1月6日、駐日台湾大使館に相当する台北駐日経済文化代表処(謝長廷代表)は2020年の日本人の台湾に対する意識調査結果を発表した。この「台湾に対する意識調査」は東日本大震災直後の2011年5月に初めて行われ、2016年以降は毎年行われていて、今回で6回目となる。調査対象は日本全国の20歳~89歳の1,000人で、これは2011年以降変わっていない。

今回の調査結果ではQ1の「次にあげたアジアの国・地域の中で、あなたがもっとも親しみを感じるのはどこですか」には、台湾:49.2%、韓国:17.1%、シンガポール:13.1%、タイ:10.5%、中国:2.9%で、過去4年間の調査と同じく、日本人が「もっとも親しみを感じる」アジアの国・地域は台湾となっている。同じ質問に対するこの5年間の調査結果は下記のとおりだ。

・2016年 台湾:59.1%、韓国:11.4%、中国:3.2%、タイ:2.6%、シンガポール:1.8%
・2017年 台湾:51.7%、韓国:12.8%、タイ:5.4%、中国:3.1%、シンガポール:2.5%
・2018年 台湾:64.7%、韓国:17.5%、中国:4.5%、タイ:1.9%、シンガポール:1.1%
・2019年 台湾:55.0%、タイ:15.9%、韓国:14.2%、シンガポール:13.1%、中国:4.5%
・2020年 台湾:49.2%、韓国:17.1%、シンガポール:13.1%、タイ:10.5%、中国:2.9%

では、国と国との関係ではやはり信頼関係がもっとも重要だが、国交のない台湾であってもそれは同じなので、その調査結果を見てみたい。これもまた5年間の調査結果を2011年の調査結果と合わせてご紹介したい。台湾を「非常に信頼している」「多少は信頼している」を足したパーセンテージを「信頼している」とし、台湾を「あまり信頼していない」と「全く信頼していない」を足したパーセントを「信頼していない」として示した(合計が100%とならないケースは無回答のため)。

・2011年 信頼している:84% 信頼していない:16%
・2016年 信頼している:55.9% 信頼していない:6.4% どちらとも言えない:37.5%
・2017年 信頼している:57.9% 信頼していない:3.1% どちらとも言えない:38.8%
・2018年 信頼している:60.4% 信頼していない:3.6% どちらとも言えない:36.0%
・2019年 信頼している:63.1% 信頼していない:2.9% どちらとも言えない:34.0%
・2020年 信頼している:67.6% 信頼していない:1.6% どちらとも言えない:30.5%

編集子としては「もっとも親しみを感じるのはどこですか」という質問よりも「台湾を信頼できるか」という質問の方がより重要ではないかと考えている。親しみを感じるのも交流を支える感覚や感情としてはもちろん重要だと思われるが、真の国際関係は信頼関係を築けるかどうかがポイントのように思われるからだ。

その点で、「台湾を信頼できるか」という質問への回答が2016年以降は下がることなく上昇していることに注目したい。2016年と比べ2020年は11.7ポイントも上がっている。

一方、「もっとも親しみを感じる」は、2020年は49.2%と2016年の59.1%より9.9ポイント下がっている。これは、日本人がアジアの中でもシンガポールやタイなどに親しみを感じる傾向が強くなってきていることを示しており、国・地域の選択で親しみを感じるというのは相対的な感覚や感情であることを表しているせいかと思われる。

だから、台湾だけに的を絞って「台湾に親しみを感じるか」という質問には、「親しみを感じる」が40.4%、「どちらかというと親しみを感じる」が37.2%で合わせて77.6%にのぼり、2016年の同じ質問への66.5%より11.1ポイントも上昇し、「台湾を信頼できるか」という質問とほとんど同じ比率で上がっている。

やはり、日本人の台湾への思いをより的確に表すのは「台湾を信頼できるか」や「台湾に親しみを感じるか」という質問ではないかと思われ、それが年を追うごとに高まっていることを素直に喜びたい。

ちなみに、2011年は初めての調査だったため「あなたは台湾を知っていますか」や「あなたは台湾の場所を知っていますか」という質問からはじまっていたが、2016年以降は「もっとも親しみを感じるのはどこですか」からはじまっている。2011年の東日本大震災に台湾から253億円もの義援金や50万トンにも及ぶ支援物資が届けられたことで、多くの日本人が台湾への認識を深めたことや、2016年には台湾から約417万人が日本を訪れ、日本からも約190万人、あわせて600万人もの往来があることから、「もっとも親しみを感じるのはどこですか」からの質問になったようだ。

下記に「台湾週報」の記事をご紹介したい。


日本人の台湾に対する意識調査結果 2020年

【台北駐日経済文化代表処「台湾週報」:2020年1月6日】

台北駐日経済文化代表処は日本の「一般社団法人中央調査社」に委託し、2020年11月14日~同26日、日本人の台湾に対する意識調査を行った。その結果、7割以上の人が台湾に親しみを感じ、台日関係は良好であると答え、6割以上の人が台湾は信頼できると答えた。全体的には、2020年の意識調査の結果は過去4年間の調査結果の傾向を引き継いでおり、日本人の多くが台湾に対し良好な印象を持ち、現在の台日関係の発展を評価するものとなった。昨年の新型コロナウイルス感染情況の中で、台湾が効果的に感染拡大を封じ込めていることに対し、3割以上の人が印象に残ったと回答した。

調査結果によると、49.2%がアジア地域の中で、最も親しみを感じるのは「台湾」と答えた。台湾に親しみを感じるかとの質問には、77.6%が台湾に「親しみを感じる」と答え、その理由は「台湾人が親切、友好的」が最も多く、次いで「歴史的に交流が長い」、「日本語を話せる台湾人が多いから」と続いた。

台湾に対する信頼については、67.6%が台湾は「信頼できる」と答えた。その理由は、「日本に友好的だから」が最も多く、次いで「自由・民主主義などの価値観を有している」だった。

現在の台湾と日本との関係をどう思うかについては、73.6%が「良好」と答え、台日関係の将来についても63.7%が「発展する」と答えた。

台日間で最も懸念される問題については、「台湾海峡情勢(台湾と中国との関係)による日本への影響」の37.5%が最も多く、次いで、「漁業問題」の9.9%、「領土問題」の9.6%と続いた。その一方で22.9%が「ない」と答えた。

台湾に対する印象については、「日本に友好的」が76.2%で最も多く、次いで「食べ物がおいしい」が50.5%、「新型コロナウイルスの感染拡大を効果的に封じ込めている」が35.8%だった。台湾の新型コロナウイルス感染症対策で印象に残ったことは、「感染者数と死亡者数が少ない」が56.7%、「感染症に関する情報公開の徹底」が29.1%、「台湾の感染症対策の中心となっている中央流行感染症指揮センター」が27.9%と続いた。

新型コロナウイルス感染症を含め、台湾あるいは日本で自然災害や重大な事故が発生した際の相互支援および双方の政府トップによるフェイスブックやツイッターなどでの災害お見舞いメッセージ発信については、54.7%が「知っていた」あるいは「聞いたことがある程度」と答えた。

今後台湾に行きたいかの質問には、49.9%の人が「行きたい」と答えた。その中で、台湾のどのような分野に興味があるかについては、「食文化」が最も多く、次いで「自然・風土」、「歴史・史跡・寺廟」と続いた。また、台湾に行ったことがある人の中で、台湾に行った後の台湾に対する印象については、66.8%が「良くなった」と答えた。

今後台日間で特に力を入れて行うべき交流については、「観光」の61.5%が最も多く、「経済」の56.7%、「政治、安全保障」の39.5%と続いた。

台日青少年交流で推進していくべきものとして、「芸術・文化」が51.8%で最も多く、次いで「留学生派遣」が42.5%だった。

同調査は日本全国の20~89歳を対象に実施し、標本数は1,000人。調査方法は、20~79歳の人に2020年11月14日~同17日にインターネットで調査し、80~89歳の人には2020年11月14日~同26日に電話で調査した。