【毎日】<李登輝氏来日>李氏はビザに「感激」

台湾の李登輝前総統は21日、日本政府がビザを発給したことについて「非常に喜んでいます」と述べるとともに、発給が予定より1日早かったことには「感激している」と語った。

【西日本新聞①】李前総統にビザ発給 政府

政府は21日、訪日を希望していた台湾の李登輝前総統(81)に対して入国査証(ビザ)を発給した。これに対し、中国は強く反発、日本政府に発給取り消しを求めた。小泉純一郎首相は同日午後「一市民として日本を旅行したいとのことですから、断る理由はありません」と記者団に語った。

李氏は観光目的で来日「政治活動はおこなわない」との意向を日本政府に伝えており、細田博之官房長官は21日の会見で、与党幹部らに接触をさけるよう伝えたことを明らかにした。

李登輝前総統の入国ビザは、日本の対台湾交流機関・交流協会台北事務所を通じて発給された。短期滞在の一次査証で15日間有効。

李氏の代理人によると、李氏は家族や主治医らとともに27日に名古屋空港から入国。金沢、京都などを回り、来年1月2日に台湾に戻る予定。

同氏の訪日は、心臓病治療のため大阪と岡山を訪れた2001年4月以来、3年8ヶ月ぶり。

【西日本新聞②】李氏に訪日ビザ発給 中国、取り消し要求 日中関係冷却化は必至

李登輝・前台湾総統への訪日査証(ビザ)発給について、中国外務省の劉建超・副報道局長は21日の記者会見で、「外交ルートを通じて日本政府に発給取り消しを求めている」と述べた。

中国側は李氏訪日が「中国の利益にかかわる重大な問題」として対日の報復措置も示唆、日中関係の一層の混迷、冷却化は不可避の情勢となった。劉副報道局長は「中国側が断固反対したにもかかわらず、中国分裂活動を行うことを許可したもので、強い不満を表明する」と述べた。日本側が「李氏は一私人」としているのに対しては「分裂活動の後ろ盾を求め、外部条件をつくろうとしているのは明らか」との反論を繰り返した。

また、3年前の訪日時には中国側が当時の李鵬・全人代常務委員長の訪日を延期した経緯があることを踏まえ「日本側は誤った決定の教訓をくみ取るべきだ」と指摘。李氏の訪日は「中日関係にとって極めて不利益でマイナスの影響がある」として、報復措置を取る可能性を示唆した。

先の日中首相会談で日本側が招請した温家宝首相の訪日は絶望的な情勢となり、両国関係修復の道は一段と遠のいた。両政府は従来、政治摩擦を経済や貿易、文化面には波及させない立場を取ってきたが、中国側の対応次第では民間交流分野への影響も予想される。

【産経①】李登輝氏、ビザ受領

台湾の前総統、李登輝氏の周辺筋は21日、日本の対台湾窓口機関である交流協会台北事務所から、申請していた李氏の日本へのビザを受領したことを明らかにした。観光を目的とした短期滞在の一次査証で、有効期間は15日間。同筋によると李氏は、ビザ受領を非常に喜んでいたという。中央通信によると、台湾外交部(外務省)報道官は同日、日本政府が李氏にビザを発給したことに対し「歓迎の意」を表した。

また駐日代表処を通じ、混乱回避のため日本側に李氏の入国時などで要人待遇を求める考えも明らかにした。

【産経②】中国、対抗措置を検討中

日本政府が台湾の李登輝前総統に対し訪日ビザを発給したことについて、中国外務省の劉建超報道官は21日の定例記者会見で、「強い不満」を表明、日本側に「誤った決定」を正すよう要求した。しかし対抗措置をとるかについては明言を避け、政府内で慎重な検討が続いていることをうかがわせた。劉報道官は「李登輝の訪日が国家分裂活動の後ろ盾を求める政治的意図をもっていることは明白」とし、中国側の申し入れを無視し日本政府が李氏を「完全な私人」としてビザを発給したことを強く批判、決定を撤回し「中日関係の大局を損なわないようにすべきだ」と強調した。

中国は2001年4月に李登輝氏が訪日した際、当時の李鵬全国人民代表大会常務委員長(国会議長に相当)の訪日計画を延期するなどの対抗措置をとったが、今回について、日中関係筋は「検討中ではないか」と述べた。

同筋によると、中国政府内には対日政策をめぐり、小泉純一郎首相の靖国神社参拝や対中ODA(政府開発援助)停止論、新防衛計画大綱の「中国仮想敵」規定などへの反発から、強硬論が台頭している半面、11月の日中首脳会談で関係改善への兆しが出たと評価する柔軟論があるという。

中国が「台湾独立派の頭目」とする李登輝氏へのビザ発給は、「小泉政権の反中姿勢の新たな表現」と対日強硬派を勢いづけた。国営新華社通信の電子版では陸軍少佐の肩章をつけた写真入りで軍人が「日本政府と小泉首相の関係改善に関する一連の言動は両国人民と国際社会を欺くもの」と攻撃した。

日中関係筋によると、軍部には元来、対日強硬論が多く、特に台湾問題が絡んだ李登輝氏の訪日への反発が強いという。しかし政府部内には、対日関係をこれ以上悪化させることを避けるべきだとして対抗措置には慎重論も強く、結論には至っていないもようという。

近年、中国政府の対日外交に影響を与えているネット上では、数日前から強硬意見が多数を占め、今後さらにエスカレートするのは必至。中国は日本側の出方とともに、国内世論の動向を見極めた上で、対抗措置を取るかどうかを決めることになろう。

【産経③】「李登輝氏戦争メーカーにも」 中国大使、日本を批判 ビザ取り消し要求

政府は21日、台湾の李登輝前総統に入国査証(ビザ)を発給した。これに対し、中国の王毅駐日大使は同日午後、都内で開かれた日本経団連評議員会の会合で講演し、「(李氏は)トラブルメーカーだけではなく戦争メーカーになるかもしれない。考え直していただきたい」と述べ、ビザ発給の取り消しを求めた。続いて講演した町村信孝外相は「私人が来ることを止める理由はない」と述べ、取り消す考えはないことを強調した。日中対立は激しさを増している。

小泉純一郎首相の靖国神社参拝などをめぐって「政冷」が強まる日中関係だが、王大使は講演で「台湾問題は中国の国益の最も核心的な部分」との考えを強調。その上で王大使は「(李氏は)台湾独立勢力の代表人物。分裂活動を推し進める急先鋒だ」「死にものぐるいで中国を中傷、攻撃している人物に日本側が好意を示すことは理解に苦しむ」とビザを発給した日本政府を批判した。

さらに王大使は「回復の兆しがようやく見え始めた中日関係にも再び衝撃を与える。日本側にとってもマイナスになる」と指摘。小泉首相が11月にチリとラオスで胡錦濤国家主席と温家宝首相と相次いで会談したが、この発言はビザ発給問題で中国側が再び首脳会談を拒む可能性を示唆したものといえる。

王大使は歴史認識についても言及。「歴史に関する問題は両国の国民感情と二国間関係の健全な発展に影響している現実問題となっている」と指摘。「残念ながら今日にいたっても歴史に正しく対処できない言動が時々現れている」と、小泉首相の靖国参拝を批判した。

王大使の講演のテーマは「日中関係のチャンスとチャレンジについて」。王大使は「中日経済協力には明るい未来と大きな潜在力が存在している。共同発展を実現することは十分可能だと信じている」と述べる一方で、日本企業が中国で大型事業を受注することが難しくなっているケースがあることを指摘。「こうした変化の原因はいろいろあるが、両国の政治が抱えている障害が明らかにマイナス影響を及ぼした」と、「政冷」は「経熱」も冷ましかねないとの見方を突き付けた。

王大使は今年9月に駐日大使に着任した。中国外務省の日本課長などを歴任した知日派で、今回の講演もすべて日本語で行った。王大使は将来の外相の有力候補ともいわれている。日中関係が厳しさを増す中、大使着任後は、小泉首相の靖国参拝を批判し続けている。

この日の会合には当初、小泉首相と王大使が同席する予定だった。だがビザ発給で中国側が日本政府への批判を強めたため、官邸サイドが王大使との同席を避けるよう申し入れ、会合ではすれ違いに終わった。

【産経④】王毅駐日中国大使講演要旨

【歴史問題】中国民衆の日本に対する親しみが下がっている最大の理由は中国への侵略戦争に対する問題で、日本側の一部のやり方に不満を持っていることにある。両国間関係の発展の重要な基盤、あるいは政治基盤は歴史に正しく対処することだ。日本側は、かつての軍国主義が進めた侵略を否認したり美化したり軍国主義のシンボルのA級戦犯を正当化するような言動をしないこと。中国側についていえば、日本国民も被害者であって、両国の国民の友好を促進する立場から戦後賠償の責任を放棄し、歴史にこだわることなくその経験と教訓をくみ取り、未来を切り開いていくことだ。

しかし残念ながら今日にいたっても歴史に正しく対処できない言動が時々現れている。こういった言動がある度に侵略の苦しみにあった戦争被害国民の心を傷つけ、さらに両国関係の政治基盤を揺るがし、信頼関係をも損なう。

【台湾問題】台湾問題も中日関係が影響する非常に重要な問題。台湾問題の本質は中国の内政である。しかし現在の最大の障害は陳水扁当局があらゆる手を尽くして台湾独立活動を進め平和統一のプロセスを妨げ台湾海峡とアジア太平洋地域にも不安な要素をもたらしていることだ。

台湾独立に反対し、分裂活動を抑えることは台湾海峡の安定、この地域の平和を守ることである。台湾独立勢力の代表人物は李登輝。公職から退いたとはいえ、分裂活動を推し進める急先鋒(せんぽう)となっている。彼はトラブルメーカーだけではなく戦争メーカーになるかもしれない。彼のような危険な政治家に対し、国際社会は赤信号を出しているのに、日本政府が再び青信号を出そうとしている。隣国同士がつきあうとき、互いに配慮しあうのが筋。死にものぐるいで中国を中傷、攻撃している人物に日本側があえて好意を示すことは理解に苦しむ。回復の兆しがようやく見え始めた中日関係にも再び衝撃を与える。台湾問題は中国の国益のもっとも核心的な部分であり、日本側に考え直してもらいたい。

【産経⑤】李登輝氏にビザ発給 政府、受け入れ不変 「観光」強調、問題化避ける

台湾の李登輝前総統へのビザ発給に中国政府が執拗(しつよう)な抗議を続けていることについて、日本政府は「政治的な意味を持たない全く私的な家族旅行」(細田博之官房長官)との立場から、来日を受け入れる方針を変えていない。

一方で、李氏へのビザ発給にあたり「政治活動をしない」との条件を強調するなど中国政府へ配慮を色濃くにじませており中国側がねらう政治問題化を極力避けたいとの思惑が働いているようだ。小泉純一郎首相は21日夕、中国の王毅駐日大使が李氏を「戦争メーカーになるかもしれない」と発言したことについて、「それは分からない。一私人が観光旅行したいということで許可したのだから、必ずしもそうは思わない」と反論、来日を受け入れる日本政府の方針に変わりがないことを強調した。

日本政府は今年九月に李氏側から来日のためのビザ発給要請があった際、今月11日の台湾の立法院選挙(総選挙)への影響を考慮し、選挙後の発給を決めていた。「政治活動をせず、観光目的なら全く問題ない」(外務省幹部)と判断したためだ。今回の発給に当たっても、中国政府の反発は「織り込み済み」(同省関係者)だった。

このため、王大使が激しく非難しても、日本政府は「それは中国側のお考えだろうと思う」(細田長官)と軽く受け流す姿勢をとっている。

李氏が27日に来日し、年明けに離日するまで中国側は日本側に執拗に抗議を繰り返すとみられるが、政府内には「中国側は政治問題化をねらって抗議しているのは明白。たじろがずに淡々と来日を受け入れるだけだ」(関係者)との不快感がたまり始めている。

一方で、細田官房長官は21日の記者会見で、李氏が政治家と接触することについて、「望ましくない」との考えを表明。台湾と関係の深い自民党幹部らに接触しないよう要請したことを明らかにし、李氏の来日を穏便に済ませたいとの考えを強く示唆した。

一方、劉洪才・中国共産党中央対外連絡部副部長はこの日、公明党の神崎武法代表にビザ発給の撤回を要求したが、与党内には「中国も大人げない。政府を離れた老人が観光で来るのだから(大騒ぎせずに)受け流せばよい」(久間章生自民党総務会長)との意見が多い。

【識者談話】

≪国際教養大学学長・中嶋嶺雄氏≫

■内政干渉もはなはだしい
日本政府に対する中国政府の批判は的外れだが、台湾問題の本質をまったく理解していないことにある。台湾は歴史上、一度も中国に統治されたことがないにもかかわらず、北京政府は台湾が中国の一部であるかのように一方的な図式で教育してきた。こうした主張に日本が影響される必要はない。また、だれがどこを旅行するといった渡航の自由にかかわる事柄を外交問題化させてはならず、中国の批判は問題外だ。今回の来日は観光という条件付きだが、本来は条件を付けずに自由に往来できるようにすべきである。

仮に中国政府が言う通り、李登輝前総統が台湾独立のリーダーだったとしても、そのことによって国家が渡航を制限するのは筋違いだ。これは日本の国家的存立にもかかわる問題であり、その意味でビザ発給を認めた小泉純一郎首相の姿勢は正しい。

王毅駐日大使は李氏を「戦争メーカーになる」と批判しているが、内政干渉もはなはだしい。こうした批判を続ければ、中国自身が国際社会の笑い物になるだけだ。

一昨日、李氏と電話で話した際、金沢を家族と旅行し、温泉につかりたいと話されていた。親日的で日本をよく理解されている李氏は日本にとっても必要な方であり、来日を歓迎する日本人の熱い気持ちを大事にしてもらいたい。(談)

≪中国人民大学国際関係学院副院長・金燦栄氏≫

■政治活動行えば報復措置も
(台湾の李登輝前総統への訪日ビザ発給をめぐり)中国が今後どのような措置を日本に対して取るかが焦点だが、政治交流に影響が出る可能性があると考える。政治家の訪日の延期や中止だ。

駐日大使の召還という強い措置は現段階では考えられない。政治と経済は別物であり、経済的には中日両国がお互いを必要としており、大きな影響は表れないだろう。

中国側が李登輝の訪日に強い姿勢を示すのは、台湾独立勢力の「代表」で象徴的な人物だからだ。普通の老人とは異なる。表面的には私人としての旅行としているが、実質は外交だ。台湾独立を国際的に宣伝していることが問題なのだ。

従って、今後のポイントは李登輝が日本滞在中に政治活動を行うかどうかだ。

李登輝は1995年に母校訪問を名目に訪米した際、公開演説、記者会見などの政治活動を行った。中国側は日本滞在中の李の言動を注視する。

政治活動を行うならば日本への報復措置の可能性が大きい。中国の国家利益にもかかわる問題だからだ。政治活動がなければ反応は抑制される。

日本政府がビザを発給した背景には中日関係の悪化がある。対中感情が日本で悪くなるなか、日本政府がビザを発給しなければ日本人民から小泉政権への突き上げが予想された。(聞き手 北京=野口東秀)

【日経①】李登輝前総統へのビザ発給、中国側が反発強める

政府が21日、台湾の李登輝前総統にビザ(査証)を発給したことをめぐり、中国側が一段と反発を強めている。王毅駐日中国大使は同日、都内で講演し「(李氏は)台湾独立勢力の代表的な人物。公職から退いたとはいえ、分裂活動を進める急先鋒(せんぽう)だ。考え直していただきたい」と述べ、李氏へのビザ発給の取り消しを求めた。王毅大使は李氏について「もはやトラブルメーカーではなく、戦争メーカーになるかもしれない」と強い調子で批判。この後、講演した町村信孝外相は「台湾の独立を認めるなんて、これっぽっちも考えていない」と中国側に冷静な対応を求めた。

中国の反発を踏まえ、政府は神経質な対応を迫られている。外務省は自民党幹部らに李氏の日本滞在中は面会を控えるよう非公式に要請。細田博之官房長官は国内メディアに取材自粛を求めた。

細田長官は21日の記者会見で李氏の訪日があくまで「私人による観光」であると説明したが、不測の事態に備え、李氏に警護を付けるなど「公人」並みの扱いとすることも明らかにした。

【日経②】中国外務省、李登輝氏へのビザ発給に不満表明

中国外務省の劉建超副報道局長は21日の定例記者会見で、日本政府が台湾の李登輝前総統に入国査証(ビザ)を発給したことに対し「日本は中国の反対を顧みず、李登輝(前総統)の日本における国家分裂活動を許した」として「強い不満」を表明した。「日本政府が誤った決定を撤回するよう再度要求する」と強調した。

【時事通信①】日本大使に再抗議へ=前台湾総統ビザ発給で中国外務

省阿南惟茂駐中国大使は22日午後、中国外務省に呼ばれた。日本政府が台湾の李登輝前総統の短期滞在ビザ(査証)を発給したことに関して、武大偉外務次官が阿南大使に対し、強く抗議するとともに、発給撤回を改めて申し入れるとみられる。

【時事通信②】前台湾総統のビザ撤回求めず=中国が軟化-政治活動には反対

中国の武大偉外務次官は22日午後、阿南惟茂駐中国大使を外務省に呼び、日本政府が台湾の李登輝前総統の短期滞在ビザ(査証)を発給したことに関して「強い不満と抗議」を表明した。しかし、これまで繰り返してきたビザ発給の撤回は求めず、「滞在中の政治活動を許さないよう強く求める」と述べるにとどめ、一定の柔軟姿勢を示した。

【読売】「政治活動許さないで」李登輝氏ビザ発給で中国が抗議

中国の武大偉・外務次官は22日、中国外務省に阿南惟茂・駐中国大使を呼び、日本政府が台湾の李登輝・前総統にビザ(査証)を発給したことについて、「中国の立場を顧みない措置で、強い不満を表明する」と抗議した。武次官は「李登輝は急進的な台湾独立運動の『総代表』だ」と指摘した上で、「日本滞在中の政治活動を許さないよう強く求める」と申し入れた。

これに対し阿南大使は、「訪問が観光旅行という目的を逸脱し、政治的色彩を持つことのないよう、中国政府の静かな対応を期待する」と応じた。