一昨年(2020年)1月16日、鳥取県内を走る若桜(わかさ)鉄道の若桜(わかさ)駅と、新竹県内を走る台湾鉄路管理局の内湾線の内湾駅が「姉妹駅協定」を締結したことを本誌でもお伝えしました。

若桜町(矢部康樹町長)によれば、その後も内湾駅の所在地である横山郷(張志弘郷長)と交流を続け、2021年12月21日に「友好交流協定」を締結するに至ったそうです(現在の若桜町長は上川元張氏)。

「姉妹駅協定」など鉄道提携から「友好交流協定」などの都市間提携に発展するケースは多くはありませんが、例えば、JR四国の松山駅と台湾鉄道の松山駅が「姉妹駅」を締結(2013年10月13日)した翌2014年10月に、松山市と台北市が「友好交流協定」を結んだケースがあります。それをきっかけに、愛媛県も2016年5月に台北市と「国際交流促進覚書」を結んでいます。

それにしても、なぜ若桜駅と内湾駅が「姉妹駅協定」を締結したのかいささか不思議ですが、そこには台湾と定期便を飛ばし、観光客を増やしたいという日本側の切実な事情があります。

台湾との定期便化は自治体の悲願と言ってもよく、静岡県や仙台市、愛媛県、熊本県、秋田県、岩手県などもこれまで台湾の自治体と都市間提携を結ぶことで定期便化を実現してきました。鳥取県も同じです。そのため2018年11月に台中市と「友好交流協定」を締結しています。

鳥取県と台湾を結ぶチャーター便は、2018年9月から12月にかけ、3つの航空会社が37往復運航し、平均搭乗率が87.9%と高く、県は将来の定期便化実現をめざしていました。こうしたなかで、若桜町はチャーター便の利用者を呼び込もうと、若桜鉄道の若桜駅の提携先として内湾駅が「若桜駅と内湾駅はともに山あいの終着駅であること、転車台があること、観光に力を入れており町並みがノスタルジックであることなど多数の共通点があること」(若桜町HP)を見出して姉妹駅提携をめざして取り組み、2020年1月に晴れて内湾駅と姉妹駅協定を締結するに至りました。

観光交流をさらに深めていくためには、都市間提携を結ぶのが最善の方法です。そこで若桜町は内湾駅のある横山郷が「大自然や田園風景、歴史的な町並、文化遺産など共通しており、それらを礎として相互理解と友情を深め、両地域の友好関係を発展」させられないかと考え、これまで取り組んできたそうです。

若桜町は「今後は行政をはじめとした、経済・産業、観光、文化芸術・スポーツ、青少年・学校・教育、議会など、幅広い分野と人による多様な交流と連携を通じて、両地域のさらなる繁栄と発展の推進に努めたい」と、台湾との交流に意気込みを述べています。

いずれの自治体も並々ならぬ努力で台湾との都市間提携にこぎつけています。コロナ禍の中ではなかなか意思をはかることも難しかったのではないかと思いますが、若桜町もようやく「友好交流協定」を結ぶことができ、心からお祝い申し上げます。

ちなみに、本会の調査によりますと、鳥取県若桜町と新竹県横山郷の「友好交流協定」締結は、昨年9月10日の京都市と高雄市の「高雄協定」に次ぎ、1979年10月の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の「姉妹町」提携から103件目となります。

なお、本会調査には、例えば、静岡県と台北県、高雄市、高雄県、嘉義市による「青少年の相互交流推進に関する協定」締結(2009年3月14日)や山口県美祢市と南投県水里郷の「友好交流の促進に関する確認書」締結(2013年4月5日)のように、単一テーマの交流を目的にした提携や、姉妹都市や友好都市を結ぶ前段階の確認書を締結した事例などは含まれていないことを申し添えます。