1964年、東京オリンピック開会式で入場する台湾チーム。プラカードには「TAIWAN 中華民國」との記載がある。旗手を務めるのは現在自由時報の発行人を務める呉阿明氏。

8月17日、陳水扁総統時代に国防部長(国防大臣に相当)をつとめた蔡明憲氏が理事長の台湾連合国協進会は民進党に対し、蔡英文総統は台湾名義で国連加盟を求める書簡を国連事務総長に送るよう陳情したところ、民進党の李俊毅・副秘書長は「中華民国名義での国連加盟はすでに不可能であり、台湾名義での国連加盟を支持する。民間団体と協力し、台湾の主権が国際社会に認められるようにしたい」と語ったという。

ちなみに、陳水扁氏が総統だった2015年7月19日、国連の潘基文・事務総長宛に、はじめて新規加盟の方式で「台湾」名義による国連加盟申請書を提出したことがある。しかし、このとき潘事務総長は「国連は一つの中国政策を確定した」、つまり国連は台湾が中国の一部であることを認定しているから申請できないとして、申請書を受理せずに送り返すという事態になったことがある。

事務総長の役割は新規加盟申請を安保理に送付することだが、潘事務総長は独断で送り返してしまった。それも国連が「一つの中国政策を確定した」というウソを理由にした。

潘事務総長がその直後、台湾の国連加盟申請を受理しなかった理由を記者団に問われた際、「国連2758決議で国連は中華人民共和国が中国の唯一の合法的代表で、台湾は中国の一部だと認定した」と答えた。しかし、国連が台湾を中国の一部だと認定する決議をしたことはない。

国連2758決議とは1971年10月25日に採択されたいわゆる「アルバニア決議」のことで、これにより中華人民共和国を国連安全保障理事会の常任理事国として承認し、蒋介石の代表を国連から追放することを可決した決議のことだ。

この決議は、中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であることを認定しただけで、台湾が中国の一部であるとは認定していない。

当然ながら台湾は国連に抗議した。アメリカも「国連のコンセンサスではなく、米国の立場でもない」との手紙を送り、日本政府も「台湾の地位についての解釈が不適切である」と申し入れ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなども同様の申し入れをする異例の事態となった。これにより、潘事務総長は誤りを認めたものの、台湾による再度の申請は受理していない。

果たして民進党は台湾名義による国連への加盟を申請するのか、申請した場合、日米などがどのような反応を示すのか、また、潘基文氏は2007年に事務総長に就いて以来、その中立性に多くの疑問を残しているが、台湾の申請に対してどのような対応を取るのか、注意深く見守っていきたい。


民進党「現状維持」党綱領盛込み検討

【台湾国際放送:2016年8月17日】

台湾名義での国連加盟を訴える団体の陳情について、民進党が支持を示した。

台湾名義での国連加盟を目指す団体「台湾連合国協進会」は17日、与党・民進党へ陳情を行い、民進党の主席を兼務する蔡英文・総統が総統の名義で、国連事務総長に書簡を送り、台湾の人々は国連の新たなメンバーとして加盟したい意向を伝えるよう求めた。

台湾連合国協進会の蔡明憲・理事長は、9月9日から19日にかけてアメリカのニューヨークに赴き、台湾の国連加盟のための宣伝活動を行うとして、外交部、華僑委員会、民進党中央の支持を求めた。

これに対し、民進党の李俊毅・副秘書長は、「民進党の立場はこれまでと変わっていない。中華民国名義での国連加盟は既に不可能であり、台湾名義での国連加盟は支持する。民進党は与党であり、議会でも多数政党であることから、民間団体と協力し、台湾の主権が国際社会に認められるようにしたい」と語った。

なお、7月に行われた民進党の全国党代表大会で、党代表4人が、台湾海峡両岸関係に対する蔡英文・総統の「現状維持」の主張を、新たな党綱領として提出する権限を民進党の中央執行委員会に授与することを提案した。民進党の党首を兼務する蔡英文・総統は中央執行委員会に対し、この提案を検討するよう指示した。そして、民進党は17日、中央執行委員会を開き、各関係部門が同提案を検討することを決定した。