【蔡焜燦さんを偲ぶ会】最後まで日本と台湾を愛した「愛日家」

【産経新聞ウェブ版:2017年10月8日】

台湾の「日本語世代」を代表する存在で7月17日に90歳で亡くなった実業家の蔡焜燦(さいこんさん)氏を「偲ぶ会」が8日、都内のホテルで開かれた。蔡氏と親交のあった日台の関係者170人超が出席。生前の姿を振り返りつつ、自ら「愛日家」を名乗った蔡氏との別れを惜しんだ。

偲ぶ会は、産経新聞社や日本李登輝友の会などの後援で開催。作家の門田隆将氏や阿川佐和子氏、杏林大名誉教授の田久保忠衛氏、産経新聞社の熊坂隆光会長らが出席し、蔡氏との思い出を披露した。

日本李登輝友の会の渡辺利夫会長は「日本統治時代に育まれた『日本精神(リップンチェンシン)』を実現した大いなる人物」と強調。蔡氏の三男で日本国籍を持つ清水旭氏(60)は「最後まで日本と台湾を愛した偉大な父だった」と述べ、会場から大きな拍手を送られた。

台湾の李登輝元総統から送られた弔辞も披露された。李氏は「蔡先生が日本の皆さんへ必ずといっていいほど呼びかけたのが『日本人よ、胸を張りなさい』だった。日本が自信を持ち、台湾とともにアジアを引っ張っていくことを強く望んだ心の叫びとも言えるだろう」と指摘し、蔡氏が日台関係において果たした功績をたたえた。

最後に蔡氏への感謝を込め、参列者が「仰げば尊し」を斉唱して故人をしのんだ。

蔡氏の偲ぶ会は、9月23日に台湾でも開かれていた。


<蔡焜燦さん>偲ぶ会で李元総統の弔辞代読 日台関係に風穴

【毎日新聞ウェッブ版:2017年10月8日】

日本と台湾の交流に尽力し、今年7月17日に90歳で死去した台湾人実業家の蔡焜燦(さい・こんさん)さんを追悼する「蔡焜燦先生を偲(しの)ぶ会」が8日、東京都新宿区のホテルで開かれた。日台交流の民間団体などによる同会実行委員会が主催し、約200人が出席した。

蔡氏は、作家の司馬遼太郎氏の著書「街道をゆく 台湾紀行」の取材で案内役を務め、作品に「老台北(ラオタイペイ)」として登場する。

日本統治下の1927年に台湾中部・台中市に生まれ、旧日本軍に志願し、日本で終戦を迎えた。戦後は台湾に戻り、体育教師などを経て電子機器会社を設立した。台湾の李登輝元総統と親交が深く、日本語教育を受けた「日本語世代」の代表的人物の一人。日台交流の深化に尽力し、短歌愛好会「台湾歌壇」の代表も務めた。

出席者たちは白色の菊の花を献花した後、全員で黙とうをささげた。李元総統から寄せられた弔辞が代読され、その中で李元総統は、蔡氏が司馬氏の案内人を務めたことなどに触れ「(蔡氏は)日台関係に風穴を開ける大きな功績を残された方の一人。台湾の文化から風土、宗教、台湾人の気質にいたるまで、台湾に関するありとあらゆる知識を司馬先生に授けた」とたたえた。蔡氏の三男で日本国籍を取得した清水旭さん(60)があいさつし、「最後まで日本と台湾を愛した偉大な父でした」と語った。【鈴木玲子】