地図帳・教科書問題

map-01本会は平成17年(2005年)以来、中学校社会科教科書のひとつである「地図帳」問題に取り組んでいる。台湾が中国の領土とされたり、日本が1945年に台湾を中国に返還したというような間違った記述を正す活動だ。

これまで署名活動を進め、文部科学省や出版社(帝国書院と東京書籍)に対して訂正要望を出し、宮城県や石川県議会では「中学校社会科地図帳の内容を適切な記述に是正するよう求める意見書」が採択されてもいる。

本年(平成23年)3月、中学校教科書の検定作業が終わり、現在、見本本が採択地区に配布されて採択作業の段階に入っている。採択は8月までにほぼ終わり、来年4月には供給本として生徒に配布される。

そこで、本会が訂正を要望した記述がどうなっているかを見本本で確認したところ、帝国書院も東京書籍も記述はほとんど変わっていないことが判明した。

両社とも、国土の面積では、中国は「960」(万平方キロメートル)のままで、台湾の面積3.6万平方キロメートルを含ませており、中華人民共和国の資料を使っているのもそのままで、全部に台湾が組み込まれている。

東京書籍は、裏表紙にあった台湾を含んだ中華人民共和国の地図こそなくなっていたが、相変わらず「台湾(1945 中国へ返還)」と書いているし、中国の都市に台北と高雄を入れているのである。

そこで、本会は近々、文部科学省と帝国書院・東京書籍に対して改めて訂正要望書を呈し、供給本ではこのような誤記を訂正し、中学生に台湾に関する正しい知識を伝えるよう強く求めてゆく予定だ。

今後も皆様のお力添えをいただきながら、台湾正名運動の一環としての地図帳問題の解決に当たりたい。

平成23年7月吉日

日本李登輝友の会


中学校社会科地図帳にこれだけの誤記

発行:平成22年(2010年)8月5日
編集:日本李登輝友の会

中学校の社会科地図帳は現在、帝国書院の『新編中学校社会科地図初訂版』、東京書籍の『新編新しい社会科地図』の2 冊が発行され、帝国書院が約117万冊、東京書籍が約7万冊、計124万冊が使用されています。

この2冊の地図帳は文部科学省の検定に合格した教科書ですが、台湾を中国領としたり、日本が台湾を中国に返還したというような、見過ごしがたい誤った記述があります。どこが誤った記述なのかを、それぞれの教科書で具体的に指摘します。

map-02

帝国書院『新編中学校社会科地図初訂版』

■帝国書院の『新編中学校社会科地図初訂版』
(平成17年3月30日検定済)

【誤記1】18頁、20頁の地図のなかで、台湾と中華人民共和国の間に国境線が引かれておらず、台湾の太平洋側に国境線を引いて、台湾が中華人民共和国の領土に組み込まれた表記をしています。

周知のように、我が国は、昭和27年(1952年)4月発効のサンフランシスコ平和条約において台湾に関する主権を放棄しました。しかし、その後、台湾がどの国家に帰属するかについては一切取り極められていません。

また、昭和47年(1972年)9月の「日中共同声明」において、中華人民共和国政府は「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する」とする一方で、日本国政府は「この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」するとし、台湾が中華人民共和国の領土であるとは承認していません。アメリカやイギリスも、台湾を自国領とする中華人民共和国の主張をアクノレッジ(認識する)という立場で、決して承認はしていません。

map-04

台湾の太平洋側に国境線が引かれ、台湾が中華人民共和国の領土に組み込まれた表記となっている(帝国書院:18頁)

map-05

台湾の太平洋側に国境線が引かれている(帝国書院:20頁)

そもそも我が国は、サンフランシスコ平和条約において台湾に対する領土的処分権を喪失しているため、台湾を中華人民共和国の領土と承認する権限はなく、そのため「台湾の領土的な位置付けに関して独自の認定を行う立場にない」というのが政府の公式見解です。

したがって、台湾を中華人民共和国の領土とすることは日本政府の見解に悖る表記であり、現に中華人民共和国が台湾を領有している事実がないことに照らせば、地図帳のように台湾を中華人民共和国の領土とすることは誤りです。

【誤記2】21頁から22頁の「中国の資料図」における7つの中国地図は、いずれも台湾を中国の領土として描き、『中国地図集』や『中国統計年鑑』など中華人民共和国が発行した資料を基に作成しているようです。

しかし、これは台湾を中華人民共和国の領土と承認していない日本政府の見解に悖る表記であり、台湾は中華人民共和国の領土でない以上、台湾を自国領と主張する中華人民共和国が発行する書籍に掲載された図版を日本の中学生が学ぶ地図帳に転載して使用することは、誤った認識を与えますので、このような資料の使用は検定で極力制限すべきです。

map-06

中国の資料図(帝国書院:21頁)

map-07

統計資料で台湾の3.6万k㎡を含む中国の国土の面積を960万k㎡と表記(帝国書院:129頁)

【誤記3】129頁の「統計資料」において、27番目に中華人民共和国の統計が出ていて、国土面積を960(万k㎡)と表記しています。

しかし、帝国書院の中学校地図帳の昭和38年版では中華人民共和国と中華民国を共に国名とした上で、中華人民共和国の面積を9561(千k㎡)、中華民国の面積を36(千k㎡)と表記し、同47年版では中華民国は島名として台湾とした上で、中華人民共和国の面積を9561(千k㎡)、台湾の面積を36(千k㎡)と表記しています。そして、昭和56年版では中華人民共和国の面積を9597(千k㎡)と表記し、「中華人民共和国の人口・面積・人口密度には台湾を含む」と注釈を付しています。

つまり、中華人民共和国が昭和56年までに台湾の国土面積に匹敵する領土を獲得した事実はない以上、現在の960(万k㎡)という表記に台湾の面積が含まれていることは明らかであり、台湾を中華人民共和国の領土の一部と表記していることになります。

しかし、台湾が中華人民共和国の領土でない以上これも誤りであり、正確に「956(万k㎡)」と表記すべきです。


■東京書籍の『新編新しい社会科地図』(平成17年3月30日検定済)

map-03

東京書籍『新編新しい社会科地図』

map-08

「アジア各国の独立」の説明で「1945 中国へ返還」と表記(東京書籍:12頁)

【誤記1】帝国書院と同様に、12頁、14頁の地図のなかで、台湾と中華人民共和国の間に国境線が引かれておらず、台湾の太平洋側に国境線を引いて、台湾が中華人民共和国の領土に組み込まれた表記をしていますが、先に述べたような理由で、これは誤記です。

【誤記2】12頁の図版「アジア各国の独立」の中で、日本の領土だった台湾について「1945 中国へ返還」と表記しています。しかし、日本が1945年に中国へ台湾を返還していたら、どうしてその後のサンフランシスコ平和条約で台湾を放棄できるのでしょうか。平和条約締結の時点まで、法的に台湾が日本の領土と国際的に認められていたからこそ「放棄」が成立するのであり、「返還」した領土を「放棄」することはあり得ませんので、これも明白な誤りです。

また、47頁の「国土の変化」では、「1951年9月サンフランシスコ平和条約による」「日本が放棄した地域」として朝鮮半島や台湾が黄土色で描かれています。しかし、同時に「台湾 中国へ返す」とも表記されています。これでは台湾は「日本が放棄した地域」なのか「中国へ返」したのか、判然としません。

この表記も、日本は台湾を中国へ返還した歴史事実がない以上、「日本が放棄した地域」のみの表記で十分であり、「台湾 中国へ返す」という表記は重大な誤りです。

map-09

「国土の変化」で、台湾を日本が放棄した地域としながら、「中国へ返す」とも表記(東京書籍:47頁)

map-10

中華人民共和国の資料を使って「中国の行政区分」を示す中に台湾も表記(東京書籍:14頁)

【誤記3】14頁の図版「中国の行政区分」で、台湾が中国の領土として表記され、これは中華人民共和国発行の「中華人民共和国行政区画簡冊 1999年版」に掲出された行政区分を転載したと出典名が付されています。

しかし、これも帝国書院の「誤記2」で指摘したように、台湾を中華人民共和国の領土と承認していない日本政府の見解に悖る表記であり、台湾は中華人民共和国の領土でない以上、台湾を自国領と主張する中華人民共和国が発行する書籍に掲載された図版を日本の中学生が学ぶ地図帳に転載して使用することは、誤った認識を与えますので、このような安易な資料の転載は検定で極力制限すべきです。

【誤記4】15頁から16頁の「中国の主題図」における「①中国の地形」をはじめとする9つの中国地図は、いずれも台湾を中国の領土として描き、『中華人民共和国地図集』など中華人民共和国が発行した資料を基に作成しているようです。

しかし、これも帝国書院の「誤記2」で指摘したように、このような資料の使用は検定で極力制限すべきです。

map-11

中華人民共和国の資料を使って「中国の主題図」を表記する中では全て台湾が一緒に組み込まれている(東京書籍:15~16頁)

map-12

「世界の国の人口、文化、産業、日本との貿易」で台湾の3.6万k㎡を含む中国の国土の面積を960万k㎡と表記(東京書籍:125頁)

【誤記5】125頁の「⑬世界の国の人口、文化、産業、日本との貿易(1)」において、27番目に中華人民共和国の統計が出ていて、国土面積を960(万k㎡)と表記しています。しかし、帝国書院の「誤記3」で指摘したように960(万k㎡)という表記に台湾の面積が含まれていることは明らかであり、台湾を中華人民共和国の領土の一部と表記していることになりますので、これも誤りであり、正確に「956(万k㎡)」と表記すべきです。

【誤記6】127頁の「世界の大都市の人口」において、中華人民共和国の都市名として「タイペイ(台北)(台湾)(1999年)」と表記しています。これは明らかに台北市を中華人民共和国の都市名の一つとしていますので、重大な誤りです。

【誤記7】裏表紙に中華人民共和国の地図が黄土色で描かれ、この地図では台湾も同じ黄土色で描いていて、台湾を中華人民共和国の領土としていますので、これも誤りです。

map-13

「世界の大都市の人口」で中華人民共和国の都市名と一緒に台北を表記(東京書籍:127頁)

map-14

中華人民共和国の地図の中で台湾を一緒に描いて中国領と表示する東京書籍の裏表紙

PAGETOP
Copyright © 日本李登輝友の会 All Rights Reserved.