独立派の陳水扁総統が、わずか3万票あまりの僅差ながら熾烈な選挙戦を制して再選された。この勝利は台湾のみならず、日本にとっても、ひいては東アジアの安全保障にとっても大きな意義を持つものである。

“台湾が台湾であること”つまり、台湾が中国に併呑されることなく、民主主義陣営の一員として存在することが、日本の大きな国益であるからだ。

例えば、現在、日本が輸入する原油を運ぶタンカーの、実に8割が台湾と中国を隔てる台湾海峡を通過して日本に向かっている。もし、中国統一派の連戦氏が総統選に勝利し、将来、台湾が中国の一部になるような事態になれば、台湾海峡は中国の内海となり、その航行権を中国が恣意的に操作出来るようになるというのはあながち非現実的な話ではない。そうなれば、我が国首相の靖国神社参拝への抗議措置として、日本のタンカーの航行を遮断することも可能になるのである。その場合、タンカーは大きく迂回して、フィリピンと台湾の間にあるバシー海峡を通過せねばならない。その際の、時間的・経済的な損失は計り知れないものになるだろうと言われている。つまり、日本政府は今まで以上に中国政府の顔色を伺うようになるのだ。生命線を絶たれ、喉元を押さえつけられた日本を待っているのは「中国への属国化」に他ならない。海運の例ひとつをとってみても、台湾が独立した存在であることが日本にとってどれだけ有意義であるかがわかるだろう。

投票日前日には遊説中の陳総統が凶弾に襲われる事態が発生した。当夜、テレビを通して演説を行った陳総統は、「たとえ銃弾が飛んできても私は倒れない。そして、台湾の民主主義も倒れることはない」とスピーチして民衆を勇気付け、また台湾人も陳氏を再び総統に選んだのである。

連戦陣営は敗戦が決まった途端に「この選挙は無効だ」と言い出して支持者を煽動し、台湾を混乱に陥れている。彼らの民主主義を無視した行動には、国民党次世代のホープ、馬英九・台北市長や王金平・立法院長も距離を置きはじめているという。(NewsWeek3月29日号)

3月25日。台湾では混乱のために中央選挙管理委員会が未だに当選人名簿を公告出来ずにいたが、日本では陳総統の再選祝賀会が都内のホテルで開かれた。在日台湾同郷会が主催し、日本李登輝友の会と在日台湾婦人会がサポートした祝賀会には、中津川博郷議員や西村真悟議員も駆けつけ、盛大な会となった。挨拶に立った金美齢総統府国策顧問は、「昨年2月の絶望的な支持率の差を前に、私は奇跡を起こすと宣言した。しかし、今回の勝利は私ひとりの力ではない。台湾人だけでなく、台湾を応援してくれた日本人ひとりひとりの努力がこの勝利をもたらしたのだ」とスピーチし、掲げられた日章旗に深々と頭を垂れた。会場には300人を超す日本人、台湾人が集い、あちこちで労いと祝いの言葉が交わされる和やかな宴となった。

翌26日。台湾中央選挙管理委員会の正式広告を受け、米国政府および日本国政府は陳総統に対して祝辞を打電した。公告に前後して、連戦氏は「再選挙を求める」と民主主義の根本を覆す発言を行い、煽動されたデモ隊はまたも選挙管理委員会のガラスを割るなどの狼藉を働いた。

陳水扁総統は、銃撃されて病院に到着した際、激痛をこらえながらも歩いて病院に入ったが、後にその理由を記者に尋ねられると次のように答えている。「私は台湾のリーダーだ。台湾の民主主義のためにも、私が銃弾に倒れた姿を民衆に見せるわけにはいかなかったのだ。」

民主主義を守った陳総統の船出は波高しの模様である。その台湾に手を差し伸べることが出来るのは、かつて同じ時間を共有した日本に他ならない。(『祖国と青年』掲載)