中国語版の表紙

今年は台湾の2・28事件から70年を迎えた節目の年。それに先立ち、ノンフィクション作家の門田隆将(かどた・りゅうしょう)氏は昨年12月、新著『汝、ふたつの故国に殉ず ―台湾で「英雄」となったある日本人の物語』を日台同時出版した。日本はKADOKAWAから出版し、台湾では『湯徳章 不該被遺忘的正義與勇氣』と題して玉山社出版から出版されている。

去る1月6日、本書の主人公である湯徳章弁護士が生まれ育ち、終焉の地ともなった台南市において新刊発表会が行われ、頼清徳市長も出席する中、2・28事件研究の第一人者である李筱峰・台北教育大学台湾文化研究所教授が記念講演を行った。台南市政府はただちにその模様を関係写真とともに「市政新聞」で伝えている。

台南市政府ホームページには日本語版もあり、この記事が1月16日の「台南ニュース」に掲載された。下記にその全文を紹介したい。

ちなみに、台南市政府は「二二八和平紀念日」として祝日となっている来る2月28日、午前9時から市内の湯徳章紀念公園において2・28事件70周年を記念する追思会を催し、日本から門田隆将氏も参列する予定だ。


二二八事件七十周年《湯徳章 忘れられてはいけない正義と勇気》出版

【台南市政府HP(日本語版):2017年1月16日「台南ニュース」】

《湯徳章 忘れられてはいけない正義と勇気》の新書発表会が本日(6日)台南市政大書店にて開催されました。頼清徳市長も発表会に参加し感想を述べ、多くの市民も参加しました。

頼市長は挨拶で「湯徳章の物語が本日市場に出たのは非常に得がたいことだ。第一に彼が逝去してから70年経ち、同時に二二八事件の七十周年にも当たる。台南市は台湾最初に出来た都市であり、民主主義を一番重視している都市である。我々は二二八事件七十周年が持つ意味を考えなければならない。本日二つ目に大きな意義あることは李筱峰教授による講演である。李教授の文章は歴史を用いて台湾の進むべき方向を示している。これは本当に凄い事だ。三つ目はこの本の名前になっている『正義と勇気』である。「忘れられてはいけない正義と勇気」この本はちょうど湯弁護士の記念日に出版された。我々は彼が示した精神を大切にするべきである。」と述べました。

日本の著名フリージャーナリストである門田隆将氏は、多くの時間を費やし二二八事件中、台南での受難者である湯徳章弁護士の波乱万丈の人生を書き記しました。

《湯徳章 忘れられてはいけない正義と勇気》は湯徳章弁護士について書いた第一冊目の書籍であり、タバニー事件中死亡した日本国籍の父親を持つ台湾と日本のハーフである湯徳章が、如何にして数々の困難を克服し日本統治時代の台湾国籍を持つ警部補になったのか、また如何にして正義を堅持する為に人々が羨む職位を捨て、遠い日本の中央大学で苦学し、台南市の弁護士になったのかという歴史を描いています。

戦後、湯徳章弁護士は台南において台南市南区区長、また台南市参議会参議院等の職を務めています。二二八事件発生後は二二八事件処理委員会台南分会治安組組長の任も受けています。その後、台南市市長候補三名のうちの一人にも選ばれるなど、名声を顕しています。

しかしながら、湯徳章が持つ日本の血統と個人的名声が原因で、当時台湾省行政長官であった陳儀によるある種報復的な仕打ちを受け、軍隊が台南市へ進入した後、彼は真っ先に逮捕されてしまいました。

連日の拷問にも関わらず、湯徳章は治安工作員の名簿を提出することを拒否し、多くの青年、未来ある若者を守り通し、最後には民政緑園(現在の湯?章記念公園)で銃殺され40歳の若さで逝去しました。

本書は二二八事件七十周年前夜という時を選んで出版されました。これは社会大衆に対し湯徳章弁護士の重要さ、彼の権力を畏れない信念を理解してもらいたいという意味を持っています。本日、湯徳章のご子息も出席し、会場に参列した皆さんへ彼の父親へ対する情愛を感謝しました。また台南は必ず団結しなければならない、台湾は更に団結しなければならないと強調しました。

日本人が台湾の歴史に関心を持ってくれていることに頼市長は感謝の意を表しました。「この本は特別に日本と同時発売されるために、日本の方も読むことが出来る。是非皆さんにこの本を読んでもらい、台湾と日本の関係が更に深いものになってもらいたい。台南は文化を重視する文化首都である。台南に来れば台湾を知ることが出来る、この考えを台南市民にも賛同してもらい、光栄に思ってもらいたい。そして台湾全土に賛同してもらいたい」と頼市長は強調しました。

台南市では今年一連の記念イベントが行われます。台南市政府が主催するイベントの他にも台南市各界が合同で主催するイベント等があり、そのイベントを通じて二二八が台湾と台南にとってどれほど重要であったかを伝えていきます。