米国のコンドリーザ・ライス国務長官は12月21日の会見で、国務省の一年を振り返ると共に、台湾の陳水扁政権が実施を予定している「台湾」名義による国連加盟の賛否を問う住民投票について、反対する立場を明確に表明した。

ライス長官は「われわれは『1つの中国』政策を堅持し、台湾の独立を支持しない」と強調。「(住民投票は)挑発的な政策であり、台湾海峡の緊張を高める。台湾の住民に利益をもたらさない」と批判した。

米国は、4年前の台湾総統選挙と同時に実施された公民投票の前にも反対を表明し、日本政府がそれに追随したことは記憶に新しい。公民投票は予定通り実施されたものの、成立の要件(有権者の2分の1が投票することで有効)を満たさず、5%の差で成立しなかった。

これに対し、宮崎正弘・本会理事が自身のメールマガジンで痛烈に批判しているので、ライス長官の発言と合わせて下記に紹介する。


Press Conference by Secretary of State Condoleezza Rice

Secretary Condoleezza Rice
Washington, DC
December 21, 2007

In East Asia, we have made progress this year toward our goal of denuclearizing the Korean Peninsula. After agreeing to implement the September 2005 joint statement, North Korea shut down and is now disabling its Yongbyon facilities. We expect North Korea to honor the pledge it made in the six-party talks, to make a complete and accurate declaration of all its nuclear programs. Of course, other challenges and flashpoints of conflict remain in East Asia and we will monitor those closely. In the Taiwan Strait, for example, the United States remains committed to peace and security. We oppose any threat to use force and any unilateral move by either side to change the status quo. We have a One China policy and we do not support independence for Taiwan.

As we have stated in recent months, we think that Taiwan’s referendum to apply to the United Nations under the name “Taiwan” is a provocative policy. It unnecessarily raises tensions in the Taiwan Strait and it promises no real benefits for the people of Taiwan on the international stage. That is why we oppose this referendum.

 該当部分のみ  会見全文


「4年前の失策を踏襲するブッシュ政権。台湾に内政干渉」
住民投票をやめろ、と露骨な圧力に台湾民衆が反発

コンドレーサ・ライス米国務長官が馬脚を現した。

12月21日の記者会見でライスは「台湾が『台湾名義』での国連加盟を問う住民投票を計画しているのは『挑発的な政策』である」と決め付けたのだ。

そして「台湾海峡の緊張を不必要に高めるだけであり、住民投票を中止するように」と強く警告する挙にでた。

スティタス・クオ(現状維持)優先の立場に立脚する米国としては、そういいたいのはわかるにせよ、明らかに内政干渉である。

だが、陳水扁総統は、このライス発言を待っていた節がある。

4年前の総統選挙でも、土壇場で米国が台湾の住民投票に内政干渉し、反発を強めた本土台湾人が、優勢だった国民党・親民党連合を破り、僅差で陳水扁続投となった。

1996年選挙でも、直前に中国はミサイルを台湾海峡へぶち込み、緊張感を高めた結果、台湾独立を主張する李登輝の圧勝に結びついた。

2000年総統選挙は、国民党分裂により、陳水扁が漁夫の利を得たのは基本構造だが、やはり土壇場で朱容基(首相、当時)の強行発言が反作用を引き起こし、民進党の勝利となった。

それゆえ、中国は台湾の総選挙と総統選挙を目の前に、久しくだんまりを決め込んでいた。

うっかり強硬な態度を示せば、北京の希望する馬英九の当選が遠のき、つまり台湾の挑発に乗れば、逆に台湾独立派を有利にしてしまうと踏んでいるからだ。

米国は北京の圧力にまけて、再び三度、台湾へ「独立を示唆するような、いかなる動きにも反対」という立場を鮮明にしてきたが、おそらく北京との連絡ミスか、あるいはライス国務長官のフライング失態であろう。台湾の挑発にまんまと嵌った。

陳水扁総統は直ちに反論した。

ライス長官の警告に対して、「台湾に挑発政策はない。住民投票は2300万人の台湾人民の民意を示すことにすぎない」。

問題の『住民投票』とは、じつは結果がどうでても、国際法的にレジティマシー(合法性)がない。

与党・民進党は2008年3月22日の総統選挙と同時に住民投票を行ない、「台湾の国連加盟は是か非か」と問う。

野党・国民党も住民投票には乗り気で、ただし「中華民国としての国連復帰は是か非か」と問う。

すでに台湾では憲法に従い、住民投票実施を求める272万人以上の署名が法に基づいて集まっている。

さらに陳水扁総統は付け加えた。

「挑発しているのは台湾ではなく、中国だ。中国のほうが台湾対岸に988基以上の短距離弾道ミサイルを配備しているではないか。台湾はすでに主権独立国家であり、中華人民共和国の一部ではない」と明言した。

台湾の緊張が高まれば高まるほどに、台湾人アイデンティティへの自覚が広がり、その行き着く先の投票行動がどちらに有利になるか。書くまでもないことであろう。

【12月23日 宮崎正弘の国際ニュース・早読み 第2036号より】