李登輝氏、ワシントン訪問 台湾の民主主義強調

平成 17(2005)年 10 月 19 日[水]

【ワシントン=古森義久】台湾の李登輝前総統は十七日、米国の首都ワシントンを総統に選出された一九八八年以来、初めて訪れ、米国の民主主義への共感などを訴えた。李氏は二十日まで首都に滞在し、米側の議員や研究者、財界人などと幅広く交流することを予定している。

米国アラスカ州選出のマカウスキー上院議員らの招待で私人として訪米した李登輝前総統はアラスカからニューヨークに入り、十七日午前にニューヨークを車でたち、フィラデルフィアで独立記念堂や「自由の鐘」など米国民主主義の発祥の記念物を見学した。その後、ワシントンに着き、首都では国立公文書館で寄贈をして民主主義をたたえるあいさつを行い、独立宣言を起草した米国第三代ジェファソン大統領の記念堂も訪れた。

李前総統の訪米の目的は「米国の議会や学界、実業界、台湾系米人などの古い知人と会い、友好を再確認すること」とされているが、同時に台湾の民主主義の確立を強調して、共産党独裁の中国との対照を米側に広くアピールすることが狙いだとみられる。このため見学の地も米国の民主主義と歴史にゆかりがある場所が選ばれた。

米国政府はこれまで中国政府が猛反対する李氏の来訪に難色をみせることも往々あったが、今回は国務省が正式に入国査証を認め、「あくまで私人として」と強調したうえで、かなり長期間の受け入れとなった。

李氏は十八日には大手研究機関のヘリテージ財団を訪れ、民主主義の促進への表彰を受けるとともに、台湾の民主主義の広がりについての演説をする。会合には上下両院議員らも招かれている。二十日には首都のナショナル・プレスクラブでスピーチをすることになっている。

中国当局はこれまでも李氏を「台湾独立を推進する分裂主義者」と非難し、米国政府にもその訪問を受け入れないことを求めてきた。しかしブッシュ政権では台湾の一市民となった李氏に対し、人道主義の観点からも米国への入国を自由に認める方向となった。

李氏は十七日午後、ジェファソン記念堂を訪れた際、一部記者の質問に答え、小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「一国の政府の長が戦争で死んだ自国民の霊に弔意をささげるのは当然であり、他国から命令を受ける必要はない」と述べ、参拝を支持した。