開通が丸1年遅れ、今年(2006年)10月に開通予定の台湾新幹線。車両、電力、通信、信号、メンテナンス情報と管理など各種システムの整合テストが急ピッチで行われているという。開通は良しとしても、果たして乗客を乗せての開業は10月に間に合うのか、台北駅の工事は間に合うのか、開業した場合、果たして台北-高雄間なのか、板橋-高雄間なのか、資金繰りは大丈夫なのかなど、さまざま取り沙汰されている。

日台共栄のシンボルとなっている感のある「台湾新幹線」である。日本人の多くが無事開業を注目している。本会も、日台共栄の夕べなどで「台湾新幹線」の模型を走らせたり、パネル展示をしたり、台湾新幹線への日本人の関心を高めるべく機会あるごとにいろいろ試みてきている。4月19日付「台湾週報」で最新の動向を伝えているので、ご紹介したい。

メールマガジン『日台共栄』編集部


 「台湾高速鉄道、各種整合テストは順調」

台北-高雄間を90分で結ぶ台湾高速鉄道(台湾版新幹線)の車両の試験走行ならびに電力、通信など各種システムの整合テストが4月17日、桃園で実施され、それらはすべて順調に完了した。

台湾高速鉄道は今年10月の開通予定に向け、車両の試験走行および各種システムの総合テストを順次進めている。試験走行は昨年11月にすでに高雄―台南間の約58km間で実施され、最高速300キロの試運転に成功した。その後、今年3月に台南-台中間で実施され、それと合わせて車両、電力、通信、信号、メンテナンス情報と管理など各種システムの整合テストも行われている。今回の試験走行は台中-桃園間で実施され、毎時30キロ、120キロ、300キロの3段階で実施され成功した。

台湾高速鉄道の運営母体である台湾高速鉄路公司(以下、高鉄)によれば、新幹線建設の進捗状況は今年2月末現在、全体で94.05%に達しており、内訳は軌道工事および土木工事がともに100%、駅舎工事が98.71%、車両基地工事が94.71%、中核の機械電気システム工事が79.05%となっている。高鉄は各種システムの整合テストの進度を速めるため、南部と北部の2ヶ所で同時に行っており、開通予定に向けて作業が急ピッチで進められている。

こうしたなか、台北市で4月13日、台湾経済研究院の主催で「アジアの新幹線を大分析~日本と韓国の経験から台湾高速鉄道の将来の発展と可能性を探る」と題したシンポジウムが開催された。シンポジウムには日本の三菱総合研究所研究員の平石和昭氏が招かれ、日本の新幹線の現況や未来について紹介するとともに、台湾の高速鉄道がもたらす影響などについて報告が行われた。

平石氏は開通後の大きな変化として、日本の新幹線の例をあげ、輸送時間の短縮と乗客の増加により、多くの経済利益がもたらされたことを指摘した。そのうえで「台湾においては高速鉄道開通後、在来線である台湾鉄道と飛行機、長距離バスに大きな衝撃をもたらすだろう。それらの交通機関との競争をいかに調整していくかが課題となる」との見方を示した。

平石氏はまた、開通後に予想される具体的な状況について分析し、飛行機とバスの利用客が高速鉄道に流れこむ第一段階を経て、各駅の周辺開発が完成する第二段階においては観光ツアーなどを通じて他地域からの旅客が増えるだろうと指摘した。また、各交通機関との住み分けについては「日本の経験から、新幹線で2時間以内で移動できる距離において、客は飛行機を利用しない」と述べた。

平石氏は「台湾の狭い土地から見て、鉄道が最も発展しやすい。高速鉄道開通後は、多くの旅客が流れ込むことが予想されるため、その他の交通機関は早めに対応と調整を行う必要がある」と指摘した。さらに、高速鉄道がもたらす経済的影響について「日本の新幹線の例から見て、駅とその周辺の開発は民間企業だけでなく中央、各地方自治体が力を合わせ、それぞれの得意分野を発揮してこそ真に経済成長を促すことができる」とコメントした。