日本と台湾の姉妹都市や友好都市など、自治体同士の都市間提携は、2011年3月の東日本大震災をきっかけに飛躍的に増えている。翌2012年12月に発足した安倍政権が安定政権であり、親台湾路線を選択していることも要因と考えられる。

本会の調査によれば、日台の都市間提携は1979年10月の青森県大間町と雲林県虎尾鎮が「姉妹町」を締結して以来、本年5月31日に香川県琴平町と新北市瑞芳区の「友好交流協定」締結で76件となる。

民主党政権だった2009年9月から自民党の安倍政権に交替する2012年12月までの3年間で、日台間の都市間提携は6件しかない。ところが、安倍政権下では2013年に7件、2014年に8件、2015年に6件、2016年に14件、2017年に15件と、5年間で実に50件も締結している。その急増ぶりは目を見張るばかりだ。

都市間提携は日台交流の深化を示すバロメーターとなりうると見て、本会ではこれまでできるだけ紹介してきた。ところが、日台の都市間提携は自治体などによる継続的な交流の上に締結されることが多いことから、派手さや新鮮味に欠けるせいかニュースとして取り上げにくいようで、地元紙でさえ取り上げないことがある。

ニュースとして報じられなければ気がつかない。もちろん、地元紙で報じられていてもインターネットに全て掲載されるとも限らない。

実は、そういうケースが昨年と今年で2件ずつ計4件あったことが判明した。この4件で、日台の都市間提携は80件となる。ここに出水市と埔里鎮の提携について伝え、別途、3件をお伝えしたい。

出水市と埔里鎮の提携について知ったきっかけは、鹿児島県出水(いずみ)市に台湾との友好の象徴としてドラゴンランタンが寄贈されたという10月13日付の地元紙「南日本新聞」の200字に満たない小さな記事だった。

そこに「出水市と姉妹盟約を結ぶ台湾・埔里(プーリー)市のある南投県が9月、友好の象徴として40フィートコンテナ2本に分けて寄贈」とあり、出水市と埔里鎮が「姉妹盟約」を結んでいたことを知って驚いた。

出水市と南投県の埔里鎮が姉妹都市提携を検討していることは、南日本新聞が報じていたので本会もお伝えしていたが、姉妹都市を締結したことは知らなかった。南日本新聞で報じたのかもしれないが、ネット検索には引っかからなかった。

なんとこの締結を報じていたのは、福岡にある台北駐福岡経済文化弁事処の2017年6月19日発行のプレスリリースだった。

そこでは「台湾駐福岡弁事処の2年に渡る推進により、鹿児島県出水市と南投県埔里鎮が本年度(2017年)5月31日、正式に姉妹都市として締結した。締結式典は、埔里鎮で行われ、出水市渋谷俊彦市長と埔里鎮長周義雄鎮長は、双方の市民の代表として、締結の契約した。外交部中部弁事処の宋子正処長も出席し、締結の立会いをした」とあり、昨年5月31日に姉妹都市を締結したことが報じられていた。

◆台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処:2017年6月19日Press Releases 鹿児島県出水市と南投県埔里鎮が姉妹都市締結

しかし、この姉妹都市締結の名称について、南日本新聞では「姉妹盟約」と報じ、福岡弁事処は単に姉妹都市としている。正式な名称が気になった。

そこで、出水市のホームページに当たってみると、2017年6月9日付で「台湾南投縣埔里鎮との姉妹都市盟約締結(平成29年5月31日)」という記事が掲載されていた。本文は短く「平成29年5月30日(火)〜6月1日(木)に、これまで相互に交流を進めてきました台湾の埔里鎮(プーリーチン)を教育長、議長及び市議会の日台友好議員連盟の方々等と訪問し、姉妹都市盟約を締結(5月31日)しました」とあるだけだが、出水市の渋谷俊彦(しぶや・としひこ)市長と埔里鎮の周義雄・鎮長による調印式の写真5枚を掲載していた。

提携名称を「姉妹都市盟約」と記していて、この都市間提携の正式な名称が「姉妹都市盟約」であったことも判明した。

◆出水市HP:台湾南投縣埔里鎮との姉妹都市盟約締結(平成29年5月31日)

ちなみに、九州7県(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県)では2017年5月の時点で福岡、熊本、大分の3県が台湾の自治体と都市間提携を結んでいて、鹿児島県はこの出水市が初めてだ。宮崎県は桃園市と2017年10月に桃園市と友好交流協定を結んでいて、残るは佐賀県と長崎県となっている。

出水市は2018年4月から、渋谷前市長と同じく出水市出身の椎木伸一(しいのき・しんいち)市長に替わっているが、埔里鎮は「台湾のへそ」とも言われ、台湾の真ん中に位置し「台湾地理中心碑」も建立されている人口8万人ほどの町で、水が良いことから美味しい紹興酒を産していることでも知られる。「姉妹都市盟約」では、経済・貿易・観光・文化・体育・衛生保健・教育等の各面で協力していくことを謳っているそうで、出水市に飛来する鶴と同じように、末永い交流を期待したい。