北は基隆から東海岸、離島まで。歴史散歩・温泉・ホテルなどテーマも充実

20080901台湾の魅力は台北だけにとどまらない。むしろ、台北を離れることでより多くの顔を持つ台湾を見つけることができるだろう。台湾に何度も足を運ぶうち、「世界一のチャイナタウン」と揶揄する人もいる台北を離れて、より台湾色の濃い南部や海岸線が美しい東海岸、本土とは文化を異にする離島を訪れたいと思うのも人情だ。

しかし、残念ながら台北以外の都市や離島について詳しく紹介されているガイドブックというのは今まで皆無だったと言ってよい。「台湾」というガイドブックを開いても、多くは台北といくつかの都市が紹介されているに過ぎなかった。

日経BP社が刊行している『旅名人ブックス』では、今春から続々と台湾関連シリーズが発売された。題名を一瞥するだけで、今まであまり陽が当たらなかったスポットも十分網羅されているのが分かるだろう。このシリーズは、まだまだたくさん埋もれている台湾の魅力を発見する大きな手助けになる、まさに文字通りの「ガイドブック」だ。

そもそも『旅名人ブックス』は、通常のガイドブックとは趣が異なり、テーマが命である。

例えば、『台湾のホテル―ホスピタリティー溢れる宿に泊まる (旅名人ブックス 102)』。来年からホテルオークラやマンダリンオリエンタルが続々と開業する台湾のホテルはますます充実するだろう。ホテル選びはまさに旅の楽しみの一つである。

それから日本人に人気の高い、『台湾の温泉&スパ―日本人にも興味深い新温泉スポット (旅名人ブックス 103) 』。市販のガイドブックでも北投や烏来などの温泉が紹介されているがこちらは本格派。台湾で唯一、日本の温泉と全く同じ風情が残る中部の蘆山温泉や台湾人にとっても秘湯の花蓮紅葉温泉まで紹介されている。

また、台北や高雄の陰に隠れがちだった中南部も新幹線の開通で日帰り観光や気軽な小旅行が可能になった。今まで充実したガイド本がほとんどなかった『台南―台湾史のルーツを訪ねる (旅名人ブックス 104)』『台中・新竹・日月潭・台湾中西部―“昔懐かしい日本”が残る (旅名人ブックス 105)』はそんな中南部の魅力をたっぷりと紹介してくれる。

台湾に残る雄大な自然やリゾートに関心がある方は、『高雄と台湾最南端―歴史遺産からリゾートまで (旅名人ブックス 106) 』『台湾東海岸と基隆―台湾の原風景を味わう (旅名人ブックス (108)』を手にとって出発。新幹線で第2の都市・高雄に乗り込み港町ならではの新鮮な海鮮料理にありついた後は、バスに揺られてリゾートとしても有名な懇丁や鵝鑾鼻へ。都市と美食とリゾートが一度に味わえる。

反対に、花蓮や台東に代表される東海岸はタイトル通り、まだまだ手付かずの自然が多く残る文字通りの原風景。そもそも開発が始まったのは日本時代に入ってから。台北からは台湾鉄道のタロコ号の導入で、こちらも便利になった。台東の知本温泉は台湾でも有名な一大温泉地。そこまで時間が取れない方は、台北から列車で一時間程度の港町・基隆へ。こちらも海鮮と大きな夜市、そして「財布忘れても傘忘れるな」と言われるくらい雨の多い基隆らしく、港を見下ろす丘に立つ蒋介石像は雨ガッパを着込んでいる。

「本土だけでは飽き足らない!」という人にオススメなのは、『金門島・澎湖諸島―島の魅力を満喫する (旅名人ブックス 107) 』。離島は、台湾本島にはない魅力と文化を備えている。両島とも、台北市内の松山空港から一日に何便も国内線が就航しているし、もっとのんびりという方にはフェリーもある。飛行機を利用した場合、朝早めの便で出発すればたっぷり一日観光を満喫でき、夜便で台北に戻ることも可能だ。いいかえれば、数日間の台北滞在の間に、大都市の喧騒とリゾートの両方を楽しめるのだ。

何度も訪れた台北の魅力を再発見したい方には、『台北歴史散歩―日本統治の足跡と近現代史を探る (旅名人ブックス 110) 』『九份・淡水・桃園と台北近郊―歴史遺産の宝庫をめぐる (旅名人ブックス 109)』はいかがだろう。台湾の街を歩いていると、日本時代のものと思しきレトロな赤レンガの古い建物や日本家屋を改装し、レストランやカフェにして人気を博しているところも多い。60年以上昔の日本時代の息吹がまだまだこの大都市の片隅には残っている。

価格はそれぞれが2000円前後とやや割高だが、美しい写真がふんだんに使われており、ガイドブックというよりはアルバムのようだ。この夏休み、台湾へお出掛けになる方はもちろん、台湾観光を計画している方にはぜひ手に取っていただきたいシリーズだ。