秋田県横手市といえば「かまくら」や「横手やきそば」で全国的に知られ、作家の石川達三やタレントの壇蜜などの出身地としても知られているかもしれません。

実は台湾とも縁が深く、5年前の2015年6月1日、高橋大(たかはし・だい)市長は台湾との観光や物産振興、教育文化の振興などを図ろうと台湾の大同大学と横手市の地元企業「株式会社デジタル・ウント・メア」との3者で「国際的産学官連携覚書」を交わしました。

これまで、大同大学の学生のインターンシップを受け入れ、市内企業連携による情報発信のための中国語サイトの運営やホームウテイ・インターンシップ等の活用を通じ、横手への観光誘客をはかってきたそうです。

2016年12月には、台北市内のアート・イベント施設「華山1914文化創意産業園区」で開かれた観光PRイベント「日本東北遊楽日だいすきとうほく」で、「かまくら」を披露する「出前かまくらin台湾」を実施したこともあるそうです。

12月とは言え暖かい台湾でどうやって「かまくら」をつくったのかと言いますと、人工降雪機を使ったそうです。職員4人が4基のかまくらを作り「雪国よこて」をPRしたとのことで、「3日間で11万5000人ほどの来場者があり、かまくらも行列が絶えないほど好評だった」そうです。

横手市によれば、「国際的産学官連携覚書」は5年の有効期限だそうで、今年が協定継続のための調印式を行わなければならない年です。しかし、武漢肺炎の影響で日台間を行き来することができません。そのため「オンラインでの協定式を行い交流の輪を広げる」ことになったそうです。

オンライン協定式は5月20日、高橋市長、デジタル・ウント・メアの岩根えり子社長、大同大学の何明果学長の3者で行われました。その模様を横手市が下記のYouTubeで公開しています。この動画を見ますと覚書ではなく「国際的産学官連携協定」となっていますから、正式な協定に格上げされたようです。

◆横手市:台湾大同大学とオンラインで交流

秋田県と台湾との関係は、これまで北秋田郡の上小阿仁村(かみこあにむら)が屏東県萬巒郷(ばんらんごう)と1991年10月に姉妹都市を結び、その10年後の2001年7月に仙北郡の美郷町(みさとちょう)が花蓮県瑞穂郷(みずほごう)と「友好町郷提携に関する協定書」を締結するなど、こじんまりと関係を続けてきたという印象です。

しかし、佐竹敬久(さたけ・のりひさ)氏が知事に就任してからは、知事自ら台湾へトップセールスに出向くなどかなり積極的に仕掛けています。2016年8月には県として初めて高雄市と国際交流協力覚書を締結しています。横手市が大同大学と「国際的産学官連携覚書」を結んだのも、佐竹知事に高橋市長が同行したことがきっかけだそうです。

また、台湾との提携は、これまでは主に姉妹都市や姉妹校、鉄道や大学間の提携が目立っていましたが、2018年ころからは企業や自治体が産学連携するケースも出てきました。

2018年には、JR四国と高雄の高苑科技大学(3月)、東京電力パワーグリッドと国立成功大学(6月)、静岡県のグラウンドワーク三島と国立雲林科技大(10月)、藤枝市と遠達国際企業(10月)、青森県と台日商務交流協進会、台北市進出口商業同業公会(12月)などです。

2019年には、CyberZと世新大学(2月)、高千穂の旅館「神仙」と静宜大学(4月)、富山県立山町と新竹市の中華大学観光学院(6月)、東京都市大学と資訊工業策進会(10月)、東京大学と台湾積体電路製造(11月)などがありました。

その点で、横手市はすでに5年前に「国際的産学官連携協定」を結んでいますので、先駆者、魁(さきがけ)です。今般の武漢肺炎さなかに、オンラインでも協定を締結させようとした高橋市長、デジタル・ウント・メアの岩根えり子社長、大同大学の何明果学長の英断に敬意を表するとともに、その前途に幸あれと心から祝意を表します。