同7月号には柚原正敬事務局長も寄稿し、6月号では永山英樹氏も寄稿

201106016月1日に発売された月刊「正論」7月号に、金美齢氏(学校法人JET日本語学校 理事長・元台湾総統府国策顧問)が一文を寄稿、来年1月14日に投開票される台湾の総統選挙を「剣が峰の戦い」「台湾人が自分の運命を決める最後の選挙」と位置づけ、野党民進党の候補として選ばれた蔡英文主席に対し、「李登輝のように成長する政治家」ゆえに台湾の未来を託したいとする論考を発表している。

その李登輝元総統はすでに「台湾が直面する問題の解決は、2012年の総統選挙にかかっています。目標を達成するためには、人民が大団結し『馬』を乗り捨てて台湾を守ることが急務」(月刊「WiLL」2月号:中嶋嶺雄氏との対談「尖閣は明らかに日本の領土だ」)と発言、馬英九・現総統交替論を闡明(せんめい)している。

その理由は、台湾の民主化にとって最大の危機をまねいているのが、馬英九政権のとっている経済に傾斜した対中国政策であり、「経済をもって統一を促進する」という中国の術中から抜け出せなくなっているからだと剔抉(てっけつ)している。

金美齢氏が蔡英文氏を総統に推す最大の理由は、蔡氏が「ポストに応じて自分には何が必要で、どういう使命を果たさなくてはならないかということがよくわかっている」からと指摘し、それは「李登輝さんと同じタイプの政治家」で、指導者として最も大切な資質である「私心がなく国家観に揺らぎがない」からだと言う。

その一方で「馬英九が再選されたら台湾は終わる」と明言する。なぜなら「馬英九の再選を許せば、再び白色テロが起こり得るということを誰も想像すらしない」からだと、馬英九が3年前に当選した直後のことを思い出してほしいと訴える。

総統選挙まで約7ヶ月、台湾の総統に誰が就くかは日本にとっても影響が大きい。馬英九氏が再選され、すでに中国が台湾に文化協定を迫っている現在、このまま馬英九政権による中国傾斜が進めば、最終的には政治協定の締結を通じて台湾を統一してしまうだろうことは誰の目にも明らかだ。日本のシーレーン防衛もおぼつかなくなる。

金美齢氏も「日本は東アジアの大切な親日国家を失うと同時に、領土を強奪される危機に直面することになる」と、台湾の総統選挙が決して対岸の火ではないことを強調している。一読をお勧めしたい。

なお、同7月号では、本会の柚原正敬・常務理事(事務局長)が「李登輝元総統からのメッセージ 大丈夫、日本は必ず復活する」を掲載、同6月号には永山英樹・台湾研究フォーラム会長(本会理事)が「台湾の援助を踏みにじった“鈍カン”外交」が掲載されている。併せて味読されたい。