Facebookに掲載された沼田幹夫代表の声明

台湾は、9月16日のソロモン諸島との断交に続き、20日に同じく南太平洋にあるキリバス共和国と断交した。

キリバス1980年に中華人民共和国と国交を結んでいたが、台湾は陳水扁総統のときの2003年11月7日にキリバスと国交を樹立。しかし、蔡英文政権が発足する直前の2016年3月にキリバスでも政権が交代し、中華人民共和国はこのころよりキリバスとの接触を再開したため台湾との関係が冷え込んでいったという。

台湾政府によれば「中国政府は近年、同国に設置した中国資本の漁業会社を通し、あるいはその他の商業投資を行うなどの口実を使い、キリバスに人員を常駐させ、キリバス政界への影響力を拡大させていた」という。

断交の直接のきっかけは、キリバス側からの民間航空機購入の資金援助だった。台湾側が贈与ではなく優遇貸付を提案すると、キリバスはこれを拒否。この間「中国政府はキリバスに対して、いくつかの民間航空機やクルーザーを寄贈することを約束し、キリバスに中国と国交を結ぶよう迫った」ことで、今回の断交に至ったという。

日本台湾交流協会台北事務所の沼田幹夫代表はソロモン諸島との断交に続いて、キリバスとの断交についても中国語と日本語でフェイスブックに「これまで以上に強い関心を持って注視しています」と表明している。

これで、台湾と国交を結ぶ太平洋の国交国は、マーシャル諸島共和国、ナウル共和国、パラオ共和国、ツバルの4カ国となった。また、蔡英文政権が発足して以来、断交国は下記の7ヵ国で、国交締結国は15ヵ国。

1)2016年12月21日:サントメ・プリシンペ民主共和国
2)2017年6月13日:パナマ共和国
3)2018年4月30日:ドミニカ共和国
4)2018年5月24日:ブルキナファソ
5)2018年8月21日:エルサルバドル共和国
6)2019年9月16日:ソロモン諸島
7)2019年9月20日:キリバス共和国

はてさて、中華民国は国交を結ぶ15ヵ国すべてと国交が断絶した場合はどうなるのだろう。他国と国交を有しない国を国と呼べるのだろうか。

そのときは「台湾」や「台湾共和国」などと国名を変更し、憲法も新たに制定し、米国や日本が国家承認することにより、台湾は新たな国家として生きてゆくことになるのだろうか。国名を変更すれば、中国が「亡命政権」や「核心的利益」と呼ぶ理由がなくなり、一国二制度を押し付けられることもなくなるのではないか。

米国が1979年1月1日にさかのぼって発効するよう定めた「台湾関係法」は、その冒頭に「中華民国として合衆国により承認されていた台湾の統治当局と合衆国との政府関係を停止したことに伴い」定めたとあり、同法で定める対象は、台湾や台湾の人々であって、中華民国ではない。米国がこの法律で「防御的な性格の兵器を供給する」するのは「台湾」だ。米国は1979年から法的に台湾を承認している。


中華民国、キリバス共和国と国交断絶

【Taiwan Today:2019年9月20日】

中華民国外交部(日本の外務省に相当)の呉釗燮部長(大臣)は20日、太平洋に位置するキリバス共和国との国交断絶を発表した。以下は外交部のニュースリリース。

キリバス共和国は20日、中華民国(台湾)との国交断絶を正式に通知してきた。キリバスが、中華民国政府の長年にわたる多方面での協力と友情を顧みず、この決断に至ったことを、わが国は大変遺憾に思うと共に、強く譴責する。

中華民国政府はこれをもって、キリバス共和国との外交関係の停止を宣言する。あらゆる二国間協力プロジェクトを全面停止し、キリバス共和国に置く中華民国大使館、技術団、台湾衛生中心(Taiwan Health Center)を直ちに撤退させる。わが国は同時に、キリバスが台湾に設置する在外公館職員に対しても、台湾からの撤退を求める。

キリバスのタネティ・マアマウ大統領と与党の一部の国会議員らは以前から、中国に対してある種の幻想を抱いていた。マアマウ大統領は2016年の大統領就任以来、中国と頻繁に交流していた。中国政府は近年、同国に設置した中国資本の漁業会社を通し、あるいはその他の商業投資を行うなどの口実を使い、キリバスに人員を常駐させ、キリバス政界への影響力を拡大させていた。マアマウ大統領は最近、わが国に対して高額の援助を願い出た。それは民間航空機を購入するという理由だった。キリバスの発展と、人民の助けになる民生建設については喜んで協力するが、営利目的の商用民間機を贈与することは、わが国の「国際合作発展法」の立法精神に合致しない。このため中華民国政府は、わが国の財政能力を考慮した上で、キリバスに対して優遇貸付という方法で協力したいと申し出た。しかし、キリバスはこれに応じなかった。わが国が把握している情報によると、中国政府はキリバスに対して、いくつかの民間航空機やクルーザーを寄贈することを約束し、キリバスに中国と国交を結ぶよう迫ったという。

中国政府は断続的に、わが国の国交樹立国に対してわが国との国交断絶を働きかけている。その主な目的とするところは、台湾の国際空間に圧力を加え、台湾の動きを制限することにある。そして台湾住民に「一国二制度」を受け入れるよう迫り、中国が台湾の国際社会における宗主国であることを認めさせ。最終的には台湾の主権を完全に消滅させようとしている。

しかし、大多数の台湾の住民がすでに明確に表明しているように、我々は断固として「一国二制度」を受け入れない。中華民国政府はますます、国家主権を守る立場をゆるぎないものにするだけである。我々は、中国政府の外交攻勢を受けても、国家主権を守るという立場において、少しも譲歩することはない。中華民国政府は繰り返し強調する。中国がいくら我々の国際空間に圧力を加えても、台湾が存在するという事実を変えることはできない。台湾の住民がこだわる民主主義と自由を追求するという生活スタイルに脅威を与えることもできない。中華民国政府は、他の国交樹立国との関係を維持できるよう努力すると同時に、台湾に友好的な民主国家との関係をより強め、且つより有意義且つ貢献ある方法で、国際社会においてより多くの友人の支持を獲得していきたいと考えている。

我々は再度強調したい。中華民国(台湾)は民主的な主権独立国家である。台湾の住民は、自身の国家元首と国会議員を自由に選択することで、その主権と地位を高めている。台湾は中華人民共和国の1つの省ではなない。中華人民共和国政府は一度たりとも台湾を統治したことはない。これは客観的事実であり、中国の台湾に対する圧力によって変わるものでもない。そればかりか、中国政府が国際社会において台湾に圧力を加えることは、ただ台湾住民の主権に対する意思を強めるだけであって、台湾住民が中国政府に対して頭を下げることは絶対にない。

中国政府は、こうした外交上での事件によって、台湾の国内世論を動かし、わが国の総統選挙や立法委員(=国会議員)選挙に影響を与え、そしてわが国の民主的な秩序を破壊しようとしており、その意図は極めて明確だ。中国政府のこうした手法について、我々はすべての民主国家が一丸となって厳しく非難することを願う。そして、中国の権威主義的な政府が目指すものが、民主体制を壊滅させ、権威主義を徐々に拡大することにあることを知ってもらいたい。台湾は民主国家の最前線にある。我々は強い意思を持ち、この民主主義の防衛線を守り、我々の民主体制を維持したい。中国が我々の選挙結果を操作したり、中国が台湾住民の前途を決定したりするようなことがあってはならないと考えている。