李登輝前総統の「台湾独立放棄発言」を報じた週刊誌『壹週刊』について、本会理事で評論家の宮崎正弘氏が自身のメールマガジンで分析。李氏の発言報道は「歪曲」と断じています。

  「わたしは従来の主張をまったく変えていない。大事なのは自主憲法制定だ」
    李登輝前総統、週刊誌への談話(「独立路線放棄」)を否定

ちょうど筆者は広州市に滞在しており、ホテルの部屋でたまたまテレビニュースを見ていた。驚いた。

李登輝前台湾総統が画面に出てきたからだ。1月31日の夕方である。

中国中央電視台のアナウンサーが曰く。「李登輝は従来の主張を翻し、今後は台湾独立を求めないと発言、また台湾の大陸投資拡大を歓迎し、中国から台湾へくる人達がみんなスパイだと考えるのは止めよう。私自身、孔子巡礼の目的で中国大陸を訪問したい」などと述べた、と伝えた(大陸では李登輝と呼び捨て)。

また同ニュースは李登輝・前総統率いる「台湾団結連盟」が政党名を変更し「台湾団結党」とすること、新党首に黄昆輝氏を選んだことも伝えていた。

ちょっと衝撃的な発言ではないか!ま、大陸のマスコミは共産党の検閲を受けて情報操作がたっぷりなされているから、どうせ怪しいだろう、とは考えた。(帰国して留守中の新聞をまだ整理していない。だから、この稿は電子版の台湾有力紙『自由時報』ならびに台湾の媒体をもとに書いている)

▼「わたしは、そんな発言はしていない」と李前総統が反論を開始

案の定だった。
李登輝前総統は『自由時報』に2回、単独インタビューに応じて以下の反論をした。

(1) 「私は従来より台湾独立を明言したことはない。大陸と台湾は『国家と国家の関係』である、と言ってきた(二国論)」として、独立路線を放棄したように報じられた週刊誌『壹週刊』の記事は、実際のインタビューから都合の良いところだけを拾い、部分的な発言を歪曲した報道だった、と週刊誌『壹週刊』を間接的に批判した。

(2)「両岸の投資、貿易はWTOに加盟し、関税も検疫もその他のプロセスも、「国家」と「国家」の関係で行うべきである」。

(3)「私は大陸を訪問したい、などと発言していなし、希望ももっていない」。

ニュースの源となった週刊誌の『壹週刊』は、昔からのセンセーショナルな媒体で、全幅の信頼をおくにはちょっと危険なメディアです。創設者のジミー・黎は、小生も香港の「蘋果日報」の本社で単独インタビューしたことがありますが、ハイエクの信奉者、完全な自由主義者。が、経営するメディアは「売らんかな、第一主義」と見受けられますね。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成19年2月6日(火曜日) 通巻第1696号より転載