20070630尖閣諸島を侵そうとする中国の動向分析はリアルとしか言いようがない

喜安幸夫氏といえば「台湾週報」の名編集長として記憶にある。最終面のコラム「春夏秋冬」は、その流麗な筆致で指摘する台湾問題に共感する読者は少なくなかった。また『台湾島抗日秘話』『台湾統治秘史』『台湾の歴史』の著者としても知られる、日本屈指の台湾史研究者である。

その喜安氏が日本と中国が台湾海峡をめぐって軍事衝突する近未来のシミュレーション小説『日本中国開戦-激震襲う台湾海峡』を上梓したのは昨年4月のことで、今春には漫画化された。

そして今般その第2弾として、今度は東シナ海の有事を描く『新日中戦争-尖閣諸島を奪回せよ!!』を著した。

2012年3月、ついに中国の東シナ海侵攻が始まり、中国初の原子力空母「鎮遠」が発進し、東風21型ミサイルを発射する。日本は陸自の戦闘ヘリや海自の強襲揚陸支援艦シー・ウルフによる尖閣諸島奪回作戦を始動させる──。

前著では軍事用語を多用することでリアル感を出そうという意図があったのかもしれないが、本書でも軍事用語は頻出するものの決して読み進める上で障りにならない。むしろ、著者の意図がそれらの用語に込められている。

シュミレーション小説とは言え、中国が環境汚染や地方軍区の暴動に対する国内批判をかわそうとして、日本の領土である尖閣諸島を侵そうとするその動向分析はリアルとしか言いようがなく、戦慄を覚えさせずにはおかない。

なお、前著で台湾研究フォーラムをモデルとした「フォルモサ・フォーラム」が登場するが、本書でも、日本李登輝友の会と台湾研究フォーラムを合体させたような「日台共栄フォーラム」が登場する。事務所は千代田区三番町にあり、常任理事の名前が湯河原正秀、事務局長の名前が永井英雄とされている。

日本李登輝友の会も千代田区三番町にあり、常務理事は柚原正敬氏であり、台湾研究フォーラムの現会長で事務局長を務めたことがあるのは永山英樹氏だから、なんとも似通っている。それだけに、顔を思い浮かべながらついつい読んでしまった。

この「日台共栄フォーラム」が日本政府の意向を受け、台湾の現役国防大臣を研究会に招いて講演会を開く場面が出てくる。著者の日本李登輝友の会や台湾研究フォーラムへの期待と受け止めたい。

■喜安幸夫
新日中戦争-尖閣諸島を奪回せよ!!
■学研・歴史群像新書(2007年7月3日刊、256ページ)
■945円(税込)