外務省の谷内正太郎事務次官は、4月9日付で内田勝久・交流協会台北事務所長を更迭、後任に池田維・前ブラジル大使を任命した。

10日発売の月刊『文芸春秋』によれば、元カナダ大使の内田所長は、一昨年の12月12日、本省の事前了解なしに台北市内のホテルで天皇誕生日祝賀レセプションを主催し、陳水扁政権の要人を前に「陳総統を始め、ご来賓の皆様のご発展を心から祈念しております」と挨拶、大陸派のチャイナスクールの激怒を買った。

加えて、内田所長が総統府に”知恵”をつけ、台湾側が呉淑珍・総統夫人の日本訪問を申し入れてきたことが判明、更なる怒りを呼んだという。しかもその時期がASEM(アジア欧州会議)外相会談が開催される5月6日と、愛知万博の中国ナショナルデー開催に合わせて呉儀副首相の来日が予定されている同19日の間隙を突く9日から14日だというのが余りにも刺激的だったようだ。

このため、2月時点で、谷内次官はトラブルメーカーの内田氏を更迭する方針を固めたが、前任の竹内前次官が反対したため、4月までずれ込んだというのが真相である。

台湾サイドも外務省執行部の意思は変わらないと見て、3月24日、台北駐日経済文化代表処を通じて呉淑珍訪日要請を取り下げた。

(月刊『文芸春秋』5月号「霞ヶ関コンフィデンシャル」より)