11月24日付の本会メールマガジン『日台共栄』誌上で、「11月21日にロイド船級協会の安全検査を無事通過」したことを紹介した台湾版新幹線だったが、29日夜、行政院交通部(国土交通省に相当)が28日に開いた同部検査委員会の意見を受け、「改善が必要」として営業運転許可を出さなかったため、台湾高速鉄路(台湾高鉄)は12月7日の開通式を延期すると発表した。これで3度目の延期である。

12月9日の台北・高雄市長選の投開票日をにらんで7日に開通式を設定したといわれているが、まさに迷走する台湾政局を反映した格好だ。

本会の片木裕一理事は機関誌『日台共栄』の8月号掲載の「台湾新幹線は本当に『新幹線』なのか」の最後を「当初、日本の新幹線は時速210キロメートル程度で運行した。台湾高鉄も当初は安全を最優先してソロリソロリと走ればいいのである。そして実績を積み重ねることにより、最終的に「Taiwan-Shinkansen」を世界に通ずる言葉にすればいいのである」と締めくくっている。

指摘の通りである。「安全な新幹線」という信頼を得るためには、政治との妥協は許されない。以下に、開通式延期を報ずる今朝の報道記事を紹介する。


台湾新幹線の開通式典延期 営業開始は来月下旬以降

日本の新幹線システムを海外で初めて採用した台湾高速鉄道(台湾新幹線)の事業主体である台湾高速鉄路(台湾高鉄)は29日夜、12月7日に予定していた開通式典を延期すると発表した。行政院交通部(交通省)が、28日開いた同部検査委員会の意見を受け、「改善が必要」として営業運転許可を出さなかったためだ。今後約1ヶ月無事故で試運転を続けることなどを台湾高鉄に要求しており、営業開始は最短でも12月下旬以降にずれ込む見込み。

開通式典は、陳水扁総統が小泉純一郎前首相に招待状を送るなど日本の政治家や企業関係者らも招いて台湾中部の同鉄道台中駅で開く予定だった。1週間前の延期決定で国際的なイメージダウンは必至だ。同社は「内外の招待客には心よりおわびする。交通部の営業許可を早く取れるよう全力を挙げる」としている。

同鉄道では10月31日に運転訓練中の列車が車両基地で脱線、今月24日には線路の安全確認をする作業車の脱線事故があった。ともに人的ミスが原因。このため、安全面を重視した交通部は無事故1ヶ月のほか、運転頻度を増やした試験走行の実施などを台湾高鉄に求めている。

29日付の夕刊紙「聯合晩報」は、交通部官僚の話として営業開始は来年1月から旧正月の2月ごろになると報じた。【11月30日付・西日本新聞】


台湾新幹線、開通式を延期

台北と高雄を結ぶ台湾高速鉄道(台湾新幹線)の事業本体である台湾高速鉄路は29日夜、12月7日に予定していた開通式を延期すると発表した。交通部(交通省)は高鉄による脱輪など度重なる事故を受けて28日、営業許可の発布を少なくとも1ヶ月凍結すると決めた。式典延期はこれを受けた措置で、新たな開催日時は今後、正式な開業日が決定した段階で再調整するという。式典に向けて台湾側は、小泉純一郎前首相ら日本の政財界人にも招待状を発送している。【11月30日付・産経新聞】