、乱用したりはしない」と述べ、巨大政党化への懸念の払拭に努めたという。

一方の民進党は13日、総統候補の謝長廷氏が高雄の決起集会で「本日から、すべての選挙や政策、路線の100%について、私が責任を負う」と述べ、陳水扁総統に代わって党の陣頭指揮を執る考えを表明したという。

この台湾の立法委員選挙結果を受け、日本のメディアは朝日新聞を除いて一斉に社説を掲載して選挙結果を分析した。すべての社説が、この立法委員選挙を総統選挙の「前哨戦」と位置付け、ほとんどのメディアが住民投票(国民投票・公民投票)について取り上げた。

読売と東京が結果分析の要点として「政党支持率に近い比例代表の今回得票率は、国民党約51%、民進党約37%と、議席数ほどの大差はない」「小選挙区制は得票率よりも議席の差が開く」と鋭く指摘している。

一方、台湾の国連加盟の是非を問う住民投票については、産経を除く全メディアが取り上げているが、「台湾海峡で不測の事態を招かないためにも、中台双方は相手を挑発するような言動は厳に慎むべきだ」(日経)や「日本は独自の立場から、台湾海峡の緊張を高めないよう中国に自制を求めると同時に、台湾にもさまざまなルートで働き掛けるべきだ」(東京)のように、台湾と中国に自制を求めるものがほとんどだ。

あるいは、アメリカやフランスが住民投票反対を表明したことで、「米台関係の悪化を心配する有権者の不安は国民党の追い風だった」と位置づけ、「福田康夫首相は昨年暮れの訪中で、『台湾独立は支持しない』と発言した。中国は日本に『反対する』と言わせたかったようだが、外圧の必要はない。台湾では民主主義が機能しているからである」と、中国などが「外圧」をかけなくても、台湾の民主主義を楯に住民投票は成立しないと暗に書いた毎日のような例もある。

だが、この毎日の社説は自ら「外圧の必要はない」と書きながら、まるで外圧の意味を理解していない。外圧とは「外部から働く力」であり「外部からの強い干渉」に他ならず、反対語が内圧である。

つまり、毎日の社説は、台湾が中国から「外圧」を受ける、すなわち台湾が中国の一部ではないことを認めていることになる。にもかかわらず、米国からの「外部からの強い干渉」に他ならない反対表明に対しては「米台関係の悪化を心配する有権者の不安は国民党の追い風だった」と容認する姿勢を示している。

反対であれ賛成であれ、台湾の住民投票へ介入することは台湾の主権を侵しかねない内政干渉である。すでに台湾政府は、「国民投票は、正当な民主的手続きをもって国際社会に対し台湾の主流の民意を示すものであり、統一か独立かを問うものではなく、海峡両岸の現状を変更するものでもない」(2007年12月28日発表の台湾外交部声明)と述べている。

従って「日本は独自の立場から、台湾海峡の緊張を高めないよう中国に自制を求める」(東京)だけでよく、「台湾にもさまざまなルートで働き掛けるべきだ」(東京)とか「地域の安定を損なわないよう働きかけるべきだ」(読売)などは、いらぬお節介なのであり、それこそ「外圧」なのである。

このようなマスコミの論調につられて福田首相が再び住民投票に反対(不支持)する姿勢を示せば、逆に台湾住民は対日不信を強め、「日台関係にも悪影響を及ぼす。台湾海峡の緊張を高める結果にもつながりかねない」(12月26日付「産経新聞」主張)のである。

ましてや、日台「関係の悪化を心配する有権者の不安は国民党の追い風」となり、日本が一方の政党を暗に支持する結果になってしまうのである。

日本は、2004年の総統選挙のときに行われた住民投票に対して、アメリカに追従するように「申し入れ」を行って中国国民党に有利な状況を作り、台湾国内に大きな混乱をもたらした。その失策を踏襲しないために「外圧」となるような発言は厳に慎むべきなのである(下記に、産経、読売、毎日、日経、東京、中国の社説を掲載・紙面掲載日は中国新聞を除いて全て1月14日付、中国新聞は15日付。)。


【産経新聞・主張】台湾立法委選 与党は解党的出直し必要

12日の台湾立法委員(国会議員、定数113)選挙で、最大野党の中国国民党が全議席の3分の2を超える81議席を獲得し、圧勝した。台湾生まれの与党、民主進歩党(民進党)は27議席にとどまる歴史的な惨敗を喫した。 与党の敗因として政権の腐敗や経済不振、対外関係の悪化などが指摘される。これを機に民進党には解党的出直しを求めたい。国民党は3月22日の総統選挙で8年ぶりの政権奪還を実現するための有利な足場を築いたが、民進党の奮起なしには台湾民主政治の健全な発展は望みがたいからである。

今回の選挙では定数を従来の225から半分に減らし、小選挙区比例代表制を導入した。議会の簡素化、効率化と二大政党を柱とした民主政治の高度化を図る狙いがあった。

国民党は持ち前の資金力と組織力を活用して新選挙を有利に戦った。メディアを通じて陳水扁政権の腐敗や台湾経済の低迷、中国や米国との関係悪化などを選挙民に強く印象づけた。

民進党は陳総統を中心に、人口の8割強を占める本省人(日本統治時代から台湾に住む住民とその子弟)の台湾人意識に訴える従来の作戦を繰り返した。台湾名義での国連加盟の是非を問う住民投票を総統選と合わせて実施するなどの戦術がそれだが、選挙民の目は覚めていた。

陳水扁総統が大敗の責任をとり、党主席を辞任する意向を表明したのは当然だ。小選挙区制では選挙の勝敗が極端に分かれる傾向が強いが、国民党の議席は総統罷免案を単独で可決できる3分の2(76)を上回り、住民投票を経て憲法を改正できる4分の3(85)にも近づく大勝ぶりだ。

国民党が総統選にも勝てば、蒋介石・蒋経国の両政権時代を連想させる強大な権力を握ることになる。民進党の総統候補、謝長廷・元行政院長は陳総統の急進的な台湾独立路線とは異なり、穏健独立派で経済再生、就業など住民の身近な問題への関心が強い。

これまで陳総統の陰に隠れていたが、総統選や党の抜本的再建に存分に指導力を発揮してもらいたい。中国との関係改善や将来の中台統一を視野に入れる国民党の総統候補、馬英九・前台北市長との間で、台湾の将来をめぐる中身のある選挙戦を望みたい。


【読売新聞・社説】台湾野党大勝 中台関係にどう影響するのか

2期8年の陳水扁政権に対する予想を超える厳しい審判である。台湾の前途と中台関係を軸とする東アジア情勢にどんな影響を及ぼすのか。 地域の安全保障や経済関係にも連動するだけに、日本は今後の展開を注視する必要がある。

3月の台湾総統選の前哨戦となった立法院(国会)選挙で、最大野党・国民党が定数(113議席)の3分の2を上回る81議席を獲得し、圧勝した。与党・民進党は、勝敗ラインとした45議席を大幅に割り込む27議席に終わった。

台湾の国政レベル選挙は、対中融和を掲げる国民党に対し、独立志向の強い民進党が「台湾人意識」の高まりを基盤に勢力拡大を図る構図が続いてきた。

今回、国民党は、対決姿勢に終始して手詰まり状態の対中政策を批判するだけでなく、陳水扁総統周辺の腐敗や経済失政を攻撃し、現政権への不満を地滑り的大勝に結びつけた。

第2野党・親民党など野党勢力と共闘態勢を築いた。持ち前の組織力がフル回転したことも奏功した。

民進党は、陳総統自ら陣頭指揮し「国民党が絶対多数をとれば、中国との統一が唯一の選択肢になる」と訴えたものの、有権者の反応は鈍かった。

国民党は、8年ぶりの政権奪還に王手をかけた。だが、国民党幹部自身が戸惑うほど大勝したとはいえ、それがそのまま総統選につながるのか。それが総統選の焦点となってきた。

台湾では選挙のたびに勝敗が入れ替わる「振り子現象」が続いてきた。政党支持率に近い比例代表の今回得票率は、国民党約51%、民進党約37%と、議席数ほどの大差はない。

民進党は、総統選候補の謝長廷・元行政院長(首相)を中心に、党員、支持者の危機感をバネに、態勢をどこまで立て直せるかがカギとなる。ただ、謝候補が「逆転勝利」で政権を維持しても、巨大野党の前に政権運営は不安定になる。

3分の2以上の議席を握った国民党は総統罷免案を発議できる。無所属議員などを取り込めば4分の3を超え憲法改正も可能だ。馬英九・前党主席が総統選を制すれば、国民党独裁時代をほうふつとさせる巨大与党の政権が誕生する。

総統選と同時に、陳総統が推進してきた「台湾名での国連加盟」の是非を問う住民投票も行われる。中国は「独立への一歩」と警戒を強め、米仏も反対するなど国際的な関心事となりつつある。

「現状変更につながるなら支持できない」とする日本としても、地域の安定を損なわないよう働きかけるべきだ。


【毎日新聞・社説】台湾総選挙 陳総統の実績に厳しい審判

台湾の立法院(国会に相当)総選挙は、野党・国民党が圧勝、陳水扁総統の与党・民進党は惨敗した。 国民党の議席は定数の3分の2を超えた。陳総統の罷免案を出せる数を与えられたことになる。

3月には陳総統の任期満了に伴い、総統選挙が行われる。台湾独立を掲げる民進党は謝長廷・元行政院長、国民党は大衆的な人気が高い馬英九・前党主席が出馬する。

今回の選挙で馬陣営に弾みがついた。総統選で民進党から国民党へ政権交代する可能性が高くなった。民進党が勝ったとしても、これほど議席が減っては安定した政権運営は難しい。

中国は、独立反対の国民党が勢いを増したことを歓迎しているだろう。ただし忘れてならないのは、台湾の有権者は政権を選ぶ権利があり、その結果として議席の増減や政権交代が起きるということである。中国共産党は台湾の民主政治に学ぶべきである。

今回、有権者の最大の関心はなにか。陳水扁政権2期8年の停滞感から抜け出したいという変化への期待だったとすれば、総統選のテーマでもある。

陳総統は就任以来、台湾独立の理念を前面に立て、中台の緊張を高めた。中国への投資や技術移転も厳しく制限した。

しかし経済で結果を出せず、台湾の株価は陳政権発足当時の水準を下回ったままだ。民進党支持派の台湾資本も陳政権と距離を置くようになった。

米国も変わった。ブッシュ政権は、北朝鮮に核廃棄を迫るために中国の協力が必要で、「台湾の独立に反対」と明言している。

3月の総統選では、同時に「台湾名義で国連に加盟申請するかどうか」を問う住民投票が行われる。中国は「事実上の独立投票になる」と反発している。米国も住民投票断念を求めている。米台関係の悪化を心配する有権者の不安は国民党の追い風だった。

民進党の友党だった李登輝前総統派の台湾団結連盟が、今回は陳政権と距離を置いた。それでも一議席も獲得できなかったのは象徴的だった。

立法院選でも、国民党資産などをテーマに住民投票が実施された。棄権が半数を超えると不成立になるが、国民党が棄権を呼びかけ、不成立に終わった。

3月の国連加盟住民投票の前哨戦だと見れば、中国が心配するまでもない。台湾への軍事的威嚇などは逆効果になるだろう。

民進党にとっても、住民投票の狙いが中国と摩擦を起こすことなら票は逃げるという教訓になるだろう。

福田康夫首相は昨年暮れの訪中で、「台湾独立は支持しない」と発言した。中国は日本に「反対する」と言わせたかったようだが、外圧の必要はない。台湾では民主主義が機能しているからである。


【日本経済新聞・社説】台湾、総統選へ波乱呼ぶ国民党圧勝

中国で8月に北京五輪が開催される今年、台湾では3月に総統選挙が実施される。その前哨戦となった12日の台湾立法院(国会)選挙で、最大野党である国民党が圧勝し、与党の民進党は大敗を喫した。総統選候補の馬英九・前国民党主席に追い風となろう。だが総統選に向け、中台関係は波乱要因を抱えたままだ。中台双方の冷静な対応を望む。

今回の選挙は3月22日投票の総統選を控え、台湾独立色の強い民進党と、対中融和姿勢をとる国民党の2大政党が総力戦を演じた。民進党主席を兼ねる陳水扁総統が陣頭指揮に立ち、同党総統選候補の謝長廷・元行政院長が全土を回れば、国民党の馬氏も精力的に遊説した。

立法院選は今回から小選挙区比例代表並立制を初めて導入した。定数を従来の225から113(小選挙区73、比例区34、先住民区6)とほぼ半減し、任期も3年から総統と同じ4年に延長した。

2期8年にわたり台湾独立路線を走った民進党政権の信任が問われた今回の選挙で、国民党は経済重視を掲げた。国民党は定数の3分の2を超す81議席を獲得、総統罷免を単独で提案できるようになった。

陳総統は「台湾人意識」を訴える戦術をとったが惨敗し、党主席を辞任した。民進党が27議席にとどまったのは、経済運営への不満などが有権者にあったからではないか。

選挙結果は中台関係も左右する。陳総統はかつて憲法の抜本改正で台湾の政治体制や対中関係を変えようとし、前回の立法院選(2004年12月)の結果、「現状維持」にとどまった経緯がある。今回の立法院選の民意も中台関係については現状維持を選択したといえるだろう。

民進党は3月の総統選と同時に「台湾名義での国連加盟」の住民投票を予定している。今回の敗北を受け、総統選での巻き返しを狙って住民投票を強行する公算が大きい。

中国は住民投票に強く反発、米国やフランスも台湾海峡の緊張を高めかねないと反対している。これに対し陳総統側は実施しても中国が北京五輪前に武力行使するようなことにはならないと踏んでいるらしい。

日本政府は一貫して中台関係の平和的解決を主張、「いずれかの側によるいかなる一方的な現状変更の試みも支持できない」との立場だ。福田康夫首相も住民投票が「一方的な現状変更につながっていくのであれば支持できない」と述べている。

台湾海峡で不測の事態を招かないためにも、中台双方は相手を挑発するような言動は厳に慎むべきだ。


【東京新聞・社説】台湾立法委選 政策を競う時代が来た

台湾の議会に当たる立法院選挙は野党・国民党が圧勝した。選挙で示されたのは、中国との統一か独立かという選択よりも台湾海峡の緊張を避け、より清潔で信頼できる政治を望む民意ではないか。

今回は三月の総統選挙の前哨戦で、中選挙区から小選挙区比例代表並立制に移行して初の選挙だった。

定数も二二五から一一三にほぼ半減する激戦となった。これまでも野党が多数を占めていたが、国民党は三分の二を超える八十一議席を獲得。与党・民主進歩党は二十七議席の惨敗に終わった。

中国との統一を志向する国民党は民進党政権の八年間に政治腐敗が進み、経済が不振に陥ったと攻撃した。一方、独立を志向する民進党は国民党こそ政治腐敗の元凶で、同党が勝てば統一に突き進むと反撃した。

結果から見れば、台湾経済が4-5%台の成長を維持しながらも、貧富の差が拡大した経済政策への批判票が国民党に集まった。また、民進党の陳水扁総統の夫人や同党幹部らが交際費の横領罪で起訴されるなどの疑惑に対する批判が噴き出した。

ただ、この選挙結果が中国との統一を望む民意を示したとは言えない。各種世論調査では中台関係の現状維持を望む声が大半を占め、選挙前に、国民党の馬英九総統候補は政権を獲得しても、統一に進まず現状を変えないと約束しているからだ。

一方、民進党の謝長廷総統候補も「台湾は既に独立している」として独立宣言はせず、現状を維持すると明言している。このため、立法委員選の先頭に立った陳総統が「独立か、統一か」が争点と強調したにもかかわらず実は、この問題は選択の基準でなくなっていると言ってよい。

むしろ台湾海峡の緊張を緩和し中国の経済力をも取り込みながら、経済と民生を向上させる政策を競い合うことが両党に求められている。

立法委選の勝利で国民党は総統選でも有利になった。しかし、小選挙区制は得票率よりも議席の差が開くうえ、選挙民のバランス感覚も働くので総統選は予断を許さない。

陳総統は今後、総統選と同時に行う台湾名義での国連加盟の是非を問う住民投票問題などで、中国と対決姿勢を強めるだろう。中国の強硬姿勢を引き出せば、台湾で反発が強まり、選挙で有利になることを熟知しているためだ。

日本は台湾とは歴史的にも深いつながりがある。米国は住民投票に露骨に反対し台湾の反発を買っている。日本は独自の立場から、台湾海峡の緊張を高めないよう中国に自制を求めると同時に、台湾にもさまざまなルートで働き掛けるべきだ。


【中国新聞・社説】台湾野党の圧勝 求められた生活の安定

台湾の人々は「自立化路線」より「経済振興」を求めたようだ。国会にあたる立法院の選挙では、経済の立て直しを強く打ち出した最大野党の国民党が、中国からの独立を志向する与党の民主進歩党(民進党)に圧勝した。

立法院選は三月の総統選の前哨戦である。敗北を受けて民進党には、対中経済交流を積極的に進める路線へ転換する動きもある。同党が総統選と同時に実施を計画している「台湾名での国連加盟」を求める住民投票はどうなるのか。中台関係は東アジアの安定にもかかわるだけに目が離せない。

今回から定数が百十三と半減した。国民党が八十一議席を獲得、与党の民進党は二十七議席にとどまった。国民党の議席は三分の二を上回り、総統の罷免案採択が可能だ。無所属などを加えれば四分の三を超え、憲法改正さえ視野に入る。政権に大きな影響力を発揮できる巨大勢力の出現である。

陳水扁総統は二〇〇〇年、台湾のアイデンティティーをアピールして政権に就き、台湾語や台湾史教育を充実させた。一方で蒋介石と経国父子の遺体仮安置所を閉鎖し、国内の対立をあおると反発も招いた。

今回の選挙も従来の路線を踏襲した。「国民党が多数を取れば(中台)統一に向かう」と危機感をあおった。

一方の国民党は対中投資の規制緩和をはじめ、景気浮揚や国民生活の向上などの経済政策を掲げた。失業者や自殺者の増加、貧富の差の広がりを、民進党の「失政」として追及した。

有権者は、まずは日々の暮らしの安定や繁栄につながる施策を求めたといえる。経済界では、中台間の「三通」(通信、通商、通航の直接開放)を求める声も強かったようだ。

独立につながる動きには敏感に反応することの多い中国だが、今回は冷静だった。国民党の優位が事前に伝わっていたからだろう。

昨年末の韓国大統領選でも、経済成長を重視する最大野党ハンナラ党が勝利した。有権者がイデオロギーより、生活の安定や豊かさを重視するようになった点では似た面もありそうだ。

福田康夫首相は昨年末の日中首脳会談で、国連加盟の住民投票に不支持を明言したものの、中国側が求める「反対」の表現には踏み込まなかった。双方と友好関係を保ちながら東アジア安定への道を探るのも、一つの在り方だろう。