10月10日午後、アルカディア市ヶ谷で「台湾を中国領と教える社会科地図を許す!」緊急国民集会が開かれ、約200名が雨の中、参加した。12日(水)には文部科学省前で抗議アピールが行われる。

会の趣旨説明を行った台湾研究フォーラム永山英樹会長は、6月に中国大連の税関で、日本人学校での使用のための地理の教材が「台湾を中国と別の色で塗っている」として没収された事件を紹介し、このようなことが日本国内でも起きていると社会科地図問題の異常性を指摘した。またこれが中国の台湾侵略正当化のためのプロパガンダであり、教科書でこのような嘘が教えられていることに対して声を上げるのは国民の義務であり、全国の人に呼びかけたいと語った。

アジア安保フォーラム幹事の宗像隆幸氏は『台湾正名運動の本質ー社会科地図問題に関連して』という題で講演し、台湾は1951年署名のサンフランシスコ平和条約まで日本の領土であり、中国の領土になったことはないと指摘した上で、検定地図帳の虚偽記載が、日本の基本的国益にもとづいておらず、中国の侵略を容認することになると警鐘を鳴らした。また台湾政府が用いている中華民国憲法が中国の野心を正当化するものだとして、住民自決による台湾憲法制定こそ台湾の民主化に法的根拠を与えるもので、世界の民主化を目標とするブッシュ政権は、これを支持すべきだとした。11日からの、李登輝元大統領の訪米は、台湾の状況を米国に理解させるためであると明かした。

日本李登輝友の会機関誌『日台共栄』編集長の柚原正敬氏は、『捏造地図を横行させる文科省・教科書会社の驚くべき姿勢』というタイトルで教科書検定制度の運用について解説。検定が終わっても、修正表を配ることができると指摘した。『台湾の声(平成13年7月25日)』の読者投稿などが地図帳問題の嚆矢であり、産経新聞中国情報の地図、朝日新聞HP問題、NHK中国高速鉄道報道地図、サンデープロジェクトの地図などの問題も、抗議を受けたメディア側が誤りを認めていることを紹介した。また、両論併記の日中共同宣言を、日本の行政が誤って理解しているという問題を指摘した。日本は台湾が中国に帰属するとは認めていないが、日中友好協会などが中国側の主張をさも日中の合意であるかのようにして言っていることが元凶ではないかと指摘した。日本李登輝友の会では、すでに地図帳問題チームを作って取り組んでいるとし、会場に対して、地方議会で陳情、請願し、最終的には国会議員を後押しすることを提案した。

メールマガジン『台湾の声』編集長・林建良氏は、『日本人よ、我国台湾を中国に売ってどうする』というタイトルで、台湾人が国民党による反日教育を受けながらも、日本が好きなのは、中国人的教育には見られない日本人の誠実さが尊敬を集めているためだと分析した。この誤った教科書が、その誠実さを消し去り、オアシスと言われる台湾を砂漠といわれる中国に差し出す行為だと批判した。

これを受けて永山氏は、台湾人が優しいから与しやすいと見て、台湾人を無視することは本来あるべき姿と逆であると応じた。永山氏は『地図問題が象徴するものー台湾を中国の一部と見たがる日本人の心理』という話の中で、日本に蔓延している一種の事大主義について分析した。朝鮮を巡る近代の状況を例に、事大主義が亡国の元であると指摘した。また、そのような日本人が、強いものから来たストレスによって、弱いものいじめをしていると分析した。地図の歪曲により2,300万人の台湾の事実が抹殺されている。地図帳問題は日本に道義が欠落してることを示していると指摘した。

台湾団結連盟日本支部の片木幹事長は、支部の取り組みとして、在日台湾人の外国人登録証国籍欄問題、代表所に法的根拠を与える台湾関係法の推進、そしてこの地図問題を三本柱として挙げた。

質疑応答では林編集長が「日本は平和と人権を大切にすると言っているが、中国に対しそのようにしているのか?放棄した台湾について発言する際に、放棄した相手である台湾人の考えをなぜ尊重しないのか?国連中心主義ならば、国連憲章を見れば、台湾は住民自決すべきである」と日本政府の矛盾を指摘した。また柚原氏は、川口順子外相時代に外交政策透明化のための審議会で、中国は大事だが、それ以上に台湾が大切という提言があった。このことを実行するように求めるべきではないかと提案した。

黄文雄氏は、国際法で「固有の領土」というのは存在せず、台湾を先に「発見」したのはポルトガルだと指摘、中国の正史である明史には「台湾は日本に属す」とさえ書いていると紹介。日本は台湾を固有の領土と言わなかったのは、近代国家たろうとしたからであるとして、中国の後進性を浮き彫りにした。

最後に、下記の決議文が満場の拍手で採択された。


決議文

中学校の教科用図書である帝国書院の『中学校社会科地図』と東京書籍の『新しい社会科地図』は、台湾と中国との間に国境線を引かず、台湾を中華人民共和国の領土とする表記を行い、それを文部科学省は教科書検定において合格させ、その結果毎年百万人以上の中学生が学校においてそれらを使用させられている。

しかし言うまでもなく、台湾は中国の領土ではない。よってこれら二つの社会科地図の表記は明らかなる誤りである。これは国家の将来を担うべき青少年に、誤った地理的知識を植え付けているという極めて重大かつ深刻な問題である。

このようなものを検定で合格させたことについて文部科学省は、「政府見解に基づいたものであり、適切だ」と表明し、自らの判断を正当化しているが、我が国の政府見解は当然のことながら、「台湾は中華人民共和国の領土と認めない」というものであって、そのような虚偽の説明を、我々国民は絶対に受け入れることはできない。

そもそも台湾を中国の一部と極め付ける見方は、その島に領土的野心を抱く中華人民共和国のものである。従ってこれら社会科地図の表記は事実上、中国の一方的な主張を反映させただけのものであり、文部科学省が従っているとされる「政府見解」なるものにしても、それは日本政府のものではなく、中国政府の「見解」なのである。

これは極めて恐るべき事だ。なぜならばこうした行為は、日本の中学生に中国の政治プロパガンダを押し付けるに等しいものだからだ。中国覇権主義を正当化し、あるいは台湾の人々の尊厳と感情を蹂躙するという、あってはならない教育が現実に、これら社会科地図によって長年行われてきたということに、我々は今更ながらに戦慄を覚える。

もはや単なる誤表記の問題に留まらない。我々国民はこのような現況を、断じて看過することはできないのである。

すでにこれら二つの社会科地図の平成18年度版が検定を通過し、来年度から全国の学校で使用されようとしているが、帝国書院と東京書籍は「教科用図書検定規則」第13条第1項に従い、誤表記の訂正申請を文部科学省に対して行わなければならない。同じく文部科学大臣もまた同条第4項に従い、訂正申請の勧告を帝国書院並びに東京書籍に対して行わなければならない。

文部科学省及び帝国書院、東京書籍は、これらを直ちに実行せよ。

以上を我々の要求とし、ここに決議する。

 平成17年10月10日

「台湾を中国領と教える社会科地図を許すな!」緊急国民集会 参加者一同