20101010-017月に台北で行われた李登輝元総統と野口健さん(アルピニスト)の対談が10月9日に発売されたPHP『Voice』11月号に掲載されています。野口さんは、遺骨収集活動を通じて台湾の高砂義勇隊の存在を知り、その理解を深めるために本年2月、台湾を訪れました。その際、本会関係者がご案内したのを契機に、李登輝元総統との対談が実現しました。

台北郊外にある李元総統の別荘で行われた対談では、まだ30代の野口さんが「同胞愛」をもって遺骨収集活動されていることに、李登輝元総統も大変心強く感じているようでした。

■月刊「Voice」11月号
・発売:2010年10月9日
・定価:680円(税込)

「同胞愛」なき政治家が国を滅ぼす─いまの日本に必要な“指導者の条件”とは?

SONY DSC10月9日発売の月刊「Voice」11月号で、李登輝元総統とアルピニストの野口健(のぐち・けん)氏が「いまの日本に必要な“指導者の条件”」をテーマに対談している。

野口健氏といえば「七大陸最高峰世界最年少登頂記録」を25歳のときに樹立、ヒマラヤや富士山の清掃活動や氷河の融解防止活動などで広く知られるが、最近は大東亜戦争で戦歿した方々の海外遺骨収集にも精力的に取り組んでいることでも知られている。「違いがわかる男」として、かつてのテレビのコマーシャルを思い出す人もいるかもしれない。しかし、野口氏と台湾が結びつくイメージはない。

李元総統の桃園県大渓にある自宅で行われた対談は、遺骨収集の話題から入る。よく知られるように、李氏の実兄(李登欽氏。日本名・岩里武則)も大東亜戦争で戦歿し靖国神社に祀られている。それ故、野口氏が遺骨収集に取り組んでいることを知ってとても感銘を受けたという。

野口氏が「国のために命を懸けてくれた方々に対しては厚く敬意を払うべき」と述べたことに対して、李氏は「それが『アイデンティティー』というものです。または『同胞愛』といってもいい」と、話は冒頭から波長が合う。
李氏はそこから早速、指導者論に入り「いまの日本の政治家や政治に関わる人間には、その『同胞愛』がありませんね。国を率いる者にとって、もっとも基本でかつ大切なことは、国と国民を愛することです」と核心を衝く。

そして、いまの日本には「二つの重大なものが欠けている」と指摘、野口氏もその指摘にうなずきつつ「戦後は、日本人に誇りをもたせないような教育ばかりがされてきた」と応答、指導者をめぐって話は台湾の日本統治時代に及び、李氏の尊敬する後藤新平が話題になる。そして対談は、戦後台湾の恐怖政治下における教育や李氏がたどってきた政治家としての道程などに及ぶ。

野口氏が次々と繰り出す質問は、李氏がこれまで特に深く関わってきたテーマが少なくなく、野口氏の事前準備のよさと「聞き上手」ぶりが遺憾なく発揮されている。李氏からもまた、50歳以上もの年齢差を感じさせない情熱的な話しぶりが手に取るように伝わってくる。

最後に野口氏が「もし日本の総理大臣になったとしたら、何をおやりになりますか?」と質問している。これに対して即答した李氏の発言は見逃せない。こんな痛快な対談はあまりお目にかかれない。台湾関係者ばかりでなく、日本人必読の対談だろう。

なお、李登輝元総統と野口健氏の対談が行われたのは、今年7月19日。3時間にも及んだという対談の感想について、野口氏は公式サイトのブログで、写真とともにつづっている。この対談をセットした本会台北事務所のブログでも、なぜ野口氏が台湾に関心を抱くようになったのかを解説しつつ、対談の様子を日本の書籍がずらりと並んだ書庫の写真などとともに紹介している。

また、本会では毎年「日台共栄の夕べ」を開催しているが、今年(12月23日予定)の講師は野口健氏。なぜ台湾とめぐりあったかなどについてお話しいただきます。