中国統一派の中国時報は一面トップで報告書の内容を報じた

米国国防総省は、「国防権限法」の規定により、毎年議会への報告が義務付けられている「2017年版 中国の軍事力に関する年次報告書(Annual Report to Congress Military and Security Development involving the People’s of Republic China 2017)」を6日に発表した。

報告書では「両岸の現状を変更することに反対する」と言及されていることを取り上げ、台湾における中国統一派メディアが一面で報じている。しかしながら、これらの記述はこれまでの米国の立場を繰り返し表明しているだけであり、いわば毎年恒例の枕詞とも言えるもので、何ら目新しいものはない。

また、「蔡英文政権は『92年コンセンサス』や『一つの中国』を受け入れるべきと、中国側は強調している」と指摘しているものの、それに対して米国は何ら立場を表明していない。

あたかも米国が、民進党政権を支持していないようなメディア操作が行われているのは明らかであり、中国統一派の報道姿勢には注意が必要だ。

なお、「2017年版 中国の軍事力に関する年次報告書(Annual Report to Congress Military and Security Development involving the People’s of Republic China 2017)」は国防総省のサイトですでに公開されている。


米国防総省:台湾の自己防衛に協力

【台湾国際放送:2017年6月7日】

アメリカの国防総省は6日に発表した「中国の軍事力に関する年次報告書(2017年版)」で、台湾と中国大陸の両岸関係について、いかなる一方的な現状の変更にも反対する、と述べた。また、アメリカは台湾関係法に基づき、台湾が十分に自己防衛できるだけの防御性の物品とサービスを提供すると指摘した。

この報告書は、「蔡英文氏が昨年、総統選挙に勝利した後、両岸関係は硬直化している。中国大陸側は、台湾がいわゆる『92年コンセンサス』、つまり中国大陸と台湾がいずれも『1つの中国』に属していることを受け入れるべきである。ただし、それぞれが各自で『1つの中国』の内容を述べることができる。そうすることで初めて、台湾海峡の平和と安定が維持できる、と強調している」と指摘した。

その上で、「アメリカは両岸のいかなる一方が、台湾海峡の現状を変更することにも反対する。アメリカは、アメリカと中国大陸の間の3つのコミュニケ、および台湾関係法に基づく『1つの中国』政策を維持する。また、アメリカは台湾関係法に基づき、台湾が十分に自己防衛できるだけの防御性の物品とサービスを提供し、台湾海峡の平和、安全、安定に寄与する」とのアメリカの立場を繰り返した。

また、この報告書は、「中国大陸の人民解放軍の組織改革と近代化が急速に進んでおり、これは習近平・主席が協調する『中国の夢』の実現に関係している」と指摘している。さらに、中国大陸が公式に発表した数字に基づき、「2007年から2016年までに、中国大陸の国防預算は每年平均8.5%のスピードで増加しており、すでに中国大陸の国防予算は台湾の14倍近くに達している。台湾は中国大陸の軍事費が増加を続けていることを認識し、現在、イノベーションと非対称戦争の能力を国防計画に入れており、それによって成長を続ける中国大陸の軍事能力に対抗しようとしている」と指摘した。

そして、「人民解放軍は多様な水陸軍事演習を完成させているが、依然として台湾に全面的に侵攻するには不十分だ。しかし、人民解放軍は日常の演習のほか、台湾が南シナ海で実効支配している島、例えば東沙諸島や太平島への侵攻を準備する演習を行っている。また、防衛能力が比較的に良好な金門と馬祖を対象に、水陸の上陸演習を進めている。これは、人民解放軍の能力の範囲内にあり、解放軍の能力と中国大陸の領土防衛に対する政治的決意を示すものとなっている」と述べた。

その上でこの報告書は、「この種の演習は、重大な政治的なリスクを暗示するものだが、台湾独立の感情を刺激し、また国際社会の反発を引き起こすことになる」と指摘した。