NHK「JAPANデビュー」問題とは何か

teigen-05「JAPANデビュー」で台湾の「反日」強調の偏向番組

2009年4月5日(日)午後9時から1時間13分にわたって、NHK総合テレビがNHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー」の第1回として「アジアの“一等国”」というタイトルの番組を放送した。

「未来を見通す鍵は歴史にある」として、日本が一等国に登りつめて敗戦を迎えるまでを追うという最初が台湾における日本統治時代を扱ったものだった。

ところが、番組の内容はとても見るに耐えないほどの偏向ぶりだった。「領有直後から問題が噴出」したとして、聞き慣れない「日台戦争」という呼称が出てくるし、後藤新平は出てきても、それは台湾人3000人を処刑した匪徒刑罰令の実行者として出てくる。また、台湾特産の樟脳産業を立て直すために基隆港を大型化し縦貫鉄道を敷いたと説明する始末だ。

李登輝総統時代に出た『認識台湾』(1997年)では、第7章に「日本植民統治時期の政治と経済」、第8章に「「日本植民統治時期の教育、学術と社会」を設け、例えば米やサトウキビの生産については「米の増産と糖業王国の確立」との見出しの下、生産量のグラフを掲載していかに生産量が上がったかを示していた。縦貫鉄道については「各地を結ぶ交通運輸を改善した」と記していた。

NHKは、台湾における日本統治観からも大きくかけ離れたこのような「自虐的な歴史観」を呈していったい何を企んでいるのだろう。

その「キーワード」は「皇民化」だ。それが改姓名であり宗教弾圧、その行き着く先が21万人の台湾人が戦場に送られたことだと説明する。それも、これまで親日的と言われた台湾で、日本語世代と呼ばれる人々が話す日本語を通じて日本の統治に異を唱える発言ばかりをピックアップすれば「親日的とも言われる台湾で、今も残る日本統治の深い傷」をえぐり出したことになる。

台湾の改姓名を朝鮮の創始改名と同列視しているが、台湾の改姓名者は3%以内に止まっていて87%もの朝鮮との違いは何一つ説明されない。宗教弾圧にしても、17代の小林躋造総督の次の長谷川清総督はその政策の行き過ぎを改めているのだが、それは説明されない。

ある程度台湾を知り、日本語世代の方々と交流のある日本人なら、こういうバランスの悪い番組には嫌悪感を覚えたはずだ。悪意さえ感じたのではないだろうか。


NHKの「反日」台湾強調の偏向番組「JAPANデビュー」に怒りの声続々
本会は小田村四郎会長が正式に抗議声明を発表

NHKが4月5日に放送したNHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー」第1回「アジアの“一等国”」を観た読者から続々と感想が寄せられている。

台湾でもこの番組を観ていた人が結構いたようで、放送の翌日はもっぱらこの話題に終始し、若い世代の間でも「僕のおじいちゃんは日本大好きなのに、あの番組は変だよ」「NHKはどうしてこんないい加減な番組を日本人に見せるのだろう」という疑問の声が多数を占めたそうだ。蔡焜燦氏からも「大変不快だった」との声が寄せられている。

NHKへの抗議も電話やメールでかなり届いているようで、メールでNHKスペシャル「感想・問い合わせ」に抗議した方から、次のような返答があったと転送いただいた。

≪いつもNHKの番組やニュースをご覧いただき、ありがとうございます。お問い合わせの件についてご連絡いたします。4月5日(日)放送【NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第1回「アジアの“一等国”」】をご覧いただき、ありがとうございます。

番組は、『台湾の人びとは親日的』という捉え方を否定していません。そうした捉え方があることを前提として、日本の植民地支配を実際に体験した台湾の人びとが当時どのように感じ、どのように生きたのか、いう実態を明らかにすることで、アジアと日本の歴史に真正面から向き合うことを目的としています。そうした過去を直視することで、アジアと日本の未来を探っていきたいと考えているからです。

今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。お便りありがとうございました。NHK視聴者コールセンター≫

いったい、どこが真正面から向き合っているというのだろう。向き合っていないから、違和感を抱いた人が多いのだし、抗議という行動にも出たのだ。何とも不誠実極まる返答だ。

本会の小田村四郎会長も、この番組を観て「あまりにも実態とかけ離れている。日本語世代の発言の中で、反日的と思われる発言だけを取り上げた印象を拭えない」との感想を抱いた。そこで、本日にも小田村会長がNHKに対する抗議声明を発表することとなった。(2009年4月8日)


「JAPANデビュー」問題でNHKに抗議声明を手交

「あまりにも実態とかけ離れている。日本語世代の発言の中で、反日的と思われる発言だけを取り上げた印象を拭えない」との感想を抱いた本会の小田村四郎会長は、やはり同様の違和感を抱いた石井公一郎、岡崎久彦、加瀬英明、中西輝政、田久保忠衛の5人の全副会長との連名で、福地茂雄・日本放送協会会長宛に「抗議声明」をしたためました。

10日午前、柚原正敬・常務理事が東京・渋谷のNHKセンターに行き、その「抗議声明」を手交してまいりました。NHK側から必ず返答すると約束を取り付けてきましたので、返答があり次第、本会HP・メールマガジン等でもご紹介します。(2009年4月10日)


当該番組責任者から本会に「回答」

本会の小田村四郎会長は4月10日、「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビューの第1回「アジアの“一等国”」の放送内容について、「日本が一方的に台湾人を弾圧したとするような史観で番組を制作することは、公共放送として許されるべきではない」とする4月9日付の「抗議声明」を福地茂雄・NHK会長宛に手交した。

要望は2つ。1つは抗議声明にもあるように「この番組の脚本を作成する上で参考にした書籍など全資料の開示」。2つ目は番組ディレクターの濱崎憲一氏への面談である。

15日、当該番組責任者のエグゼクティブ・プロデューサー、河野伸洋氏より小田村会長宛に14日付の「回答」が届いた。

まずは「必ず返答する」という約束を守っていただいたことに安堵した。だが、予想はしていたものの、自己弁護に終始する、不誠実ともいえるその内容に落胆した。「歴史の事実を共有することで、日本と台湾、日本とアジアの真の絆を見いだしたい」という番組の趣旨だそうで、では「歴史の事実」とは何かというと「植民地時代の差別、戦争の深い傷が残されているという事実」だという。それが「日本と台湾のさらに強くて深い関係を築いていくことに資する」という。

台湾に「植民地時代の差別、戦争の深い傷」が残っていることは、台湾関係者ならほぼ誰でもが知っている事実だ。だが一方で、日本統治を評価していることも事実なのだ。だから、「植民地時代の差別、戦争の深い傷」だけを描くこの番組のバランスの悪さに、台湾の日本語世代の方々をはじめ多くの人々が違和感を抱いたのである。

ともかく、NHKからの「回答」をお目にかけたい。この「回答」についてのご意見をお願いします。(2009年4月17日)


これ以降も、NHKに対してあらゆる団体から抗議声明が届き、その後には実際に番組を制作したスタッフが再度台湾へ赴き、出演者に対して説得工作を行うなど、不誠実な対応も判明した。

また、NHKへの抗議の声は高まるばかりで、この番組によって名誉を傷つけられたとして、出演したパイワン族の人々や視聴者らがNHKを相手取った訴訟を起こし、原告が史上空前の1万人を超える規模となるなど、社会の注目を集めています。

この問題は現在も続いており、その後の経過や続報については活動別お知らせからご覧ください。

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