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「感謝每個點亮台灣的你(台湾を輝かせてくれたひとりひとりにありがとう)」。勝利宣言会場のスクリーンに映しだされた蔡英文候補直筆のメッセージ。

1月16日に投開票が行われた台湾の総統選挙と立法委員選挙を視察するため、本会は去る1月14日から17日まで「2016年 総統・立法委員選挙視察ツアー」を実施した。団長は国際教養大学教授で元仙台市長の梅原克彦・常務理事、副団長は台湾独立建国聯盟日本本部委員長の王明理・理事で、参加者は27名。

ただ、16日の投開票のテレビの開票速報を台湾独立建国聯盟本部で見守ったときと、翌17日、ジャーナリストの迫田勝敏氏に選挙結果を分析していただいたときには、双日総合研究所のチーフエコノミストで「正論」メンバーの吉崎達彦氏と、外交評論家でキャノングローバル戦略研究所で研究主幹をつとめる宮家邦彦氏も合流した。

この視察ツアーでは14日と15日、台南では民進党候補の林俊憲候補、台中では時代力量の洪慈庸候補、台北では時代力量の林昶佐候補(フレディ)の選挙事務所に立ち寄り、候補者自身や執行長、総幹事など選挙事務所参謀からそれぞれ立候補した目的などをお聞きした。

特に洪慈庸候補の選挙事務所を訪問した際には、許世楷・元台北駐日経済文化代表処代表、児童文学者の盧千恵夫人、民視の田再庭・董事長にも同席いただき、また昼食を一緒に摂りながら選挙情勢などのお話を伺った。

台北市では15日夕刻、市政府において超多忙な柯文哲・市長と1時間ほど懇談の機会をいただいた。柯市長は「東アジアの安定は日台の緊密にある」として、なにが安定材料なのかを参加者に質問する形で進められた。最後に、今後は本会と連絡を取りながら交流を深めてゆきたいとの言葉を後に、市長室に戻られた。

この日の夜は雨だったが、総統府前の凱達格蘭大道で開かれた蔡英文候補の最後の選挙集会を視察。主催者発表によれば30万人が参加したという。雨にもかかわらず熱気がすごい。4年前とは確実に雰囲気が違っていた。

投票日の16日朝は、宿泊したホテル近くの投票所を3カ所ほど視察。投票所は5、6地区(鄰)ごとに設けられていて、午前7時から午後4時まで、1ヵ所で1,000人ほどが投票するという。また、午後4時に投票が締め切られるとすぐに開票作業に入る。台湾の開票が日本と比べるとかなり早い訳は、投票所ごとに開票するからだった。

その後、有志は蔡焜燦先生の実弟で、緑島に10年ほど政治犯として無実の罪で服役させられた蔡焜霖先生、および服役22年の郭振純先生のご案内で景美人権博物を見学。ここには、参加者の一人、台湾独立建国聯盟日本本部顧問の小林正成氏の写真が、美麗島事件で逮捕されて服役していた現在の陳菊・高雄市長などの写真とともに掲示されている。

一行は4時半過ぎに台湾独立建国聯盟本部へ。ここで、陳南天主席や羅福全・台湾安保協会理事長、蔡焜燦・李登輝民主協会名誉会長などと開票速報をテレビ観戦。

日本から選挙を取材に訪台した人は200人とも300人とも言われているが、台湾独立建国聯盟本部には私ども以外に、ノンフィクション作家の門田隆将氏や産経新聞の長谷川元台北支局長なども訪れて取材していた。片倉佳史氏も顔を出した。

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勝利宣言の会場に集まった支持者の大群衆

民進党の蔡英文候補は朱立倫・国民党候補との差を徐々に広げ、5時半過ぎには大勢が決まった。また、民進党が大躍進し、昨年1月にひまわり学生運動の流れを引いて設立している時代力量も国民党のベテラン議員を相手に一歩も引かない戦いぶりに心を躍らせながら、夕食会会場へ。

その後の開票速報は、ホテルの一室に大型スクリーンを2つ据え付けた夕食会会場で観戦。訪問した時代力量の候補者に当確が出ると、思わず拍手が起こる。参加者は歴史を画する瞬間に立ち会っていることを肌身で感じているようだった。

翌日(17日)は、ジャーナリストの迫田勝敏氏に選挙結果を分析していただいた。迫田氏は「今回の選挙を一言でいえば中国にNOを突き付けた」と表現。これはひまわり学生運動に源流があることを指摘するとともに、投票日前夜に起こった「周子瑜事件」(韓国のアイドルグループ「トワイス」(TWICE)の台湾人メンバー、周子瑜さんが台湾独立派だとバッシングを受けて謝罪に追い込まれた事件)を中国の介入とみなした若者の投票行動を促したのではないかとも指摘。

さらに、新党と台湾団結聯盟が1議席も取れなかったことは、台湾の人々が統一や独立という極端を望まず、「現状維持」を選択した結果ではないかとも指摘した。

基本的に台湾の独立建国を推進しようとする民進党や時代力量が大躍進し、中国との統一を終極の目標としている国民党が歴史的惨敗を喫した今回の総統選挙と立法委員選挙。やはり、歴史的瞬間に立ち会っているという思いを強くした選挙視察ツアーだった。

しかし、総統就任式まで4カ月という長期の空白期間がある。岸田外務大臣が蔡英文氏に祝意を発表することで中国を牽制したが、日本のためにも東アジアの安定のためにも、不測の事態が起こることなく、無事に蔡英文政権が誕生することを切に願いたい。