世界台湾同郷会 副会長 林建良

さる8月23日、正名運動決起大会の場で、李登輝前総統は、「中華民国はすでに存在しない」と発言し、台湾の建国運動を一気に加速させた。夫人の曽文恵女史は「この発言は早すぎるのではないか」と心配したが、李登輝氏は「2008年のオリンピックに向けて中国は、更に力をつけてくる。今言わないと間に合わないのだ」と答えたそうである。この発言に合わせたように、台湾の国防部(国防省)は9月1日に発表した「中国軍事報告書」で、中国は2008年以後、台湾を攻撃する可能性が高まると指摘している。2008年の北京オリンピックを意識してのことに違いない。北京オリンピックを成功させるために中国は、2008年までは台湾に手を出さないだろうとの観測が一般的である。しかし、中国にとって、北京オリンピックは中華ナショナリズムを高揚させる絶好のチャンスでもある。戦後、蒋介石政権によって中国人意識を植え付けられ、台湾民族意識がまだ十分に成熟していない台湾人は、この中華ナショナリズムの高揚で動揺する可能性があるのだ。台湾の将来に関心を持っている人なら、少なからず似たような憂慮を抱いている。

2008年北京オリンピックまでに台湾がやらなければならないことは、まず自国の地位を明確に定義することである。その第一歩は、裸の王様である「中華民国」を切り捨てることなのだ。台湾の正式国名とされている「中華民国」が国際的にはもう通用しないことを、台湾人は認識すべきだ。領土範囲が中国とダブっている「中華民国」は、幻の存在でしかない。台湾人が「中華民国」の麻薬に浸かっている限り、台湾は国際社会から認められないし、台湾を守ることもできない。台湾人は、「中華民国」の幻想を捨てて、遅くとも2007年までには名実ともに主権独立国家たる台湾国を建国しなければならないのだ。そのためには先ず、国名を中華民国から台湾に正す「正名」が必要である。従って、中華民国体制の根拠とされている中華民国憲法を廃棄し、新たな憲法を制定しなければならない。

◆「正名」と「制憲」で中華民国体制の終結を!
現在、台湾人が推進しなければならないのは、「正名」と「制憲」なのだ。しかし、中華民国体制の下で国名を改正して新しい憲法を作り、中華民国を終結させることはまず不可能と言ってもよい。だから、国家の主権者たる国民の投票でそれを実現するのが、もっとも現実的であろう。2003年9月6日、李登輝前総統が召集する「台湾正名運動」10万人集会での模擬国民投票は、建国運動の新たな第一歩である。2004年3月20日の台湾総統選挙では、陳水扁総統が掲げる「台湾中国、一辺一国」に対し、野党は「一つの中国の屋根の下」で台湾を中国に統合する姿勢をとっている。今回の総統選挙は、台湾が本当の主権独立国になるのか、それとも中国の一部になることを選択するのか、台湾の命運を賭けた大決戦なのである。陳水扁総統が正名運動の勢いに乗り、総統選挙と同時に「台湾の名でWHOに加入国民投票」「第四原発国民投票」「国会改造国民投票」を実施すれば、台湾の歴史はその瞬間に変わる。その時、台湾人は初めて、台湾の前途を自分の手で決めることによって、台湾の主人になれるのだ。総統選挙で陳水扁が勝利すれば、幻の中華民国を廃止して、本当の主権独立国家たる台湾国を建設する歴史的大事業に取り組めるのである。そうなれば、統一派は力を失い、2004年末の国会選挙では与党陣営が国会多数を制して、この建国事業を強力に推進する態勢が整うであろう。
◆台湾人よ、気概を示せ!強盗の善意に頼るな
もちろん、年建国運動を提唱すると、「中国を刺激すると、中国が攻めてくるぞ」と、統一派は国民を威嚇するであろう。台湾内部の親中国派のみならず、日本にもそのようなことを主張する勢力が存在している。台湾でこのような統一派の脅かしがある程度有効なのは、台湾民族意識がまだ十分に成熟しておらず、植民地根性から離脱できていない証拠でもあるのだが、独立国家であるはずの日本でこのような論理がまかり通っているのは、中国に媚を売る以外のなにものでもない。ならず者国家が怒って攻めてくるから、彼等の機嫌を損なうことをするな、などというのは、「奴隷心理」と変わらない。ならず者国家がどんな横暴を極めようと、彼らの気に障ることは一切せず、自分たちの生活だけを守ろうとするのは「奴隷の平和」に甘んじる態度である。自分の運命を他人に委ねる人間は、自由人ではなく、奴隷と変わりはないのだ。中国が台湾を攻めるかどうかは、台湾が中国に刺激を与えたかどうかで決まるのではなく、中国に台湾を攻める能力があるかどうかで決まるのだ。それは、強盗が小市民の財産を略奪するのは、小市民が強盗に刺激を与えたからではなく、強盗に入られるスキがあったからなのだ。強盗を刺激するからといって、鍵もかけず、自分で自分の財産を守ろうとしないバカがどこにいるのか。小市民の安全は強盗の善意によるものではないように、台湾の安全も決して中国の善意によって守られはしないのだ。中国は2000年に発表した「台湾白書」で、台湾を武力で攻撃する口実に、「無期限に中国との統一を拒否した場合」との一項目を新たに加えた。分かりやすく言えば、「おれの子分にならなければ、殺すぞ」ということだ。このような横暴に抵抗しない人間は奴隷でしかないし、台湾は奴隷の国になってはいけないのだ。自分の尊厳と安全を守る決意を世界に示してこそ、台湾は世界から尊敬され、台湾の安全も一段と保障されるようになるのである。しかし、自分の身の安全を心配するあまり、中国の威嚇に屈服すれば、世界から軽べつされ、国際的支援も得られなくなるのだ。これは、香港の例を見れば一目瞭然であろう。

9月6日に台北市で行われる「台湾正名運動10万人デモ」に、200名近くの日本人が「正名運動日本応援団」を組んで参加し、台湾の建国運動を応援する。中国の覇権に抵抗する台湾建国運動は、台湾と運命共同体というべき日本にとっても、決して他人事ではなかろう。台湾の建国運動への協力は、日本人が日本自身を見つめ直して、日本を気概ある独立国家としての再建するきっかけになれば、と願っている。