「一つの中国政策」に絡め取られている日本政府の実態が浮き彫りに

20060616-07去る3月20日と6月8日、鈴木宗男衆院議員が台湾問題に関する「質問主意書」を政府に提出し、政府は3月28日と6月16日にそれぞれ「答弁書」を衆院議長に提出していたことが判明した。いずれも台湾問題のポイントとなる項目のひとつであるので、ここに紹介してみたい。

まず、3月の「質問主意書」で鈴木議員は、日中共同声明からなぜ「台湾独立を支持しない」という政府見解が導かれるのかの論理連関について質し、その立場を明示した直近の事例があるかを質している。
しかし、政府は「台湾独立も支持しないという原則に基づいている」という町村外相発言を引用するだけで、政府見解が導かれる論理連関を明示したとは言い難い。

また、6月の「質問主意書」では、中国が台湾を実効支配しているかについて質し、さらに、台湾に住む日本国民の保護を中国が行うことができるかと重ねて質している。

しかし、政府の答弁は「日中共同声明にあるとおりである」とのみあり、まさに木で鼻をくくるとはこのことであろう。

昨年、地図帳問題で笠浩史衆院議員がやはり「質問主意書」で政府見解を質したが、媚中政策にすぎない「一つの中国政策」に絡め取られている日本政府の実態が、これらの答弁書から改めて浮き彫りにされたと言ってよい。

あるいは、中国とは別個に台湾でも天皇誕生日レセプションが実施され、中国とは区別してノービザが実施されるなど、日本の政府機関は台湾を「統治の実態」として認識しているにもかかわらず、政府見解は硬直したままであると言ってもよいだろう。

中国へのODA大盤振る舞いの弱腰外交とは裏腹に、台湾への傲慢とも言える外交姿勢が日本の国益を損ねてきた事実を、今こそ直視すべきなのである。


質問
平成十八年三月九日提出
質問第一三七号

「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」という見解を表明した在中国大使館公使の著書に関する質問主意書

提出者 鈴木宗男

一 井出敬二在中華人民共和国大使館公使が二〇〇五年十二月十二日の奥付で日本僑報社から出版した「中国のマスコミとの付き合い方-現役外交官第一線からの報告-」の七十八頁に「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」との記載があることについて、当該記述が日本政府の公式の立場を反映したものかとの質問に対して、政府は答弁書(内閣衆質一六四第五九号、以下、「答弁書」という。)において、「台湾に関しては、昭和四十七年の日中共同声明第三項に基づく立場をとっている。」と答弁したが、政府は日中共同声明第三項から「日本政府は台湾独立を支持しない」という帰結を導き出しているのか。明確な答弁を求める。

二 「答弁書」において、「中国のマスコミとの付き合い方-現役外交官第一線からの報告-」の出版に際しては、外務省が井出公使に対して意見を伝達した事実が明らかになっている。「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」との記述について、外務省は井出公使に意見を伝えたか。伝えたとすればどのような意見か。

右質問する。


答弁
平成十八年三月十七日受領
答弁第一三七号

内閣衆質一六四第一三七号
平成十八年三月十七日

内閣総理大臣 小泉純一郎

衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員鈴木宗男君提出「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」という見解を表明した在中国大使館公使の著書に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員鈴木宗男君提出「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」という見解を表明した在中国大使館公使の著書に関する質問に対する答弁書

一について

御指摘の「帰結」は、昭和四十七年の日中共同声明第三項に基づく立場である。

二について

外務省としては、御指摘の記述については、井出在中華人民共和国日本国大使館公使に対して意見を伝えていない。


質問
平成十八年三月二十日提出
質問第一六八号

「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」という見解を表明した在中国大使館公使の著書に関する再質問主意書

提出者 鈴木宗男

標記案件については、平成十八年三月九日に質問主意書を提出し、内閣から同年同月十七日に答弁書を受領した(以下、「前回答弁書」という。)。その結果を踏まえ、追加質問する。

一 「前回答弁書」において、井出敬二在中華人民共和国大使館公使が二〇〇五年十二月十二日の奥付で日本僑報社から出版した「中国のマスコミとの付き合い方-現役外交官第一線からの報告-」の七十八頁に「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」との記載があることについて、外務省は、昭和四十七年の日中共同声明第三項に基づく立場から、「日本政府は台湾独立を支持しない」との帰結を導き出せるとの趣旨の答弁をした。日中共同声明第三項においては、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」と述べているに過ぎず、ここから何故、「日本政府は台湾独立を支持しない」との帰結が導かれるかについての論理連関を明確にされたい。

二 昭和四十七年の日中共同声明は法的拘束力を有するか。

三 過去に日本政府が公式の会見や声明で「日本政府は台湾独立を支持しない」との立場を明示的に表明したことがあるか。あるならば、直近の事例を明らかにされたい。

右質問する。


答弁
平成十八年三月二十八日受領
答弁第一六八号

内閣衆質一六四第一六八号
平成十八年三月二十八日

内閣総理大臣 小泉純一郎

衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員鈴木宗男君提出「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」という見解を表明した在中国大使館公使の著書に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員鈴木宗男君提出「日本政府は台湾独立を支持しないと私はもう一度述べたい」という見解を表明した在中国大使館公使の著書に関する再質問に対する答弁書

一及び三について

御指摘の「帰結」は、昭和四十七年の日中共同声明第三項、同項で言及されており我が国が受諾しているポツダム宣言第八項等を踏まえて、政府がとっている立場である。また、このような立場を表明した最近の事例としては、例えば、平成十七年三月二十五日の衆議院安全保障委員会における町村外務大臣の答弁がある。

二について

昭和四十七年の日中共同声明は、法的拘束力を有するものではない。


質問

平成十八年六月八日提出
質問第三一八号
台湾の実効支配に関する質問主意書

提出者 鈴木宗男
一 中華人民共和国が台湾を実効支配していると政府は認識しているか。
二 台湾の領域に所在する日本国民の保護を中華人民共和国が行うことができると政府は認識しているか。
三 台湾海峡で武力紛争が発生した場合、それは中華人民共和国の国内紛争と政府は考えるか。

右質問する。


答弁
平成十八年六月十六日受領
答弁第三一八号

内閣衆質一六四第三一八号
平成十八年六月十六日

内閣総理大臣 小泉純一郎

衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員鈴木宗男君提出台湾の実効支配に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員鈴木宗男君提出台湾の実効支配に関する質問に対する答弁書

一及び二について

台湾に関する我が国政府の立場は、昭和四十七年の日中共同声明にあるとおりである。

三について

台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促すということが我が国の立場であり、御指摘のような仮定に基づくお尋ねにお答えすることは差し控えたい。